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自動入札ツールでリスティング運用の効率化
自社にノウハウを蓄積し運用負荷の軽減に成功

 リスティング(検索連動型広告)は、予算管理や効果測定、掲載順位の調整、掲載する曜日や時間帯の調整など、細かな運用が必要とされ、日々その運用負荷は高まっている状況だ。その負荷を軽減するために自動入札ツールの活用を検討しはじめている企業も多いが、実際に負荷は軽減されるのだろうか。その答えを聞きに自社で自動入札ツールの活用をはじめたオンラインソフトウェア流通サイト Vector(ベクター)を訪ねた。

自社にノウハウを残すために自動入札ツールを導入

 オンラインソフトウェア流通サイトとして有名なVector(ベクター)。フリーソフトやシェアウェアのダウンロードなどで利用したことのある人も多いだろう。同社の事業はソフトウェアのダウンロード販売のほか、PC向けパッケージソフトや周辺機器のオンライン通販、オンラインゲームの事業、自社メディアを使った広告事業などだ。

 一般的にはフリーウェア・シェアウェアなどのソフトウェアのダウンロード事業を柱としているイメージがあるが、売上の多くはプロダクト製品の割合が高い。2009年2月にオンラインゲームの子会社を統合してからは、アイテム課金を中心としたオンラインゲーム事業も好調だという。

 同社の営業推進部 プロモーションGに所属し、Webマーケティング全般を担当する長谷川大助氏(写真左)は、以前ソフトウェア販売を行う部門に所属。メーカーからソフトや周辺機器を仕入れ、サイトに掲載し、メルマガやSEOなどで販促を行っていた。

 4~5年前からアフィリエイトやリスティングをはじめたものの、フリーソフトやシェアウェアをダウンロードを目的としたユーザーからのアクセスが自然にあったので、アフィリエイトやリスティングを通しての売上はそれほどではなかったという。その後、アフィリエイトやリスティングの運用を広告代理店に任せるようになり、徐々に効果が出るようになったきたようだ。

 現在、リスティングの運用については2009年9月頃からロックオン社が提供する「アドエビスAutoBid」を導入し、自社で管理するようにしている。この理由について長谷川氏は「代理店にお任せしていると自社にノウハウが残りません。我々は社内にノウハウが欲しいのです。また代理店手数料も馬鹿にできません」と語った。

 自動入札ツールには、システム全体で自動的に最適化を行うポートフォリオ型と、日々の運用業務をルールとして定め、入札するキーワード単位でルールを設定できる、いわゆるルールベース型の2種類があり、「アドエビスAutoBid」は後者となる。

 長谷川氏は、「商品点数が多いので、ルールベースのツールがよいと思っていました。ポートフォリオ型だと細かな設定ができないので、代理店にお願いするのと変わりません。『アドエビスAutoBid』は、コストも明確でしたので採用することにしました」と導入の経緯を説明した。

 また、Vectorのオンラインショップで扱う商品数は1万点ほどあり、リスティングのキーワード選びにおいて、それぞれ商品の知識は必須でそれを代理店にまかせるより自社で行った方がいいという判断ももある。

 「キーワードを選ぶ作業は、リスティング運用全体の三分の一です。その後キーワードの管理や順位のチェック、コンバージョンはどうだったかといった作業の方に時間をとられます。当然24時間張り付いて運用するわけにはいきませんので、自動入札ツールの『アドエビスAutoBid』を活用しています」と話す。

海外向けリスティングにもチャレンジ

 現在、ショップサイトのリスティングはYahoo! JAPAN リスティング広告とGoogle AdWords(Google アドワーズ)を利用し、両社とも同程度の予算で広告展開を行っている。両サービスに出稿するにあたり、インプレッション数が同じでも広告の内容でクリック率が変わるため、広告テキストを別々に設定することも多い。どちらかというとGoogle AdWords経由の効果が高いそうだ。

