サーチディスプレイとは
テレビCMで消費者の興味を引き立てたら、「続きはWebで」「○○で検索」とうたってWebへ誘導――。これは何も、テレビCMに限った話ではない。新聞・雑誌広告や電車の中吊り広告、街角の看板に至るまで、さまざまなメディアを使って消費者の興味を喚起し、最終的にはキャンペーンサイトへと導いて商品購入・会員登録などへ落とし込む。このようなマーケティング手法がすっかり定着してきた。
だが、実際に消費者が検索してくれたとき、果たしてどれくらいの確率で、意図したとおりの誘導先へと導けているのだろうか。「検索してみたけれど、どれが該当ページか、よく分からない……」などと悩ませた結果、逃してしまった見込客も、相当数に上っていたかもしれない。
その証左だろうか。オンラインへの入り口になる検索結果画面に表示される広告枠を工夫することで、サイトへの流入数を劇的に増やした事例が登場してきているという。
そうした事例で用いられているのは、Yahoo! JAPANの検索結果画面に大型画像・動画広告を掲出できる「サーチディスプレイ」広告。検索結果画面の最上部に表示される広告枠だ。
検索結果画面のファーストビューを大胆に占有
サーチディスプレイ広告の活用法を顧客企業に提案し、成功事例を増やし始めている広告代理店がGMO NIKKOだ。
「大手企業にとって、検索連動型広告『スポンサードサーチ』で自社関連のブランドワードを常に押さえておくのは、もはやMust事項。テレビCMなどと連動させた運用も、当たり前のことになっています。それでも顧客企業の広告担当者の中には、リッチな広告表現ができないところに物足りなさを感じていた方も。『検索連動型広告以外に、検索結果画面に掲出できて、もっと訴求力のある広告枠が欲しい』というニーズが芽生えつつあった中、登場したのがサーチディスプレイでした」(GMO NIKKO 藤原氏)
「サーチディスプレイは、今までになかった見せ方の広告商品です。検索結果画面のファーストビューを大きく使い、画像やフラッシュで訴求できるわけですから。特定の商品やキャンペーンを訴求したい企業や、購入・申し込みを増やしたい企業に、ご提案していきたい広告商品ですね」(GMO NIKKO 古田氏)
古田氏が語るように、サーチディスプレイの魅力の1つは画面占有率の高さ。特に「ハイサイト」(※)と組み合わせることで、ファーストビューのほとんどを、自社関連の情報で占有できるようになる。
※ハイサイトとは、オーガニック検索結果の中の自社サイトリンクの下に各ページのテキストリンクや誘導バナーを設置することで、オーガニック検索結果をリッチ化する商品であり、広告商品とは異なる。
サーチディスプレイ+スポンサードサーチで相乗効果
サーチディスプレイは、掲載期間保証型。企業によっては「クリック課金型のスポンサードサーチを既に利用しているから、併用すると割高になるだけ」と敬遠する向きもあるかもしれない。
けれど、両者を組み合わせて運用することで、キャンペーンサイトへの流入数は、確実に大きく伸びる。ある企業の事例では、サーチディスプレイの導入後、同枠からの流入が増えたばかりか、スポンサードサーチのクリック率も向上。流入数が数千件規模で増加したほどだ。流入数の伸びに伴い、最終的な購入・申し込み件数も上積みがあったと藤原氏は指摘する。
スポンサードサーチのクリック率まで上昇したことについて、古田氏は「テレビCMで視聴したものと同じメッセージを目にすることで、『あっ、あのテレビCMと同じものだ』と瞬間的に判断できるようになったのではないでしょうか」と分析。オフライン広告を踏まえたクリエイティブを掲出することで、サーチディスプレイの広告枠は真価を発揮すると説明している。
「『サーチディスプレイ単体でどう見せるか』よりも、マルチメディアで広告展開する際には事前にストーリーを練っておいて、そのストーリーに沿ってサーチディスプレイを利用することが大切です。また、すぐ下の広告枠に掲出されるスポンサードサーチとの連携も意識するべきでしょう。サーチディスプレイではテレビCMなどで利用したクリエイティブを見せて、スポンサードサーチでテキストを使って詳しく説明する。そのように両者を連携させることで、効果はさらに上がります」(GMO NIKKO 古田氏)
