3時間待ちの大行列!購買にも貢献
──コンセプトショップの反響・結果はいかがでしたか。
梶浦:まず、初日の行列がすごかったです。3時間待ちの大行列ができました。ONE OK ROCKさんとのコラボグッズは即完売、ビールの購買にも大きく寄与しました。数値はもちろんですが、ファンダムの熱狂的な空気をリアルで目の当たりにしたのは大きかったです。今後も試行錯誤を続けていきたいですね。
ONE OK ROCKさんとは、コラボ缶も制作しました。以前からCMソングをお願いしていることもあり、ファンからすぐに反響がありました。これは単なる一過性のタイアップではなく、長く続けているからこそ、購買までつながる深いものになったのだと考えています。
──ファンダムの内側に入ってブランディングを行う際のこだわっている点はありますか。
梶浦:我々がファンダムを意識した施策を行う時、「ファネルの一番下である、購入まで届くか」にかなりこだわっています。
少し異なる話になりますが、2023年に阪神タイガースが優勝しましたよね。その際に平田勝男ヘッドコーチが、スーパードライの瓶を持って「おつかれ生です」と、全国ネット・テレビでおっしゃってくださいました。その言葉に対し「それはマルエフ(のキャッチコピー)だ」とツッコミが入るというやり取りがあったのです。
これをテレビで見て私は、「すぐに広告にしよう」と次の週には平田ヘッドコーチにオファー。優勝を祝うCM動画を制作し配信しました。配信の反響はすさまじく、瞬間的に新規の売上が一時的に急増したのです。ファンであれば「おつかれ生です」と平田ヘッドコーチが言っていた瞬間を知っていますし、熱狂が続いているタイムリーな状況で配信できたので、店頭での販売に直結したのだろうと考えています。
平田ヘッドコーチの優勝コメント後、わずか1週間でオファーし、プロモーション動画を撮影・配信。タイムリーに配信されたCMは大きな反響と購買につながった。なお阪神ファンは400万人以上いると言われている。
「ファンたちの文脈をどう作るのか」が鍵になる
──ファンダムの内側に入るために必要なことは何でしょうか。
梶浦:「ファンたち目線の文脈をどう作るのか」が重要なポイントとなってきます。ファンがカルチャーとして共有する文脈をしっかり理解した上で、ファンとアーティストと商品をつなげるストーリーを美しくかつタイムリーに描けた瞬間、実際のモノが動き、さらなる熱狂が生まれていくわけです。
──音楽カルチャーならではの、ファンダムの特性はどういったところにありますか。
梶浦:スポーツは、デジタルよりもリアルが中心です。その場で見たり、リアルタイムで視聴したりして、それらを分かち合い、楽しむことが多いです。
一方で音楽カルチャーは、デジタルの世界が大きく広がっています。ライブなどリアルで見られる機会は、スポーツと比べるとそこまで頻繁にありません。だからこそ、デジタルを通じてファンが一緒になってアーティストを育てていき、その熱を凝縮してリアルで熱狂する文化があります。
K-POPなどがわかりやすい例ですが、“推し活”という言葉にも代表される通り、アーティストを応援する文脈に乗り、「今以上にファンを喜ばせることはできないか」を考えていくのが特徴でもあり醍醐味だと考えています。
