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MarkeZine Day 2022 Autumn(AD)

消費行動と意識は深く連動している。キャッシュレスデータ×アンケート調査で見えた、顧客の本当の姿

 キャッシュレス決済を行う習慣が浸透し、日常生活の中でクレジットカードを利用する機会も広がっている。三井住友カードは、そのキャッシュレスデータを用いた分析支援サービス「Custella(カステラ)」シリーズを展開。MarkeZine Day 2022 Autumnでは、三井住友カード株式会社の細谷友樹氏と株式会社エイドハンドレッドの渋谷智之氏が登壇し、キャッシュレスデータを活用した企業と顧客の関係性構築の可能性を、最新の事例とともに解説した。

キャッシュレスデータを活用した分析ができる「Custella」とは?

 三井住友カードは、クレジットカード会社として消費者や事業者にキャッシュレス決済サービスを提供してきた。2020年からは、「キャッシュレスデータ(定量的な消費データ)」を活用したデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」シリーズを展開している。

 同サービスでは、世の中の最新消費トレンドをマクロデータ配信する「Custella Trend」と、消費者の属性や購買行動がわかる小売り事業者向けBIツール「Custella Insight」の2つを無償で提供。さらに、企業の課題に合わせて分析をカスタマイズで設計し、レポーティングで打ち手まで提案する「Custella Analytics」、分析で見つけたターゲットに直接メールやアプリでプロモーションを打てる「Custella Promotion」を加えた4つをラインアップしている。なお、すべてのデータは個人が特定されない統計データとして処理して提供されている。

 そして2022年8月に、このCustellaシリーズに「Custella Research」が加わった。このサービスについて細谷氏は、「三井住友カード会員1200万人にアンケートを実施し、消費行動と意識データを掛け合わせた、深い顧客理解とプロモーションの連動が可能になるサービスです」と説明した。

三井住友カード株式会社 マーケティング本部 データ戦略部 グループ長 兼 シニアデータビジネスプランナー 細谷 友樹氏
三井住友カード株式会社 マーケティング本部 データ戦略部 グループ長 兼 シニアデータビジネスプランナー
細谷 友樹氏

 キャッシュレスデータからは多くの情報が得られるものの、購買者の意識や理由といったインサイトの部分までは見えないという課題があった。そこで、リサーチ業界の第一人者であるマクロミルと提携し、共同でサービスを開発するに至った。「アンケートモニターではなく、あまりアンケート慣れをしていない通常会員にアンケートを実施しているため、よりピュアな意見が得られるところが特徴です」と細谷氏は語る。

キャッシュレスデータから見える消費

 クレジットカードの利用シーンは、かつて旅行や家電量販店など、非日常なものや単価が高いものが多くを占めていた。しかし最近では、ポイント付与を目当てにした利用など、コンビニやファストフード店で使われる機会も増えている。

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 実際に、三井住友カードの月間取引件数も直近2年で2倍と、大きく伸長している。細谷氏によると「20代の会員も非常に増えており、キャッシュレスは若年層まで広がっている」という。これにともない、カード会社の取引データは今後も加速度的に増えていくと考えられる。

 キャッシュレスデータは、「カード会員の属性のデータ」と「加盟店の売り上げデータ」の2つから構成される。クレジットカードのデータは、住所や勤務地・年収・家族構成などの幅広い属性データを含み、なおかつ正確なデータであることが特徴だ。また売り上げデータでは、購入した店舗・時間・金額がわかる。

 また、クレジットカードは大学の入学時や就職の際に口座を開設し、そのまま長年保持している人が多い。だからライフイベントを捉えるのが得意で、引っ越しや子育ての状況も購買データから見えてくるのだ。

「属性×決済行動×意識」データの掛け合わせで顧客像がクリアに

 次に、マクロミルからデータコンサルティング事業を分割して創設されたエイトハンドレッドの渋谷氏が、例として女性20~30代のペルソナを挙げてCustella Researchで使用するデータの特徴を解説した。項目として「デモグラ」「サイコグラフィック」「ビヘイビアル」の切り口があり、それらが充実するほどにペルソナの解像度は上がる。

株式会社エイトハンドレッド コンサルティング 第2本部 プリンシパル 渋谷 智之氏
株式会社エイトハンドレッド コンサルティング 第2本部 プリンシパル
渋谷 智之氏

 たとえば20~30代の女性なら、独身で社交的、おしゃれ感度は高め、趣味はエステとカフェ巡りといったパターンが多くなる。「そこに決済行動を入れますと、ビヘイビアル(行動・態度)もわかるようになります。特にキャッシュレスデータは、どの加盟店での購入かまでがしっかり把握できますので、高級ブランドとファストファッションの使い分けや、食品の金額帯、プチ贅沢は何かなどもわかります」と渋谷氏は解説。その結果、訴求メッセージも具体化していくことができ、「私向けの商品」というメッセージを作りやすくなるという。

事例1:ターゲットと訴求ポイントを精緻化し、新商品の販売拡大を目指す

 続いて渋谷氏は、「新商品として健康増進型商品の発売を計画する保険会社」を事例として紹介した。まずは顧客理解のために、新商品のターゲット層になり得る三井住友カードの会員にアンケートを実施し、新商品の加入意向やニーズを調査。その結果を用いて、「属性×決済行動×意識」の掛け算でターゲットを理解していったという。

