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重要なのは、素早く柔軟に動き続けること 顧客接点を最適化するアジャイルマーケティングとは

 デジタル業界を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中で、どこに最適解があるのか暗中模索を続けるマーケターは多いだろう。これからのマーケターが取るべき、最善の道はいったいどこにあるのだろうか。イスラエルに本社を置くKenshoo(ケンシュー)の創業者兼最高経営責任者であるYoav Izhar-Prato氏に話を聞いた。

デジタルマーケティングの主役は「消費者」

 ——昨今のデジタルマーケティング領域において起きている様々な変化をもたらしている要因は何だと思われますか?

Kenshoo,Ltd. Chief Executive Officer,
Co-Founder and Chairman of the Board
Yoav Izhar-Prato(ヨアブ・イザール-プラト氏)

 確かに、この領域では非常に多くの変化が起きており、変化のスピードも日々加速しています。そして、スピードを加速させているのは“消費者”であると私は考えています。現在、消費者はコミュニケーションチャネルやデバイスを自然と行き来しています。すると、自社の顧客がどんな人物なのか、そして最も適切な顧客接点を理解することの難易度は自ずと上がります。

 現在、主導権を握っているのは、あくまでも“消費者”なのです。そしてマーケターが消費者の変化に対応するためには、カスタマージャーニーを正確に描き、描いた購買プロセスごとにパフォーマンスを上げていくことが求められています。

 また、同等に重要なポイントとして挙げられるのが、テクノロジーの進化です。Kenshooも含め、様々な企業が最先端のテクノロジーを駆使した製品を提供しています。マーケターはテクノロジーを使いこなし、成功へと導かなければいけないという点も、課題のひとつになっているのではないでしょうか。

 ——消費者の変化を牽引しているものは、何でしょうか?

 消費者の変化をもたらしている大きな要因にモバイル環境の浸透が挙げられます。消費者の動向を把握する際にモバイルの方が重視されるほど、モバイルは消費者にとって身近なものになりました。一方、マーケター目線で見ると、多くのメディアを複数のデバイスで渡り歩くため、消費者を捉えるのが難しくなったといえます。

 もうひとつ要因として挙げられるのが、ソーシャルメディアです。人々を結びつけている最も大きな要素ですね。このモバイルとソーシャルメディアの2つが、インターネット上での消費者のふるまいに変化をもたらしています。

コンバージョンはカスタマージャーニーの中間地点

 ——消費者のふるまいはどのように変化しているのでしょうか?

 Webの中でも、ソーシャルメディアや検索エンジンなど様々なコミュニケーションチャネルがある中で、消費者は自由にチャネルの取捨選択を繰り返しています。その中でマーケターはコミュニケーションチャネルはもちろん、適切なタイミングやメッセージ、ターゲットを考える必要があり、コンバージョンまで消費者を誘導するのが非常に難しくなっています。

 さらにコンバージョンは、消費者のカスタマージャーニーにおいて中間地点に過ぎません。コンバージョン後にもリピート購入を促したり、個人の口コミをフックにオーディエンスにリーチしたりといったことを見据えた戦略が必要です。消費者のふるまいの変化によって、マーケターの対応すべき事項は間違いなく増えています。

 ——ソーシャルメディアが消費者に変化をもたらしたと話がありました。この変化に伴い、企業のソーシャルメディア活用はどのように変化したのでしょうか?

 マーケティングの目的が増えたように思います。ソーシャルメディアが出てきた当初は、「認知の向上」や「ブランディング」という目的にしか目が向いていませんでした。「ダイレクトレスポンス」や「パフォーマンスの向上」といった視点を持っている企業はほとんどなかったのではないでしょうか。

 その中で、弊社はソーシャルメディアの中でも、Facebook社とともにコンバージョン増加やCPA低下に寄与できると啓蒙してきました。実際にECサイトでもFacebook広告を出稿するようなケースも増えてきましたね。

マーケターを支える自動最適化テクノロジー

 ——ここまで、消費者とマーケティング環境の変化について聞きました。では、これらの変化に対し、御社はどのようにマーケターを支援していくのでしょうか。

 先ほども話した通り、消費者はコミュニケーションチャネルやデバイスを意識しません。弊社は、マーケターも消費者と同様に、チャネルを意識することなく横断的かつ包括的に顧客接点を見渡して、適切なメッセージを適切なタイミングに適切な場所へ配信できる自動入札最適化のテクノロジーを提供しております。

 また現在、検索エンジンではYahoo! Japan、Google、Yahoo Inc. 、Baiduに対応しており、ソーシャルメディアではFacebook、Instagram、TwitterとAPI接続しております。(それぞれ「Kenshoo Search」、「Kenshoo Social」)

 この基本的な機能に加え、さらに付加機能を追加した弊社の商品群の中でも最上位に位置づけているのが「Kenshoo Infinity Suite」になります。

 ——具体的には、どういった付加機能がありますか。

 具体的には3つの機能があります。1つ目は、「Dynamic Attribution」という機械学習とアルゴリズムによる解析を組み合わせ、アトリビューション分析による自動最適化を実行することを可能にした機能です。これにより、広告費を投下したことによる効果を細かく視覚化できるため、最適なメディア入札を行うことができます。

Kenshoo Dynamic Attributionの機能

 2つ目の機能は「Kenshoo Demand Driven Campaigns」です。商品リスト広告(PLA)で成果を上げているクリエイティブ含めた広告グループを自動的にFacebook広告へと変換する機能です。ソーシャルメディア広告で最初からクリエイティブの選定や作成をするのに比べ工数削減ができ、他のチャネルで効果が出ていたものを改善することで、高速でPDCAサイクルを回すことができます。

