“黒船”「Glam」上陸
「インターネット広告市場はまだ黎明期だ。この成長市場の中でも『ブランディング広告市場』には大きなチャンスがある」
検索連動型広告が市場を牽引するインターネット広告市場。その流れは日本でも同様だが、「オンラインでブランディング広告が展開できる」メディアとして米国で成功している「Glam」の日本語版がいよいよスタートした。25日の記者会見では、「Glam」の運営元である、グラムメディア会長兼CEO サミール・アローラ氏、グラムメディア・ジャパン代表取締役CEOであり、エキサイト元社長の山村幸広氏から日本向けサービスへの意気込みが語られた。
「Glam」=ハブサイト
「Glam」は、米グラムメディアが運営する女性向けネットメディア。コムスコア・メディアメトリックスの2008年9月調べによると、世界中で月間約7,500万人のユニークユーザーを集め、ユニークビジターランキングでTOP10にランクインしているネットメディアだ。
女性をターゲットにした雑誌サイト/ブログは数多く、テーマも多彩だ。「Glam」は、その数多くある女性向けサイトを“選別”し、“集約”した、いわゆる“ハブサイト”として存在している。現在、Glam Media Networkには650以上のサイトが参加し、加入サイト同士でトラフィックの誘導を図れるなど、加入者側にメリットがある仕掛けを提供している。そして、そのプレミアムなネットワークを活かした、アドネットワークを形成することで、事業を展開している。
インターネット広告に“ブランディング”を
記者会見の中で、グラムメディア会長兼CEOのサミール・アローラ氏は「ブランディングを必要とする広告主をどうすればオンラインに集められるのかという発想から、『Glam』は生まれました」と語った。「Glam」は、当初からブランディング広告を掲載するためのメディアとして設計していたという。その結果、“ページビュー”“クリック数”といった“パフォーマンス”を広告主に提供することを目的としたメディアとは一線を画し、数値では測ることが難しい“バリュー(ブランディング)”を広告主に提供することを目的としたメディアというポジションを勝ち取ったというわけだ。
“バリュー”を提供する手段として、グラムメディアは、“バーティカル・コンテンツ・ネットワーク(専門アドネットワーク)”を形成している。“バーティカル”とは“垂直型”という意味を表し、「ターゲット化されたアドネットワーク」と言い換えられる。米グラムメディアは、640以上のサイトをネットワーク化し、それらのサイトが持つ広告枠に対して広告・クリエイティブを配信している。日本版のサイトでも同様のネットワークを形成していく予定だ。
日本を代表するパブリッシャーがパートナーシップ
この「オンラインでブランディングを」というコンセプトに日本のパブリッシャー/コンテンツプロバイダーたちの多くも賛同する。既に数多の媒体で語られていることだが、新聞、雑誌、テレビといったマスメディア運営企業にとって、マス広告費の減少は避けられない。その中で収益を確保するためには「ネット」や「モバイル」といった“新しいメディア”で柱を作る必要がある。
小学館 常務取締役 後藤庄三氏は「雑誌社としてもクロスメディア転換していく時期と感じている。弊社はF1層を中心に、クオリティの高い雑誌を発行しているが、広告ビジネスの視点で見ると、雑誌ビジネスには限界を感じています。また、それぞれの雑誌でサイトを持っているが、どうしてもトラフィックを稼げないのが現状です。グラムメディア・ジャパンとの取り組みは、その状況を打開する契機になると思っています」と語った。
「自分たちのブランドが守れる媒体が少ない」
一方、広告主の視点からも「オンライン上でブランディングができるメディア」が求められていると山村氏は指摘した。
「『Glam.jp』を立ち上げる際に、数多くの広告主にヒアリングをしてきたのですが、『ネット媒体には、自分たちのブランドが守れる媒体が少ない』『ユーザーのクリックがほしいのではなく自分たちのエモーショナルをユーザーに突き刺したい』といった声を非常に多く耳にしました。グラムメディア・ジャパンでは、こうしたオンラインでのブランディングを目的とした広告主の声に応えるサービスを提供していきます」
また、「従来のアドネットワークは『枠を集めただけ』ですが、グラムメディア・ジャパンは、ブランド力のあるサイトと提携することで、『プレミアムなアドネットワーク』を形成します。ブランディングを狙う広告だけを扱い、ダイレクトレスポンスを狙う広告は扱わない予定です」と他のアドネットワークとの違いを強調した。同社のアドネットワークに参画する全サイトを対象にした「グラム ネットワーク」のメニューの場合、80万インプレッションで120万円(1インプレッション当たりの単価は1.5円)となる。
「オンラインでブランディング」の土壌を築き、現状のインターネット広告市場に、風穴を空けることができるのか。また、メディア運営の新しいモデルとして、日本でも存在感を示せるのか。同社の動向に今後も注目だ。
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