企業のグローバル化が進むにつれて、Webサイトの多言語化など、翻訳の需要が増えてきました。日本では約数千社の翻訳業者が存在するといわれており、最近では、クラウド翻訳のような新しいオンライン翻訳サービスも始まっています。そんななか、欧米では、Transcreationという言葉が使われています。今回はそのTranscreationについて解説します。
Transcreationとは
まずこのTranscreationという言葉、日本ではあまりなじみのない言葉かもしれません。Transcreationとは、Translation(翻訳)+ Creation(クリエーション)を掛け合わせた造語です。
Wikitionary(Wikipediaの辞書版)によると、“An adaptation of a creative work into another language or culture.”(クリエイティブを他の言語や文化に適合させること)とされています。
言葉自体は、数年前から欧米のマーケティング業界で使われるようになりましたが、考え方自体は昔から存在します。
たとえば、映画の字幕です。バイリンガルの人なら経験があると思いますが、役者の台詞と字幕は必ずしも一致しません。これは、メッセージを的確に伝えることを目的に、直訳ではなく、意訳しているからです。これが、Transcreationの考え方です。
Translation(翻訳)とTranscreationの違い
さらに詳しく、翻訳とTranscreationの違いを見ていきます。
翻訳の目的は、より正確に1つの言語を他の言語に適応させることです。たとえば、法律文書。翻訳者の判断で意訳するとトラブルの元になる場合もあり、解釈は専門家に任せることを前提に、とにかく正確に直訳することが求められます。
一方Transcreationは、先述のように、メッセージを伝えることに注力します。マーケティングの手段であるWebサイトのキャッチコピーなどは、直訳ではユーザーに訴えかけられる力がそれほど強くない場合もあります。メッセージ性が強いものは、Transcreationで対応したほうがより目的を達成できる可能性が高くなります。
では実際に、海外向けWebサイトを作る際に、どのようなTranscreationが必要なのでしょうか。
日本語 | Translation(翻訳) | Transcreation |
---|---|---|
会社概要 | Corporate Profile | About Us |
メンバー紹介 | Member Introduction | Our Team |
事例 | Case Study | Success Story |
例えば、「会社概要」をCorporate Profileと訳すことは間違っていません。しかしながら、英語圏のWebサイトの場合、「Corporate Profile」はあまり使われず、「About Us」が使われることが多いようです。
「メンバー紹介」も同様に、「Member Introduction」は間違っていませんが、Webサイトでは「Our Team」や「Our People」と使われることが多くなります。「事例」も「Case Study」は間違っていませんが、「Success Story」としたほうがコピー的にはインパクトがあると考えることもできます。
以上から、海外向けWebサイトを構築するには単なる翻訳ではなく、Transcreationが必要だと言えます。