 「属性で見ると中高年よりも若者の反応が高く、決済行動ではエステや旅行に指数が高いアクティブに活動する層が反応しているなどがわかりました。それらから行動を類推すると、おそらく、人からどう見られるかに関心が高い方々がターゲット層だと考えられます」と渋谷氏は説明した。

 加えて、家中消費が増加する中でも、スポーツ・レジャー・健康食品などの健康管理支出が増えていることもわかった。「その行動を支える背景は、意識です。アンケートから、将来の健康に不安が強くあること、巣ごもり生活で野菜不足・肌の健康・体重増加・不眠などが気になり、ランニングやジム通いなどで運動しているという回答を得ています。ただし、効果はあまりでておらず、健康診断の結果が良くないので不安がある。その結果、今回の新商品に対して加入意向が上がっているのですね」と渋谷氏は続けた。

 また新商品の評価を尋ねると、「健康状態が良いと保険料が下がるのがうれしい」「健康アドバイスや運動方法の実践、他の人が実践する良い方法を知りたい」といったターゲット層のニーズも把握できた。「長年、アンケートを中心に分析してきましたが、Custella Researchで行動と意識は想像以上に連動していることがわかりました。そこが大きなメリットです」と渋谷氏は強調した。

 次にアンケートを元に、コアターゲット、サブターゲットをピックアップする。属性×決済動×意識データの掛け算の強みは、決済行動で時系列と購入店舗までわかるため、生活や悩みを具体化できる点だという。

 最後にアクションとしてのプロモーション施策を実施。加入意向のある人々をデータとして、見込み客の特徴を特定し、AIモデルを作成する。4つほどにセグメントしてニーズに合った訴求が可能と予測されるクリエイティブを制作し、ABテストを行う。「『誰に×何を』が明確にわかることで、最適化が一気通貫で行えて、購買や申し込みといった最終的なゴールへの効果も上がっていきます」と渋谷氏は解説した。

事例2:男性会社員のベーカリー利用増加の背景は?消費行動の変化を捕捉

 2つ目の事例として、渋谷氏は「コロナ禍の影響に対応するため、顧客層や行動の変化を把握したいベーカリー業態」を紹介した。まずは顧客を決済行動から、ベーカリー利用の増減で分類。そしてそれぞれを「属性×決済行動×意識データ」で分析した。

 カードの基礎情報から利用減少者層は、50代以上の女性のファミリー層かつ世帯年収は800万円だとわかった。決済情報から、コロナ禍以前は旅行・レジャー・外食などを楽しみアクティブに活動していた人々だということもわかった。またコロナ禍で、デリバリーや健康食品の購入が大幅に増加している。

 アンケートの結果から、「健康意識が高まり、料理はするものの、デリバリーでプチ贅沢をしている」ことも見えた。ベーカリー利用が減少した理由をアンケートすると、「外出できないストレスをパンやお菓子作りで発散している」「健康意識が高まったため、パンは不健康というネガティブな理由が付いてしまった」ことが浮かび上がった。

 同じ手順で利用増加者を見ると、20~30代の独身男性かつ在宅ワークの会社員が多い結果となった。コロナ禍で、行動範囲が自宅周辺と一気に狭くなり、衣服・旅・遊び関連のシェアは一気に下がった。逆に、スーパー・コンビニなどの食品関連は増加した。

 アンケートからは、朝の散歩が習慣化し、朝から営業する近所のパン屋を目的地として散歩していることがわかった。また「隙間時間で食べられるベーカリーパンは便利で、家の中にいることが多いため味の変化を楽しめるバラエティ性が欲しい」というニーズも見えた。

 このように、決済行動や意識データを元にすると、消費行動およびその背景となった意識・態度変容の要因がわかる。「背景理解は、施策実施時の単価の上り幅に影響します。アンケートとプロモーションで、結果検証までつなげられるのが当社の強みです」と細谷氏は述べた。

企業の持つデータとの組み合わせで広がる可能性

 前述のCustella Research以外のCustellaシリーズにも、AIは活用されている。「ライフイベント・ライフスタイル・商品サービスの予測など、幅広い属性や購買履歴を持つキャッシュレスデータから、約1200項目の説明変数を駆使したAIモデリングをしています」と細谷氏は語る。

 さらに、キャッシュレスデータには購買時間・性別・年代などが含まれるため、小売店のPOSデータやウェブの行動データとの結合性が非常に高い。たとえば、小売店が持つ自社商品単位のデータにキャッシュレスデータを突き合わせると、消費者行動を別角度から理解することができる。

 「自社データでは、購入頻度、単価、ロイヤルティのすべてが低め設定だった方が、実は競合店舗では高頻度に高級志向の買い物をしていることがあります。ロイヤルティ向上のポテンシャルがあるお客様だと判別できるので、新たなプロモーションを実施し、検証できるのです」と細谷氏は解説した。

 したがってCustellaシリーズと企業データを活用すれば、顧客理解はさらに深まり、AIの予測モデルで適切なアプローチができる。コロナ禍により事業の柔軟な変化を求められる中、BtoB企業がBtoCへとモデルを転換するような場合であっても、企業の顧客データ不足を補える。

 「Custellaシリーズではあらゆるデータを活用・分析・分類して、お客様に最も適したコミュニケーションを図ることが可能になります。弊社のデータと企業様のデータを突き合わせ活用することで、施策のレベルアップに貢献していきます」と細谷氏は締めくくった。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/29 11:30 https://markezine.jp/article/detail/40260