最短で目的地に届けるだけではない、検索の新たな役割
ヤフーで検索連動型広告のサービスマネージャーを務める笠原 勝幸氏は、サーチディスプレイという広告商品を開発したのは、検索の在り方を一歩前に進めたかったからだと説明している。
「従来の検索の在り方を例えるとすれば、高速道路。明確な目的を持ったユーザーを、とにかく短時間で目的地まで送り届けることを目指していました。ところが最近になって、検索の利用のされ方に変化が生まれてきています。新聞や雑誌、テレビなどで情報を取得し、興味を喚起されたユーザーが検索してくることが増えてきました。そのように興味から検索してきたユーザーには、高速道路で送り届ける間に、ドライブインシアターのような魅力的なコンテンツを見せることで新たな体験を提供し、目的地となるブランドへの認知・理解を深めていくことも大切でしょう。
そうした検索に求められる新たな役割に応えるべく、開発したのがサーチディスプレイなのです」(ヤフー 笠原氏)
さらに笠原氏は、サーチディスプレイの広告枠で、動画に対応している点に言及。テレビCMで「続きはWebで」と案内し、続きの動画はキャンペーンサイトで見せる手法が普及しているが、サーチディスプレイを使って続きの動画を見せることでユーザーの気持ちを盛り上げておき、キャンペーンサイトでは最後の結末だけを見せるような展開も考えられるのではないかと話している。
ユーザー・広告主の双方にとって親切なサーチディスプレイ
サーチディスプレイが登場したことで、前述のように、スポンサードサーチ、ハイサイトまでを組み合わせ、検索結果画面のかなりの面積を占有できるようになった。こうしたヤフーの取り組みについて、広告代理店としてはどのように感じているのか。GMO NIKKKOの2人は次のように話している。
「新聞・雑誌・テレビCMとマス向けの広告を展開して、そこからWebに誘導して成果へとつなげるところに課題を抱えるお客様が増えていると感じていました。そんな中でサーチディスプレイのような広告商品の提供を始められて、マス向け広告とWebとをつなぐ役割を担わせようとしているのはさすがです」(古田氏)
「自然検索だけでなく、スポンサードサーチ、ハイサイト、サーチディスプレイといった多彩なオプションを用意して、ユーザーと広告主の双方にとってより親切な検索結果画面を作ろうとしているのは、ヤフーだからできることだと思いますね」(藤原氏)
ヤフー自身、サーチディスプレイの開発に当たっては、広告主にとって従来以上に訴求力のある広告商品を生み出そうと努める一方、「ユーザーのためになるものか」とも熟慮。サーチディスプレイを提供するのは、企業名などのブランドワードに限り、ユーザーの目的を把握しづらい一般的なビッグワードなどでは提供しない方針を採っている。
多岐にわたるクライアントニーズ、サーチディスプレイに続く新商品を
ここまで紹介してきたような期待が寄せられているサーチディスプレイ。提供が始まってからまだ2年ほどしか経っていないが、GMO NIKKOとしては今後ますます販売拡大に力を入れていく考えだ。
「まだまだ成功事例が少ないので、さまざまな業界で成功事例を作り、横展開を図っていきたいですね。クリエイティブの色味などの見せ方、画像と動画のどちらが効果的かなど、ノウハウも蓄えていきたいです」(藤原氏)
「GMO NIKKOの強みはスポンサードサーチなどの運用型広告。ですが、それだけではクライアントの課題を解決できないケースもありました。
その意味でサーチディスプレイは、運用型広告という当社の得意分野に近く、提案しやすい商品。テキストだけでなく画像・動画のクリエイティブと組み合わせて、どのようにクライアントの課題を解決していくか。サーチディスプレイのおかげで選択肢は明らかに多くなりました」(古田氏)
ヤフーとしても、従来の広告商品だけでは満たされないクライアントのニーズを満たしていくため、サーチディスプレイのような新商品を今後も投入していく方針だ。
「検索はこれからもっとユーザーにとって身近なものになっていくでしょう。ユーザーが検索に求めることを探りながら、多岐にわたるクライアントのニーズを満たしていける広告商品を打ち出していきたいですね」と笠原氏は今後の抱負を語っている。