 オンラインゲームの場合は、純広告、アフィリエイト、リスティングの3つを活用しており、中でもアフィリエイトからの集客が強いという。アフィリエイトについては、実績のある媒体をまとめている代理店に任せることが多いが、例えばGoogle コンテンツターゲット経由で、費用対効果の高いサイトを見つけたら「アフィリエイトにしませんか?」とスカウトをすることもあるという。リスティングがクリック課金なのに対し、アフィリエイトは会員獲得に対して報酬を支払うからだ。

 また、最近では、mixiのソーシャルアプリや、ブラウザだけで遊べるゲームも積極的に展開している。ブラウザで遊べるシミュレーションRPG『ドラゴンクルセイド』については英語版を提供し、海外向けのリスティングやアフィリエイトも行っている。海外マーケットは日本とは違って桁違いのビジネスチャンスがある。リスティングであれば、国内にいながら海外の地域を指定して広告を展開することもできる。

ドラゴンクルセイド
ドラゴンクルセイド

 『ドラゴンクルセイド』の海外向けのリスティングの成績は、クリック単価は国内向けと同等であるがインプレッション数や獲得数は国内よりも多いという。このように海外向けの展開も視野に入れると、リスティングの運用管理を代理店に任せるよりは、社内にノウハウをためていった方が効率がよい。ゲームは、ワールドワイドに展開できるため今後非常に期待の持てる分野であるとし、現在はノウハウを蓄積中とのことだ。

「アドエビスAutoBid」で掲載順位を狙った運用を実践

 さらに長谷川氏は、「リスティングの掲載順位を1位にすることは簡単です。しかし、費用対効果の高い順位は1位とは限りません」と、Yahoo! JAPANの検索結果を見せながら我々に問いかけた。リスティングの掲載順位は、検索結果画面の上段に上位から数件、そしてより下位がサイドバーに続く。

 長谷川氏は、上段に3件表示されている場合は、3位、2件表示される場合は2位と、できるだけオーガニック(広告ではない純粋な検索結果の領域)に近い位置を狙うとよいという。利用者は広告の存在を認知しており、純粋な検索結果だけに注目する傾向にあるからだ。

 では、上段に3件表示される場合に、オーガニックにより近い3位を逃してしまった場合はどうだろう。4位は、右サイドの一番上に表示されると、オーガニックの領域からは遠くなってしまう。サイドに表示される場合もオーガニックに近くなるよう少し下げて、5位~6位をねらうといい。このようなノウハウは、常にさまざなま施策を試し、改善を行ってきた長谷川氏のPDCAサイクルの結晶とも言える。

 こうして長谷川氏は、常にライバルと順位争いをしているわけだが、掲載順位を狙ったルール運用ができる「アドエビスAutoBid」が役に立っているという。「『アドエビスAutoBid』は、キャンペーンや広告グループといったリスティングの構造に準じたユーザーインターフェイスになっているので、リスティングをある程度知っている人向けですが、ルールベースで掲載順位を狙えるので、効率的な運用を行うために役立っています。もし、機能の追加を希望するならば、Google AdWordsの無料アプリケーションである、AdWords Editorのような機能がほしいと思っています。AdWords Editorを利用するとキャンペーン管理情報をローカルにダウンロードできます。編集した後に再度アップロードできるので、キャンペーンを管理する際に非常に役立っています。『アドエビスAutoBid』についても、同じような機能があると、運用管理が楽になりますね」と、リスティングのヘビーユーザーならではの期待を述べた。

 最後に、リスティングの運用のコツについて聞くと「PDCAに尽きます。自分の場合は『何をいつどうしたか』というメモを必ずつけるようにしています。そして、何か変更を加えたら、その箇所と結果の予想や期待値を残しておきます。その結果を後日確認して効果を検証し、次の変更につなげています。今は、こうした運用サイクルを社内の別の人間に引き継ぐためにノウハウをまとめているところです」と語った。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし...

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MarkeZine(マーケジン)
2010/01/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/9262