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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?

愛され続ける商品を実現する「ベネフィット設計」の方法とは

 様々な商品が溢れる厳しい競争環境を勝ち抜き、商品が長く愛される状態を実現するには、顧客にとっての体験価値である「ベネフィット」を設計する技術が求められます。本連載では、累計37,000件以上の新製品・新サービスの誕生をサポートしてきたマクアケで専門性執行役員を務める筆者のノウハウや事例をもとに、「ベネフィット設計」の考え方や手法を解説していきます。第2回は、どのように「ベネフィット」を設計するのか、ベネフィット設計の具体的なポイントやプロセスについて解説していきます。

37,000件以上の事例から分析する「ヒット商品の三原則」

 ベネフィット設計のやり方を解説する前に、愛され続ける商品とはどのような商品なのかを理解しましょう。私が勤めるマクアケでは、応援購入サービス「Makuake」を通じて、累計37,000件以上の新製品・新サービスの誕生をサポートしてきました。

 その中でもMakuakeで大きな反響を獲得し売れ続ける商品を分析した結果、私はそれらの商品に共通点があることを見出しました。その共通点とは、「独自性」「便益」「ストーリー」という3つを兼ね備えた商品になっているということです。これらのポイントを、私は「ヒット商品の三原則」と呼んでいます。

図1:ヒット商品の三原則
図1:ヒット商品の三原則

 独自性とは「他社が真似できない商品の特徴」のことを指します。独自性があることで、他社製品との「差別化」につながり、加えて知的財産権などを有していれば商品自体の模倣困難性を高めることもできます。

 次に便益とは「顧客がその価格でもお金を払う理由」のことを指します。「購入」してもらうためには、ターゲットを明確に定め、ターゲットがその価格でも買いたいと思う便益を設計する必要があります。

 最後にストーリーとは「自社がその商品を開発した理由」のことを指します。ストーリーを明らかにすることで、自社がその商品を企画・開発した必然性がターゲットに伝わり、購入の後押しになり「応援」の気持ちを喚起することができます。顧客に応援される商品となることで、商品購入後も使い続けてもらえるきっかけを作ることができるのです。

 長く愛される商品を実現するには、この「ヒット商品の三原則」を意識してベネフィットを設計することが重要です。次の章では、この3つのポイントを押さえながらベネフィットを設計するフレームワークを紹介します。

「ベネフィットストラテジー」でヒット商品の三原則を導く

 ここからは具体的に商品のベネフィットを設計する手法を解説していきます。ベネフィット設計は、商品について「自社ならではの『企画・開発ストーリー』から生まれた『独自性』のある機能・性能を起点に、それが自社の『ビジョンや想い』も含めて誰にとってどんな『体験価値』を発揮するのか」を考案する流れで行います。

 ベネフィットを導き出すこの一連の流れを、私は「ベネフィットストラテジー」と呼んでいます。ここからは、「ベネフィットストラテジー」の中身をより具体的に見ていきましょう。

図2:ベネフィットストラテジーの考え方
図2:ベネフィットストラテジーの考え方

1.差別化できる特徴の定義

 ベネフィットストラテジーをまとめる上で、最初に行うべきは既存の競合商品と比較して「差別化できる特徴(独自の機能・性能)は何か?」を定義することです。

 仮に発売した商品が初期に反響を得ても、独自性が薄ければ便益の模倣が容易なため、似たような便益を謳う競合商品の登場を招きかねません。これを防ぐために、差別化できる特徴を起点に考えるのです。また、その特徴が知的財産権を有していたり、自社ならではの「企画・開発ストーリー」があったりすればより強い独自性となります。

 また「商品の特徴」に独自性が薄い場合、ユニークなターゲットを設定して独自の「新カテゴリー」を提唱するという方法もあります。

 第1回で事例として紹介した「アウトドアスパイスほりにし」は、ターゲットをアウトドアファンと定め「アウトドアスパイス」という名称で商標権を取得しています。それにより「アウトドアスパイス」という新カテゴリーを創出したのです。他社が謳えない新カテゴリーを確立することで「独自性」を構築したユニークな事例といえます。

2.差別化できる特徴がもたらすメリットの定義

 「差別化できる特徴(独自の機能・性能)」が定義できたら、次にその特徴がもたらす「メリット」を定義します。そして、この「メリット」に「ターゲット」という概念を加えることで、ターゲットがお金を払う理由である「便益」を導くことができます。

3.企画・開発に込められたビジョンや想いを言語化して体験価値に昇華

 最後に、便益と合わせて企画・開発に込められたビジョンや想いを言語化することで、顧客がその価格でもお金を払い応援したくなる「体験価値(ベネフィット)」へと便益を昇華させることができます。

 よくメリットとベネフィットを混同して使われる方がいますが、この2つには「ターゲットの有無」「ストーリーの有無」という明確な違いがあるため使い分けが必要です。

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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?連載記事一覧
この記事の著者

北原 成憲(キタハラ マサノリ)

株式会社マクアケ 専門性執行役員/R&Dプロデューサー

 サイバーエージェントを経て、2015年にマクアケへ入社。「Makuake Incubation Studio(MIS)」を立ち上げ、企業の研究開発(R&D)を起点にした新商品プロデュースや、新規事業創出のための新たな仕組みづくりに従事。手...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/45214

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