Adobe Digital Marketing Symposium 2014 サイトの事例
前回はサイト内コミュニケーションにおける個客最適なコミュニケーションを実現するアプローチとはどういうものか、Adobe Marketing Cloud の紹介も交えながらまとめました。今回はそのアプローチについて皆さまの理解がより深まるよう、実際のケースを基に具体例を紹介します。
取り上げる事例は、昨年年6 月に弊社が実施したAdobe Digital Marketing Symposium 2014(以下ADMS)のサイト内コミュニケーションです。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、当イベントはAdobeが毎年1回開催している国内最大級のデジタルマーケティングイベントであり、昨年は約1,500名ものお客さまにご来場いただきました。まことにありがとうございました。
このイベントでは基調講演に加え、17ものブレークアウトセッションが組まれており、お客さまにはサイトを通じて参加希望のセッションに事前登録をいただいておりました。より多くのお客さまにこのイベントに興味を持っていただきご来場いただきたい、という思いから、この事前登録サイトでは訪問者のカスタマープロファイルを活用し、コミュニケーションを個客最適化するための施策を幾つか導入しておりました。
それら施策の中から今回は
- Environment Variablesを用いたパーソナライズドコミュニケーション
- Online Behavior Variablesを用いたパーソナライズドコミュニケーション
の2つをご紹介したいと思います。
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Environment Variablesを用いたパーソナライゼーション
連載第2回目でも紹介したように、Environment Variables(環境変数)とはお客さまがどのような環境からアクセスしているかを示した情報です。
前回のADMSサイトではその中からIPアドレスに注目し、個客にフォーカスしたコミュニケーションを実施しました。具体的にはDEMANDBASE社のAPIを利用し、IPアドレス情報からそのお客さまがアクセスしてきた業界種別データを取得した上で、それぞれの業界グループごとにバナーのメッセージを変更いたしました。
例えばリテール業界からのアクセスだと分かれば、バナーの画像をリテール業界に身近なものに差し替え、さらに関連する業界の方が登壇するブレークアウトセッションを紹介するなどの施策を行いました。
少しでもお客さまご自身の業界に合った情報を提供することで、イベントを“自分事化”していただき、参加検討のモチベーション向上を狙ったのです。このような施策は、特にBtoBビジネスにおけるオンラインコミュニケーションにおいてご活用いただけることでしょう。
またIPアドレスの活用という点では、上記以外にも地域情報に変換した上でターゲティングにつなげる施策も実施しました。ADMSは都内で開催されるイベントであったため、関東圏以外からのアクセスに対しては、会場周辺のビジネスホテルについての情報も提供するようにしておりました。
Online Behavior Variables を用いたパーソナライゼーション
Online Behavior Variables(オンライン行動履歴変数)とはお客さまのサイト上でのアクションに関する情報です。オンラインでの購入履歴や訪問回数、ページの閲覧状況などが含まれ、パーソナライゼーションによく利用されているプロファイルとなります。今回はアンケート情報を活用したアプローチをご紹介します。
前回のADMSサイトでは初回登録時に簡単なアンケートのご記入をお願いしており、その中には「Adobe Marketing Cloudをご存知ですか」といった旨の質問を用意しておりました。
もしAdobe Marketing Cloudについての予備知識がなかった場合、イベント当日までに少しでもAdobe Marketing Cloudについて知っていただく事が来場意向の向上につながると考えました。そこでこの設問に対して「知らない」とご回答いただいたお客さまには参加申し込み受付完了画面でAdobe Marketing Cloudの概要説明の動画を流し、興味/関心を強めてもらえるようにしておりました。
これらのようにカスタマープロファイルを活用したパーソナイラゼーションには様々な方法があります。皆さまの中にも色々なアイディアが浮かんでくるかと思います。しかしパーソナイラゼーションを考えるにあたり、必ず最初に理解しておかないといけないことがあります。
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「訪問者」が意味するものは?
最初に理解しておくべきこと、それは得られたカスタマープロファイルはどういった粒度/単位で把握されているのか、ということです。
サイトトラッキングには幾つかの方法がありますが、訪問者の特定においてはCookieを用いる、もしくはIPアドレスとユーザーエージェントの組合せを用いる手法が利用されているケースが多いと思います。
つまり一般的にトラッキングツールで「訪問者」と規定し計測しているのは一人ひとりの「お客さま」という単位ではなく、「同一の端末の同一のブラウザ」を認識しているに過ぎません。もちろん業態や施策の切り口等によってはこの条件でも十分な分析が可能でしょうし、そこから得られる仮説からより良いアクションを実現できる場合もあるでしょう。
しかし例えばForrester社の調査によると複数のチャネルからブランドとつながろうとする顧客は60%を超えており、またスマートフォンとタブレット端末の普及率がそれぞれ54.7%、20.9%(参考情報:消費動向調査:平成26年3月実施調査結果、内閣府発表)という事を考慮するならば、「同一の端末の同一のブラウザ」ベースの訪問者の数値と、「お客さま」単位での訪問者の数値には大きな乖離があることは想像に難くないかと思われます。実際弊社で調査した際もそこには大きな差が存在しておりました。
そしてそれは単なる“数値”の差の問題だけではなく、“意味”の差の問題にもなるのです。なぜなら本来見るべき「個客」の一連の行動が、デバイスをまたいだ瞬間、または単にブラウザを切り替えただけで計測が断絶され、ばらばらに切り離されてしまうからです。つまり、最近では当たり前のように行われている、“スマートフォンで検索して商品情報を比較し自宅PCからオンラインで購入する”といった顧客行動を捉えることができないのです。
パーソナイラゼーションを推進する上で、この問題は非常に大きな障壁となります。もちろん、パーソナイラゼーションのフォーカスを多少ぼかす事でその障壁を上手くかわしながら施策を構築することもできます。
しかし、もし皆さまのサイトで例えばログインID等の、お客さま固有の“識別子”を取得できるのであれば、それを活用することで「お客さま」単位でのトラッキングが可能となります。
「お客さま」単位で捉える/Cross-Device Visitor Identification
例えばAdobe Analyticsであればこのような「お客さま」単位でのトラッキングはCross-device Visitor Identificationという機能を活用することで実現可能です。この機能によって一度でも識別されたデバイス/ブラウザからであれば、同一の「お客さま」からのどのアクセスもすべて同じ「お客さま」として認識することができるようになります。
その結果“スマートフォンで検索して商品情報を比較し自宅PCからオンラインで購入する”といった顧客行動も、マーケターがAdobe Analyticsでしっかり把握し、分析することができます。そして、もちろんこれらの分析によって作成したセグメントは、Master Marketing Profileを利用してAdobe Targetに引き渡すことができますので、簡単にパーソナライズドコミュニケーションを実現することができます。
是非Adobe Marketing Cloudを、マーケターの手によるパーソナイラゼーションの推進にお役立ていただければと思います(なお記事内で紹介した素材の一部は実際のものと多少異なります。ご了承ください)。
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