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UI/UX改善“実践”レポート

6年ぶりに製品のUI/UXを大改善、そこで学んだノウハウを共有します

数値化が難しい「根深い」問題

 以下が私たちの抱えていた根深い問題というやつです。いずれも数値化しづらい問題のため、長いこと解決されずにいました。

問題その1:コンセプトの不在

 まず検討が必要だったことが、「コンセプトの不在」問題です(個人的に最大の問題と認識していました)。旧カレンダー開発時の方針は、「競合に追いつく」という認識に近いものでした。これではあるべき姿を見出すには不十分です。結果、改修や新機能開発の担当者が目指すべき状態がわからず、個別に判断しがちになり、クオリティがバラけるケースが多くなってきました。

 ですから、私たちには、お客さまにどういった価値を提供するのかが端的に表現され、それに照らし合わせることで社内のどんな業務でも判断基準のものさしにできるような、包括的な言葉が必要でした。これまでもいくつかのコンセプトが作られましたが、上記の条件を備えておらず、結果としてどこにも浸透しない時期が長く続きました。

問題その2:共通認識の不足

 次の問題は、一般的によくある話かもしれません。例えば製品改善ミーティングで、営業サイドが「お客様がこのボタンをここに置いて欲しいと言っている」と議題を上げたしたとします。それに対し、開発サイドは「そこに置くと機能の意味がわかりにくくなるし、全体の統一が崩れるのでやりたくない」と返します。そこで議論が始まりますが、妥当な着地点が見つかるまで、時間がかかることが多いものです。なぜこうも時間がかかるのでしょうか?

 営業も開発も、お客様の要望や期待に応えたい気持ちは同じです。けれど合意形成がうまくいかない理由は、営業はrakumoをどう売りたいのかを問題とし、開発はどういう思いでデザインをしているのかを問題とするというように、それぞれが抱く問題意識が共有されていないからではないか、と仮定しました。ですが、仮定したところで、どういうコミュニケーションをとれば共通の認識が得られるのかについては、良い方法を見つけられていませんでした。

問題その3:我々は誰をどう幸せにできるか?

 だいぶ前の話ですが、お客様から寄せられた要望に応えるべく作った機能が、他のお客様にはほとんど使われていない、ということがありました。使っていないお客様からのフィードバックは「使いにくい」「ケースに即してない」といったもので、たくさんの内部検討とユースケースの想定を重ねた新機能でしたので、申し訳ない気持ちでいっぱいになったことを覚えています。

 私たちの製品は、特定のお客様向けにカスタマイズして提供するものではないので、提供するサービスは汎用的で、いろいろなケースに対応できることが望ましいです。とはいえ、全方位的な仕様を考え、実装するのはかなり難易度の高い作業になるので、お客様の数だけ存在するケースの中からニーズの共通点を見つけ、そこにフォーカスできる手法が必要だと感じていました。つまり、「我々は誰を幸せにしたいのか、どう幸せにできるか?」を効率的に考える手法を身につけることが課題となっていたのです。

UXプロセスがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!

  根深い問題に対する有効的な解決策を探していたちょうどその頃、私たちが属するグループ企業内で行われた勉強会に、社長が参加しました。テーマである「デザイン・シンキング」に強い関心をもった社長は、事例のデザインに関するワークショップを自社でも開催することで、社内の問題やサービスの課題を解決したい、と考えました。

 この構想はグループ企業であるネットイヤーグループとの協業という形で具体化し、同社のUXデザイナー坂本さんにご協力いただける事になりました。坂本さんからは、UXプロセスを用いたワークショップを組織的に取り組み、新カレンダーのコンセプト策定、ペルソナ設定、ジャーニーマップの作成、それらを踏まえたプロトタイピングまでを行う施策をご提案いただきました。

 ペルソナ、ジャーニーマップについては、単語は知っていても、どういうものかはよくわからなかったので、坂本さんに見本として過去の事例を何点か送っていただきました。ここではお見せできませんが、「なんか凄そう!」と興奮すると同時に、「ほんとに我々にこんな成果物が作れるんだろうか……」と不安を覚えたのも事実です(結果としてはそれに劣らない結果が出せました!)。

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UXプランニング「3つのゴール」

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この記事の著者

田中 倫太郎(タナカ リンタロウ)

rakumo株式会社 チーフデザイナー
UIデザインとアートディレクションを担当。記者、ライター、eラーニングコンテンツの開発、ニュースメディアのアートディレクターを経て、2008年より現職。因果性や仕組みに興味があります。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/01/29 10:00 https://markezine.jp/article/detail/23753

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