消費者が接触するディスプレイは、今後もスマートフォンが主流に
若年層のスマートフォン利用が急増している。日本におけるスマートフォンの個人使用率は2014年8月で57.3%であり、まだまだ増加の一途をたどる(※1)。これを牽引するのが30代以下の若年層であり、スマートフォンの使用率は20~30代で70%、高校生・大学生の所有率はほぼ100%に近い(※2)。さらに今後は「若者に特徴的」とされていたスマートフォン活用が、40~50代へと波及していくと予測されており、日本人全体の情報接触に大きな影響を与えそうだ。
また、2006年から2014年の国内メディア接触率の変化(※3)を見ると、スマートフォンが急増しているのに対し、新聞・雑誌への接触率の減少が目につく。平日1日あたり接触時間の調査(※4)では、男女とも若年層ではPCよりスマートフォンを閲覧する時間が多くなり、特に女性については40代までその傾向が強い。一方、「見なくなった」と言われるテレビやPCにさほど変化は見られないが、その中身が変化しているという。荒川氏はこうしたデータ見解を踏まえ、若年層のメディア活用について「テレビのタイムシフト視聴の増加、“ながら”視聴の減少により、テレビや雑誌で見てモノゴトを深く理解していく“きっかけ”が減少している。そんな中、スキマ時間にアクセスが可能なスマートフォンが、主要ディスプレイとして生活の中で存在感の強いメディアになり、今後もこのトレンドは変わらないだろう」と分析する。
この10年間、若年層の興味・関心分野に変化があるのか?
ところで、若年層の興味・関心分野に変化はあるのだろうか。20代男女のここ10年間における興味分野の変化に関する調査(※5)によると、男性はスポーツ、音楽、食べ物・料理、映画演劇、ファッション、女性はグルメ、ファッション、音楽、美容、流行トレンドと多少順位の違いはあるものの、大きな変化は見られない。ただし、それらを知る“きっかけ”となるメディアと、“深く理解する”ためのメディアは大きく変わってきているという。
スマートフォン利用実態を見てみると、利用時間の70%強はアプリに費やされており、ブラウザ閲覧は15%程度。さらにスキマ時間に利用される傾向も顕著だ(※6)。企業のマーケティングやプロモーションの施策において、スマートフォンアプリを通じてターゲットへのリーチを図ることが重要な戦略であることは明らかであるが、PCとは異なり、スキマ時間という独自のユーザーシチュエーションから情報の届け方に配慮することが大切だと言えるだろう。
※1:ビデオリサーチ調べ
※2:20~30代:ビデオリサーチ調べ、小学生~大学生:デジタルアーツ株式会社調べ
※3:株式会社博報堂 生活定点調査2014
※4:株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディア定点調査2014
※5:株式会社博報堂 生活定点調査2014
※6:ビデオリサーチ調べ
2014年、コンテンツが消費者に届くルートが大きく変化した
若年層のスマートフォン利用においては、検索で得た情報の品質に十分に満足しておらず、SNSに気疲れしているというニュースも多く聞かれる。さらにこれらが情報源として「当てにならない」と感じはじめる若者も存在し、一方でアプリは供給過剰……と情報の海で疲弊している様子がうかがえる。情報の供給量が需要をはるかに上回る中、若年層はコンテンツや情報との出会いにおいて「きっかけ」「物事を深く理解するシーン」が減少していると言える。では今の時代、はたして「セレンディピティ(偶然の出会い)」をどこで得ているのだろうか。
その1つの可能性として、荒川氏は2014年に急速に利用者数が伸びたスマートフォンx「キュレーションメディア」の存在を紹介する。これまでコンテンツはマスメディア、Webメディア、SNSや検索エンジン、さらに各種ポータルサイト、まとめサイトを経て消費者に届いていたが、そこに新たなルートとしてスマートフォンでの展開を中心とする「キュレーションメディア」が加わったのだ。
