統合管理プラットフォームを解剖する
前回まで、統合管理プラットフォームの重要性を解説してきました。今回からは主な統合管理プラットフォームの機能や特色を紹介していきます。まず、アドビ システムズが提供している「Adobe Media Manager」と Google が提供している「 Doubleclick Search 」を紹介します。
Adobe Media Manager
まずご紹介させていただくプラットフォームはアドビ システムズ株式会社が提供している「Adobe Media Manager」(旧 Efficient Frontier)です。
まず特筆したい機能がACMと呼ばれている在庫情報と連動したリスティング広告管理機能です。この機能自体は各社の製品にも見られますが、Media Managerの場合、在庫情報をFTP経由で受け取り、最短で2時間ごとにキーワードの抽出、クリエイティブのテンプレートへの流し込みなどを行い、その商品情報をリスティング広告に反映させることができます。ほかの統合管理プラットフォームに搭載されている機能と比べ、2時間という高頻度での更新を実現しているのはMedia Managerが唯一となります。
レポート部分における特色としては、トランザクションレポートと呼ばれているコンバージョンに至るまでのリードタイム(広告接触からコンバージョンに至るまでにかかった時間)のレポート抽出が挙げられるでしょう。
後述するアトリビューションを前提とした自動最適化の場合、広告接触からコンバージョンが発生するまでの時間がある程度かかっているという事実が重要になります。広告接触からコンバージョンに至る時間が1時間未満など、他に広告接触が起こりえない場合、そこにアトリビューションの概念を導入して最適化することは大変困難ですが、1か月や3か月かかるような商材の場合、コンバージョンに至るまで複数回広告接触が発生している可能性も高く、アトリビューションを踏まえた最適化を検討するべきだといえます。そういった意思決定においてMedia Managerのトランザクションレポートは非常に強力な武器になると思われます。
洗練されたアルゴリズムによる最適化とAdobe Marketing Cloudとの連携が魅力
Media Managerの機能として理解しておきたいのが、その高度な最適化アルゴリズムをもとにしたポートフォリオ入札だといえるでしょう。Media Managerのコンバージョンタグを導入することであらかじめ設定した予算をベースに、コンバージョンの最大化、ないしは売り上げの最大化を目指し、CPA/ROASの最適化を実現します。
ポートフォリオ入札についてありがちな誤解として、「目標とするCPA/ROASを最適化する機能」という考え方があります。それ自体は間違いではないのですが、実際のCPAが「5000円」という状態で目標とするCPAを「500円」と設定した場合、コンバージョンの実数も含めて減少するという状況が多く発生します。目標とするCPAがあまりに非現実的である場合、アルゴリズムとしては本当にCPAが良いワードのみを残して、CPAは多少悪いかもしれませんが、獲得数が非常に多いビッグワード系のキーワードを停止せざるを得ない、という状況が発生するのです。
その点Media Managerのポートフォリオ入札は、上記のようなCPAを目標とするポートフォリオ入札にも対応していますが、金融工学のアルゴリズムをもとに、現状の予算の中でコンバージョンを最大化するという自動入札を実現することにより、単なる最適化ではない、アカウントの効果の最大化を実現するポートフォリオ入札を搭載しているということがいえるでしょう。
また、Media Managerでコンバージョンを測定し、アカウント全体にアトリビューションのモデリングを設定することで、単なるラストクリックだけではなくアトリビューションの重みづけを加味したポートフォリオ入札が行えるというのも、特に購買の検討期間が長い商材を扱っている、たとえば不動産業界や旅行業界などに関しては非常に強い武器だといえます。
Adobe Marketing Cloudとの連携
Media Managerはそれ単体でも非常に強力なデジタル広告キャンペーン管理プラットフォームだといえますが、その真価は「Adobe Marketing Cloud」というアドビ システムズが提供する一連のデジタルマーケティングソリューションと統合することで発揮することができます。
Media Manager単体でもDSPやディスプレイ広告の配信サーバと連携してビュースルーコンバージョンの測定とレポーティングが可能ですが、そのデータとAdobe Analytics(旧SiteCatalyst)とのデータを連携することにより、広告のインプレッションからオーガニック経由での訪問まで含めて分析することができます。また、「Adobe AudienceManager」というDMP機能と連携することでプライベートDMPを構築し、Media ManagerのDSP機能(2013年現在、日本未提供)をより効果的に活用することも可能です。