 3つ目は「Kenshoo Intent-Driven Audiences」という機能です。この機能では、消費者の検索ワードやリスティング広告のクリック状況などに基づき類似するオーディエンスを構築し、ソーシャルメディアの広告ターゲティングに活用することができます。これにより、コンバージョンなど効果の出ている消費者に近いデータを持った人への広告配信が可能になります。

 これらを始めとしたマーケティング機能が1つのプラットフォーム上で利用できるため、検索やソーシャルメディアなど、様々なチャネルにおける施策を最適化することができます。そして、クリエイティブの自動生成や機械学習を利用したアトリビューションなど、テクノロジーによってできる限り工数を削減し、スピーディーにマーケティングのPDCAを回すことが可能になりました。

多岐にわたる選択肢の見極めが重要

 ——「モバイル」と「ソーシャルメディア」は消費者との重要な接点になっているとお話の中で感じたのですが、2つの接点においてマーケターが今後行うべき施策を教えてください。

 モバイルと一言でいっても、ブラウザ経由で検索する人もいれば、アプリを通じて情報を得る人もいます。つまり、モバイルでパフォーマンスを上げようとすると、非常に多様な切り口で最適化を図っていく必要がある。モバイル向けの広告でも、動画広告・ソーシャルメディア広告・アプリ内広告など多岐に渡っており、これがマーケティング環境をさらに複雑にしています。

 しかし、マーケターには多彩な顧客接点が用意されているということの裏返しでもあります。テクノロジーの助けを得ながら、新しいチャネルを開拓し、最適なキャンペーンを素早く行っていくことが大切でしょう。

 また、モバイルにおけるマーケティングで避けて通れないのがアプリの活用です。現在メディアやゲームに限らず、飲食や小売など様々な業界の企業がアプリを提供しており、アプリを活用したマーケティングはとても重要なものになってきています。特にアプリをインストールしてもらうだけでなく、顧客のLTVを考えながら、長く使ってもらえるアプリを作らなければなりません。

 ——ソーシャルメディアに関してはどうでしょうか。

 ソーシャルメディアに関していえば、人々のコミュニケーションをリアルからデジタルの領域へ引き上げるという大きな革命を起こしました。そして、ソーシャルメディアも多様な顧客接点を持っていますので、ターゲットと合致したものを選択する必要がありますね。

 モバイルも同様だと思いますが、多岐に渡る選択肢から一番最適なものを見極め、素早く施策を打つことが重要です。

スピードと柔軟性で成果を出す“アジャイルマーケティング”

 ——Kenshooでは“アジャイルマーケティング”という言葉を提唱していますが、どういった意味がありますか。

 ひとつのコミュニケーションチャネルに固執せず、多岐に及ぶチャネルをまたぎながら、次から次に新しい仮説検証のサイクルを回し、新たな成功パターンを見つけていくというのが、“アジャイルマーケティング”の考え方です。このアジャイルマーケティングの思想は、昨今のマーケターに求められている“変化の激しい環境におけるパフォーマンスの最大化”という新たなミッションをクリアするための方策として、非常に有効なものです。

 例えば、強風吹き荒れる中で1本の棒にしがみついているだけでは、棒が折れてしまう危険性があります。そのため、強風に対して抵抗するのではなく、柔軟に向きを変えるしなやかさが必要です。

 これをデジタルマーケティングの領域で置き換えると、例えばリスティング広告を運用して効果が高いからといって他の施策を打たないと、クリック単価の高騰などの問題が発生し状況が変わることがあります。そうなる前に、ソーシャルやモバイルに関する施策も行うことで、柔軟な対応が可能になります。

 つまり、アジャイルの意味するところは、スピーディーかつフレキシブルに動き続けようということなのです。新しい成功パターンを見つけるためPDCAを回していくことが重要になっています。

 ——では、アジャイルマーケティングを実践する上で、マーケターに求められる役割を教えてください。

 人がすべき仕事というのは、あくせくと手作業を続けることではありません。自動化できるところは自動化し、人が担うべきは創造的かつ戦略的なプランニングです。競争相手や市場の変化にどう対応していくのかという意思決定にこそ、人的資源は投入されるべきではないでしょうか。

謙虚さを持って、アジアのテクノロジー発展に寄与する

 ——最後に、Kenshooの今後の展開について教えてください。

 弊社はこれまでアメリカにフォーカスしてきましたが、今後は日本・韓国・中国とアジアへのビジネスに注力していきたいと考えています。長期的には、メディアの門戸を広げていきたい。少数の強大なメディアが支配している現状から、Kenshooがアジャイルマーケティングの枠組みを作り、新興メディアにもチャンスを与えられるのではないかと思っています。また、それによって特定のメディアに依存せず、様々なコミュニケーションチャネルを超えてマーケターと消費者を適切につなぐことが、弊社の大きなミッションです。

 Kenshooはテクノロジーの会社ですが、アルゴリズムを作っているのは、あくまでも人です。人の情熱や強い意志を重んじながら、失敗と共に学びを重ねていく。それは、我々が大切にしている“謙虚さ”の表れでもあります。今日成功したものが明日も成功するとは限らない市場において、マーケターは常に向上していかなければなりません。弊社は謙虚に向上心を持って、テクノロジーの発展に寄与していきます。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

1983年生まれ。成蹊大学経済学部卒業。大学卒業後、大手IT企業にてレンタルサーバーサービスのマーケティングを担当。その後、モバイル系ベンチャーにてマーケティング・プロダクトマネージャーを務める傍ら、ライター業を開始。旅行関連企業のソーシャルメディアマーケターを経て、2011年1月Writing&Marketing Com...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/06 23:28 https://markezine.jp/article/detail/23530