4大キュレーションメディアの特徴と活用方法
「キュレーションメディア」の代表的なものとして荒川氏は「Antenna」「Gunosy」「SmartNews」「NewsPicks」を取り上げ、それぞれの媒体のユーザー特性やサービスの特長を説明した。そして同じキュレーションサービスでもそれぞれアルゴリズムや編成方法が異なるため、ユーザーはもちろん、広告主が活用する目的や方法も異なると解説した。
スマートフォン広告の概念の変化・確立
スマートフォン広告の世界では、これまで量としての露出効率を追求する「量的広告」が一般的だったが、商品やサービスの持つ魅力を自然な文脈で届ける「質的広告」という考え方が2014年から国内に浸透してきている。「質的広告」は、ビジュアル表現やブランドイメージ向上に威力を発揮し、いわゆるAIDMAの「I=興味関心」や「D=消費欲求」を喚起すると考えられている。この傾向は既に米国で先行しており、多くの企業において商品サービスの認知拡大やブランディングの用途で活用されているという。
そして、その担い手として注目されているのが、キュレーションメディアの中でも「質的広告」の表現に特にこだわりを持つ「Antenna」だ。構造としては、まずキレイな画像や自動再生動画といったビジュアルとタイトルでユーザーを惹きつけ、クリック(タップ)して詳細を閲覧させ、最後に企業のブランドサイトにまで誘導するというものだ。
Antennaでは、マスメディアとの連携においても効果をあげており、Antennaxテレビ番組、女性誌、ラジオ番組、映画配給会社や音楽レーベルといった連携プロモーション例を紹介。「単発でキュレーションメディアに広告を出すよりも、様々なメディアと連動して露出することで、多くの人に深く情報を届けることができる。今後はスマートフォンだけでなく、情報流通全体図を考慮した広告戦略・プランニングが重要になる」と訴えた。
また、興味理解・消費欲求が目的の場合、toCなら「Antenna」/toBなら「NewsPicks」、というように使い分け、キュレーションメディア同士を連携させるのも手だ。認知獲得・ダイレクトレスポンス型として力を持つ「Gunosy」や「SmartNews」と組み合わせることで、より戦略的な施策も可能になるだろうと語った。
前例のないスマートフォンxブランドリフト/マーケターの挑戦
そして最後に、「Antenna」の特長と活用事例が紹介された。「Antenna」は都市部の20~30代男女を中心に400万人以上のユーザーを擁し、350を超えるメディアと正式に契約。ナショナルクライアントを中心に多くの支持を集め、現在500社以上のマーケティング・プロモーションに関わっている(2015年3月時点)。
既存のマスプロモーション施策を活かしつつ、スマートフォンを活用した新たなブランドリフトに挑んだ事例としては、「日清食品」の施策が紹介された。テニスプレーヤーの錦織圭さんを起用したカップヌードルのプロモーションにおいて、テレビCMと「Antenna」を連動させ、「全豪オープン」というタイムリー性と、2種類の動画を同じ画面上で比較解説するという「Antenna」のUIを活かした見せ方で大きな話題を呼んだ。
また、ソニー・ピクチャーズの映画『シェフ』のプロモーションにおいては、Web上での展開のみならずリアルな空間でのプロモーションも組み合わせ、表参道にあるカフェ店舗「Antenna<>WIRED CAFE」にて映画に登場するメニューを期間限定で実際にメニュー化し、映画公開記念イベントも開催した。結果、このイベントがパブリシティ効果を生み、コンテンツ露出効果が最大化したという。
様々な事例が紹介されたが、荒川氏は最後に「まだまだ企業内には魅力的なコンテンツが潤沢に存在する」と語り、「さまざまな形でメディアと連携させることで、面白い出会いを生み、新しい価値が生まれて効果につながる可能性がある。前例のない試みに、ぜひAntennaと一緒にチャレンジしてほしい」と結んだ。