推し活とは
推し活とは、自分の好きな対象を応援する活動を指します。対象となる推しはさまざまであり、以下のような例が挙げられるでしょう。
- 特定のアイドル
- アニメや漫画のキャラクター
- スポーツ選手
- 動物
- ブランド など
推しの対象は幅広く、他人に勧めたいと感じている対象を指すことが多い傾向にあります。
また推し活は、推しを応援するだけでなく、良さを広めたいという感情が強いのも特徴です。推しに関連するグッズやイベントを楽しむだけでなく、周囲に普及させたいという気持ちが強いからこそ、マーケティングにも効果を発揮します。
推し活とオタクの違い
基本的に「オタク」は推し活をしている人を指す言葉です。
またオタクの場合、より深い知識を持ち合わせている人というニュアンスを含みます。特に、アニメやゲーム、アイドルに対して熱狂的な推し活をしている人に用いられる場合が多くみられます。
一方「推し」は、応援している気持ちが重視されているため、対象に対する知識量は問われない場合がほとんどです。
推しはオタクよりも幅広い存在が対象となり、詳しい知識がなくても応援していることを主張しやすい傾向にあります。
推し活が流行した背景
急激に推し活が流行した背景には、どのようなものがあるのでしょうか。その理由は、大きく以下の2つに分けられます。
- コロナ禍による消費対象の変化
- SNS上でのコミュニティ構築の活発化
それぞれの詳細について解説します。
コロナ禍による消費対象の変化
マスク生活や外出自粛が続いた影響で、生活に関わるものや自身に対する消費が減っていきました。
一方で、自宅で楽しめる動画配信サービスや電子書籍に対する需要が高まり、推し活に目覚めたという人が数多くいます。
コロナ禍によりさまざまなオンラインイベントが開催されていたため、より手軽に推し活を楽しめる環境になったのも理由のひとつです。
SNS上でのコミュニティ構築の活発化
コロナ禍によって外出が制限されたため、SNS上でのコミュニケーション機会が増加しました。また各SNSがコミュニティを構築しやすい機能を備えたため、共通の推しを持つユーザー同士が手軽に交流できるようになったのも理由でしょう。
一方的に推しに関する情報を発信するだけでなく、コメント機能やDMでのやり取りも盛んに行われたため、推しを応援しやすくなったと考えられます。
推し活マーケティングに注目する2つの理由
コロナ禍がきっかけとなり流行し始めた推し活を、マーケティングに活用する企業が増えてきました。推し活マーケティングがさまざまな企業の注目を集めている理由は、以下の2つです。
- 推し活市場が伸びている
- Z世代に効果的にアプローチできる
それぞれの重要なポイントや詳細について解説します。
推し活市場が伸びている
コロナ禍を機に消費対象が変化したことで、推し活関連の市場が拡大傾向にあります。
2022年に矢野経済研究所によって行われた調査では、2021年度と比較して、推し活と親和性の高い14分野のうち以下の10市場の成長が確認されています。
- 同人誌
- コスプレ衣装
- フィギュア
- ドール
- プラモデル
- 鉄道模型(ジオラマ等の周辺商材も含む)
- アイドル
- コンセプトカフェ・メイド・コスプレ関連サービス
- ボーカロイド
- トイガン
また2022年度の調査ではコロナ禍の影響で2020年から2021年度にかけて縮小傾向にあったアニメ市場も、制作本数が回復してきたことから、前年度よりも5%以上の増加が予想されています。
推し活の一人当たりの経済効果は数100億円ともいわれているため、取り組み次第では、より大きな利益が期待できるでしょう。
Z世代に効果的にアプローチできる
Z世代は、1990年代後半〜2010年代に誕生した世代のことです。これからの消費が期待されるため、Z世代へのマーケティング施策が重要視されています。
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント(本社:東京都渋谷区、社長:石川 あゆみ)が運営する若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)」がZ世代を対象にした調査によると、回答者の約8割以上が推し活を行なっていることが明らかになりました。
また、年間平均4万6,650円を推し活に使用しているという結果も出ています。
