「ペルソナ・アプローチ」で、顧客を起点としたマーケティングのゴールを具体化する
次に紹介したいのが、「ビジネスゴールを達成する! ユーザー体験シナリオ実践 ~小売編」、「ビジネスゴールを達成する! ユーザー体験シナリオ実践 ~保険編」の2本だ(リンク)。最新潮流を知り、プラットフォームを導入したとしても、ゴールを達成するために何が必要か、ターゲットは誰か、そのターゲットに対して最適なアプローチはどういうアプローチなのか、といった一連のシナリオを描くのはマーケター自身。
両動画では、ユーザー体験シナリオを描くためのステップを、ステップ1:企業の目標を明確にする、ステップ2:仮想ターゲット顧客を設定する、ステップ3:ペルソナのシナリオを策定する、ステップ4:企業戦略目標の共有化と事業間連携を抽出する、という4つのステップで紹介。小売業、保険業という2業種を例に挙げて解説している。もちろん、業界が異なる人にとっても、ユーザー体験シナリオの作成をイメージできる内容なので参考になるはずだ。なお、IBMでは、ユーザー体験シナリオ作成を支援するソリューションも提供しており、4~6週間程度で実施できる内容となっている。
ここから、「ビジネスゴールを達成する! ユーザー体験シナリオ実践 ~小売編」の動画を例に、どのようにユーザー体験シナリオを作り上げていくのか、一部紹介していこう。動画内では外資系化粧品会社を例に挙げ、「日本市場での売り上げ拡大を狙い、男性化粧品市場の拡大と売上高第一位に目標を設定する」といった具合に、まず目標を明確化している。
次に、仮想ターゲットとなる顧客を具体的に想定する。仮想の顧客はペルソナと呼び、ペルソナが誰なのか、年齢、職業、趣味、嗜好、家族構成、購買履歴など、関係する部署すべての人が答えられるようなレベルで設定する。前出の外資系化粧品会社の例でいえば「35歳の男性で、IT系企業に勤続13年、勤務地は渋谷、趣味はスポーツ観戦、二子玉川にマンションを購入。5年前に結婚した妻35歳は専業主婦で、3歳の娘の子育てを楽しんでいる」などと家族の背景や行動までも詳細に盛り込む。
さらに、ペルソナが体験するシナリオを具体的に策定。ユーザーであるペルソナがどこで商品に出会い、商品に触れてどのように使用しているか、どのような体験を通して何を感じ、どんな行動するのかを描く。化粧品会社を例にすると、今まで化粧品を使ったことがない男性がいきなり商品を手に取ることはないため、情報収集の中心は妻という設定になるだろう。「幼稚園のママ友との会話の中で妻が先に商品に出会う。スマートフォンに化粧品会社のアプリをダウンロードするが、ダウンロードしたことを忘れてしまっている。しかしその後、渋谷でのショッピング中に商品キャンペーンの情報を受けとったことをきっかけに、父の日のプレゼントとして購入。男性ははじめて商品を体験する……」と描いていく。
最後に企業戦略目標を共有化し、事業間の連携を強化する。ペルソナの一連の行動から、彼らが価値を感じることを想定し、その実現方法を企業または事業全体で考える。自分たちの事業のどのインターフェースで、ペルソナにどういう価値を与えることができるのかを共有。そのシナリオを実現するために必要な能力や実現指標、顧客との接点やITがすでにあるのか、ない場合は誰が何を持つ必要があるのかを確認するという流れになる。これら4つのステップを実現すれば、顧客を起点としたマーケティングのゴールを達成するためのロードマップが見えてくるはずだ。