オフラインデータを活用する
これまでの連載でも触れてきましたが、パーソナライゼーションを行う上では、訪問者である「個客」の顔を把握するための情報が必要となります。それらの情報をカスタマープロファイルと定義し、大きく5種類の変数にまとめてきました。
- Environment Variables (環境変数)
- Online Behavior Variables (オンライン行動履歴変数)
- Offline Variables (オフライン変数)
- Temporal Variables (時間的変数)
- Referrer Variables (リファラー変数)
そして前回は環境変数とオンライン行動履歴変数という、オンラインで取得できるふたつのカスタマープロファイルを利用したパーソナライゼーションの事例をご紹介しました。今回はオフラインでの情報(オフライン変数)を活用したパーソナライゼーションについてお話したいと思います。
例えば、皆さんがオフライン/オンライン双方で、IDによって顧客や取引を管理出来ているのであれば、それらをKeyとしてオンラインの情報とオフラインの情報を紐付けることができます。
このつなぎ込みによって、実際の店舗での購入履歴や問合せ内容、会員居住エリア情報等といった、顧客管理データベースにある情報をオンラインでのパーソナライゼーションに利用できるようになるのです。(もちろんその利用の範囲についてはプライバシー保護の観点から十分な配慮が求められます)
ただし、その実現のためには幾つかプラットフォームの整備を行う必要があります。
まず分析についてはAdobe Analyticsなどの分析ツールに直接データを取り込むことで実現できます。例えばAdobe AnalyticsであればClassification機能を活用し、会員ごとのユニークなIDをキーとしてオフライン情報を取り込むことが可能です。そうすると、サイト上のオンライン行動履歴情報と、オフラインでの顧客情報(性別、年代、居住エリア、会員ランク等)などを掛けあわせて分析を行うことが出来るようになります。
もしそこで、特定のセグメントに特有のROIの改善機会を見出すことが出来た場合、そのセグメント条件に該当する訪問者アクセスに対してパーソナライズしたアクションを行いたくなりませんか?
これら、オンラインやオフラインの情報を基にサイト内でパーソナライゼーションを行うためには様々な方法が考えられます。
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Master Marketing Profileを用いたパーソナライゼーション
Adobe AnalyticsとAdobe Targetであれば、Master Marketing Profile(以下MMP)を利用することで、取り込んだオフライン情報を基にしたターゲティングを簡単に行うことが可能です。
例えば、顧客管理データベースにある年代と性別、家族構成データをAdobe Analyticsに取り込んだ、通信販売サイトのケースを考えてみましょう。
それらの顧客データを活用することで、どのようなアクションが可能になるでしょうか? 3月のシーズナルイベントといえばホワイトデーがありますが、もし訪問者の性別等がわかればいろいろなパーソナライゼーションのアイディアが思いつくと思いませんか?
まず性別というカスタマープロファイルで考えてみましょう。この時期、ホワイトデーに関心があるのは女性会員よりも、バレンタインデーのお返しを探している男性の訪問者だと考えられます。そして実際に昨年のデータを分析するとその傾向がはっきりと見いだせたとします。
そうすると性別というプロファイルを利用し、男性だと認識できる訪問に対してはランディングページでホワイトデー特集を大きく訴求し、女性会員には通常のランディングページを見せることで、追加の売上を生み出す可能性があるかもしれない、と見立てることができます。
さらに、年代と家族構成というプロファイルを掛けあわせてみましょう。
もし家族構成が未婚ステータスであれば、「本命チョコ」へのお返しを探しに来ているかもしれません。その場合、多少高価でも魅力的なアイテムが売れるかもしれません。
一方、既婚ステータスの40代の男性であれば「ビズチョコ」のお返しを探しにサイトに訪問しているのかもしれません。そうすると廉価で一度にたくさん購入できるアイテムが好まれるでしょう。
これらの見立てがデータ分析によって裏付けられるとすれば、ランディングページの訴求内容に反映させることで、更なる効果が得られる可能性が考えられます。
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Adobe Audience Managerを用いたパーソナライゼーション
MMPを利用するとAdobe AnalyticsとAdobe Targetだけでもこのようなパーソナライゼーションを簡単に実現することができます。これに加えて、広告出稿との連動や、オンラインでのコンバージョンなどのリアルタイムイベントを絡めるような、より進んだパーソナライゼーションを実現するには、DMP機能をもったAdobe Audience Managerの活用をお奨めします。
それではAdobe Audience Managerを利用すると、どのような事が可能になるでしょうか?