10代〜20代の若者にとって、推しはスタンダードな存在です。特にZ世代は、商品やサービスを利用する意味や意義を重視する傾向があるため、推し活を利用したマーケティング施策が効果的といえます。
推し活マーケティングを成功させるための4つのポイント
推し活マーケティングは、単純に推しと商品やサービスを組み合わせればよいわけではありません。ファンの熱量に後押ししてもらい、効果的に推し活マーケティングを行うには、以下の4つのポイントを意識するのが重要です。
- SNSで拡散したくなる要素を入れる
- 推しを自社製品の接点を探す
- 推しを主役にすることを意識する
- 推しを形に残せるようにする
それぞれのポイントについてしっかりと確認しましょう。
SNSで拡散したくなる要素を入れる
推し活マーケティングを成功させるうえで欠かせないのが、SNSの活用です。ファンがただ購入して終わりではなく、購入したあとにSNSで拡散したくなるような要素を取り入れれば、より多くの層へアピールができるでしょう。
たとえば以下のような例が挙げられます。
- X(旧Twitter)のハッシュタグを利用したキャンペーン
- TikTokのハッシュタグチャレンジ
特にSNSを利用したキャンペーンは、取り入れやすい傾向にあります。ファン自身がキャンペーンに参加するだけでなく、ほかのファンに向けての情報共有として拡散される場合もあるため、幅広く自社の認知度を高められるでしょう。
推しと自社製品の接点を探す
ファンからの共感を得るためには、推しと商品の関連性や接点を見つけることが重要です。推しと商品・サービスを組み合わせただけのものでは、ファンの興味・関心は引き出せないでしょう。
たとえば以下のような要素を取り入れることで、ファンからの共感を得やすい傾向にあります。
- 推しのイメージカラーの商品を展開する
- 推しの好きなお菓子とコラボする
- パッケージデザインをコラボ用に変更する
推しのキャラクター性に沿った商品を展開すれば共感を得やすいだけでなく、購買意欲の促進にもつながります。
アイドルグループのように推しとなる対象が複数人いる場合には、一人ひとり異なるパッケージデザインを用意するのも効果的です。
推しを主役にすることを意識する
通常のコラボと異なり、マーケティングの対象は推しのファンです。自社製品やサービスをメインとするのではなく、推しを主役にすることで消費行動につなげていきます。
ファンが推し消費を行う主な理由は以下の2つです。
- 推しに貢献したい
- 推しを起用した企業への感謝の気持ちとして商品を購入したい
商品やサービスをメインに扱ってしまうと、思うような成果を得られない可能性があります。
また推しの扱い方によってはファンに反感を買ってしまい、最悪の場合、炎上につながる場合もあるかもしれません。
そのため企業側は推しを応援したいというファンの気持ちを尊重した推し活マーケティングを行いましょう。
推しを形に残せるようにする
推しを形に残せるような商品を展開することも欠かせません。推しとコラボしたパッケージや商品を手元に残しておきたいというファンは数多くいます。
また形に残る商品の場合、SNSによる拡散効果も期待できるでしょう。パッケージを推し仕様に変更するだけでなく、以下のような工夫もおすすめです。
- 推しのストラップのような付録をつける
- 長く使用できる商品を利用する
ファンのなかには、推し活として旅行先にマスコットやストラップのようなグッズを持っていき、記念写真を撮る人もいます。
ストラップのような付録は持ち運びもしやすいため、記念写真とともにSNSに共有されれば、高い宣伝効果が期待できるでしょう。
推し活マーケティングの5つの活用事例
実際に推し活マーケティングはどのように活用されているのでしょうか。ここでは、以下の5つの活用事例を紹介します。
- ロクシタン×大人気実写化映画のコラボキャンペーン
- 森永製菓×男性アイドル育成ゲームのコラボキャンペーン
- エスビー食品×男性アイドルグループコラボキャンペーン
- SEA BREEZE#いい推しの日
- TOWER RECORDS 推し活グッズ販売
ロクシタン×大人気実写化映画のコラボキャンペーン
「ロクシタン」は過去に、大人気アニメ「おそ松さん」の実写化映画とコラボしたキャンペーンを実施しました。
この映画は、アイドルグループのSnow Manが主演したことでも話題になっており、アニメファンとアイドルファンの両方をターゲットにしています。
