思いやりがないと、デリカシーのない表現に
これまで添削したコピーの中にも、思いやりの足りない表現がけっこう目につく。たとえば、次のコピーをご覧いただきたい。テーマは、食器洗い乾燥機のキャッチフレーズだ。
- 手洗いより節水できる、食器洗い乾燥機。
- ママは年中ハンドクリームが手放せない。
- サボって節約、得をしよう。
いずれも、食器洗い乾燥機を使うことで手に入るメリットを訴求しているという点では悪くはないのだが、受け手への想像が少々足らない。そのため、好奇心もニーズも触発されず、スルーされそうな感じだ。商品の機能や働き、ユーザーの声などの情報を把握した上で書いてもらっても、思いやりが足りないとこうなってしまう。
1.「手洗いより節水できる、食器洗い乾燥機。」は何がいけないのか
これは、訴求ポイントの優先順位を誤っている。確かに業務用であれば、水道代軽減も効果的だろう。しかし、家庭用で主に使うのは主婦だ。節水も大事だが、ユーザーの声には「節水できて良かった」という感想はなかった。最も多かった声は、「精神的なゆとり」と「手荒れの解消」だ。主婦というターゲットに訴求すべきは、そこじゃない。
2.「ママは年中ハンドクリームが手放せない。」は何がいけないのか
その手荒れの解消にフォーカスしているが、状況の説明だけなので、共感させるにはあっさりし過ぎ。誰(購入する、その決定をする人)に訴求したいのかくっきりさせて、悩みに寄り添うように伝えたい。たとえば……
- 年中、手荒れに悩むママへ朗報です。
- がんばる奥さんの手が悲鳴をあげてます。
のように、自分のことだと思わせたり、購入の決定に関わるかもしれない夫に間接的に訴求したりと、商品を使う<誰か>に対して、少し想像を深めれば共感しやすい表現が見つかる。
3.「サボって節約、得をしよう。」は何がいけないのか
訴求の狙いは悪くないのだが、誰が得をするのかがコピーだけでは見えてこない。それと、<サボる>というネガティブに受け取られやすい言葉が気になる。
商品とユーザーについて、もう一歩踏み込んで考えようよ。主婦向けの家事関連の商品(インスタント食品など)には、表現の気づかいが必要な時がある。家事を軽減するというメリットは労力を減らす、楽にするので、サボる、手抜きをするといった受け止め方をされることが少なくない。
特に専業主婦の場合、家事は機械にまかせて怠けているのでは? 自分だけ楽をしているのでは? と思われてしまいがち。だから、ユーザーは欲しいけれど積極的にそう言えない、やはり我慢しようということになる。そうなると、誰も得をしない。だから、<サボる>など誤解を招く、やましさを感じてしまう言葉は使うのはとても危険だ。
改善コピーの「がんばる奥さんの手が悲鳴をあげてます。」は、夫に家事や育児で毎日大変な妻の苦労を知ってもらい、購入しやすい環境を作る(それなら買おうよという風に)という狙いがある。
食器洗い乾燥機の特性、ユーザーの抱える問題といった商品をめぐる事象について想像を広げないと生まれてこない表現だ。そんな相手への思いやりが求められる。
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