例を挙げると広告出稿においては、自社で定義したセグメントに対し、特定のメッセージを表示させることができます。先ほどのケースでいうと、自社で把握している「男性」「未婚」というプロファイルを持つユーザーに対してのみ、「本命ホワイトデー特集」に誘導する広告を露出し、特集ページへ直接集客する事ができます。
そしてさらに特定のページ閲覧やオンラインでの購入などのリアルタイムイベントを絡めると、特集ページで商品を閲覧したが、その商品の購入に至らなかった会員には閲覧した商品を訴求する広告を表示し、サイト訪問時には前回閲覧していた商品を訴求する、といったコミュニケーションも実施できます。
もちろんその逆で、一度でもサイト内ホワイトデー特集からアイテムを購入した会員には、その広告が表示されないように設定し、サイト訪問時にはホワイトデーではない他の特集をメインで訴求することで、マーケティングコストの無駄遣いを抑える、といった仕掛けも可能です。
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効果検証が大事
これらのパーソナライゼーション施策は、他の施策以上にその効果を検証しなければなりません。なぜならパーソナライゼーション施策を推進すると、ひとつのキャンペーンを運用するにも何通りものシナリオ/クリエイティブを設計しなければならず、カスタマーセグメントを細分化すればするほど工数やコストにはね返ってきます。
そのためパーソナライゼーション施策がROI改善にどの程度寄与したのかを把握し、継続する価値があるのか、それともよりメッシュを細かく設定する余地があるのか、それとも停止すべきなのかを判断することが重要です。
まずは欲張らない
プロファイルの種別があればあるほど、さらにそれらの掛け合わせも加えると実に様々なパーソナライゼーション施策が考えられてしまいます。さらに担当者が複数だとそれぞれの視点から施策をプラニングすることとなり、実に複雑なものが出来上がってしまうケースが多いと思われます。
しかしテスト施策と同様、最初のうちはパーソナライゼーションの”メッシュ”は粗くしておくことをお奨めします。
いきなり複雑なプロファイル条件を組み立て、施策を進めてしまうと、上手くいく、上手くいかないに関わらず、何が要因となってその成果が得られたのかが見えにくくなってしまいます。
またメッシュを細かくするということは、当然ながら対象となるサンプル数も非常に小さくしてしまいます。その結果、得られた成果がシグナルなのかノイズなのか、判断が非常に難しくなるケースが出てきてしまうのです。
それでは新たな収益機会をもたらすはずのパーソナライゼーションという取り組みそのものが「なんだかよくわからないね」と評価されてしまい、パーソナライゼーションの導入そのものがスタックしてしまうでしょう。
そうならないよう、まずはシンプルなプロファイルで施策を組むことを意識し、Small Start, Quick Winを実現していきましょう。それらの成果数字が実績として積み上がっていけば、パーソナライゼーションを皆さまのマーケティング活動にスムーズに導入することができるかと思います。
スピーディに立ち上げるために
しかし実際にこれらのパーソナライゼーションをサイトで活用しようとするとどこから手を付けるべきなのか、お悩みになる場合もあるかと思います。特にパーソナライゼーション施策は、必要なデータをどう取得し連携させるかといった実装面の整備や、分析を通じたパーソナライゼーションを行うべきポイントの特定、さらにそこでの効果検証/ROI測定といったビジネスインパクトの評価等、様々な視点で準備を行う必要があります。
Adobe Consulting ServicesではAdobe Marketing Cloudを用いたパーソナライゼーション導入の事例紹介はもちろんのこと、最適な実装支援やディープダイブ分析を通じた業務面におけるコンサルテーションを通じ、パーソナライゼーション施策実現をサポートさせていただいておりますので、お悩みの際は是非ご相談ください。
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