コラボ内容は以下のとおりです。
推しの要素を取り入れたカスタマイズ製品を作れることから、推し活との相性も抜群です。また非売品の限定グッズのプレゼントは、コレクター気質の強いファンの購買意欲の促進にもつながるでしょう。
森永製菓×男性アイドル育成ゲームのコラボキャンペーン
森永製菓が販売する「DARS」とコラボしたのは、スマホゲームの「あんさんぶるスターズ!」です。
ゲーム内のアイドルユニットである「fine」をアンバサダーに起用したキャンペーンを実施しました。
キャンペーン内容は以下のとおりです。
- 「fine」のリーダー天祥院英智をブランドマネージャーとした「DARS Perfect MILK Project」の開催
- Web CMの公開
- プレゼントキャンペーンの実施
- ゲーム内でのコラボイベントの開催
「fine」のメンバー一人ひとりがプロモーションプロジェクトを企画し、実行するというストーリー性も持ち合わせています。
ゲームのキャラクターを起用することで3次元と2次元の両方でイベントを開催し、ファンが夢中になりやすい工夫をしているのが特徴です。
エスビー食品×男性アイドルグループコラボキャンペーン
エスビー食品では、ボーイズグループの「INI」と「S&B まぜるだけのスパゲッティソース」がコラボしたキャンペーンを開催しました。
人気商品のPRとして、11人のメンバーが好みのパスタソース「推しスパ」を紹介しているのが特徴です。
そのほかにも、以下のような幅広いキャンペーンを行なっています。
- テレビCM放映
- ブランドサイトの公開
- X(旧Twitter)キャンペーン
- メンバー写真が印刷されたコラボパッケージの限定販売
推しの好きな商品を購入したいという、ファン心理を利用したキャンペーンといえるでしょう。
また、X(旧Twitter)のキャンペーンが実施される前から「#アンバサダーはINI」「#エスビーまぜスパ」などのハッシュタグがトレンド入りしたことでも話題になりました。
SEA BREEZE #いい推しの日
「SEA BREEZE」は、元々販売されている全8色の豊富なカラーバリエーションのボトルを利用したSNSキャンペーンを実施しました。
11月4日の「いい推しの日」に合わせて、X(旧Twitter)にハッシュタグとともに画像付きの投稿をしています。
SEA BREEZEと推し活を関連付けやすいように、画像に以下のような工夫がされているのも特徴です。
- パッケージを推し活風にデコレーションしている
- イメージカラーを連想しやすいペンライトを加えている
アニメのキャラクターやアイドルなどと、直接コラボをしているわけではありません。しかし、さまざまな推しに対する推し活への利用をアピールすることで、商品の購買意欲の向上につなげています。
TOWER RECORDS 推し活グッズ販売
「TOWER RECORDS」では、キャラクターやアイドルなどとのコラボではなく、推し活グッズの販売をしています。
最新の推し活グッズの使い方や活用方法などを、専用のアカウントで発信しているのも特徴です。
以下のようなグッズが全国のTOWER RECORDSの店頭やオンラインショップで販売されています。
- チェキファイル
- ライブ用うちわ
- ステーショナリー
- バッグ
- アクリルスタンド用ケース
推しを限定しない施策であるため、幅広い層へのアピールが可能です。また毎月4日に「#タワレコ推しの日」として、プレゼントやグッズの割引を受けられるSNSキャンペーンも実施しています。
タワレコ推し色・推し活グッズ特設ページ
まとめ
推し活マーケティングは、ファンの推しを応援したいという心理を利用した施策です。
推し活は、コロナ禍を機に動画配信サービスや電子書籍の需要が高まったことで、多くの人に広まりました。特に、Z世代の若者に向けてのアプローチとして効果的です。
ただし推し活マーケティングを行う際は、ファンの気持ちに寄り添うことが欠かせません。推しの扱いによってはファンの反感を買ってしまう可能性もあります。
推しを主役にしたキャンペーンやコラボならば、ファンの興味・関心を得やすく、SNSの拡散も期待できるでしょう。
推し活マーケティングに興味がある担当者は、ぜひこの記事を参考に、ファンの気持ちに寄り添った効果的な施策を検討してみてください。