マーケティングにフォローメールが効果的な理由
あなたのもとへも、サービスサイトへの新規登録や、サンプルや資料請求を行うと、「登録ありがとうございます」というメールが送られてきたことはないだろうか。誕生月にバースデーメールや、「あなたの保有ポイントは○○ポイントです」というお知らせメールを受け取ったこともあるはずだ。
こうしたメールは、メールマーケティング分野で「フォローメール」と呼ばれている。
普段何気なく受け取っているフォローメールだが、実は他のメールマガジンと決定的な違いがある。
チーターデジタル マーケティングアウトソーシング部 マネージャー 金子亜美氏は「新商品の案内やキャンペーンメールと異なり、フォローメールの場合、登録や申し込みなど『ユーザーの行動やステータス』が起点となります。そのため、送信対象者が限定されると共に適切なタイミングでコミュニケーションを図ることができます」という。
送るターゲットが明確だと、伝えるべきメッセージもはっきりしてくる。たとえば資料請求をした人には、企業側は「次は申し込みをしてもらいたい」というメッセージを送りたいはずだ。
「通常のメルマガだと、配信対象者が全員であるため、自ずと普遍的なメッセージになってしまいます。これに対しフォローメールは、対象者がはっきりしており、『次に何をしてほしいか』が明確になっています。つまり、その思いをしっかり伝えられる内容に設計しなくてはなりません」(金子氏)
代表的な2種類のフォローメールとは
内容を確実に伝えるには、伝えるべき内容によって、どのようなフォローメールを使うべきか、事前に設計することが必要だ。チーターデジタルの場合、フォローメールに関しては「お知らせ系フォローメール」「販促系フォローメール」の2種類で設計することが多いという。
販促系のフォローメールは売上に直結するので、取り組んでいる企業も多い。ところが金子氏は「そういう企業にこそ、お知らせ系フォローメールのブラッシュアップに取り組んでいただきたいのです」とアドバイスする。
お知らせ系フォローメールはユーザーに好まれやすく、開封率も高い。単なるメルマガなら読まなくても、個別に届いたお知らせであれば開封するというユーザーも多い。そのため「お知らせ系フォローメールに手が回っていないのなら、早く始めたほうがいい」(金子氏)という。
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フォローメールの設計において、次に考えるべきは「どうしたら読んでもらえるメールを作れるか」ということだ。そのコツとして、金子氏は「『なぜこのメールを送っているのか』という表の目的と、『このメールを受け取って、こういうアクションを起こしてほしい』という裏の目的を明確にした上でメッセージを作りましょう」と説明する。
たとえば、登録完了のお礼やバースデーメールなどのお知らせ系フォローメールを送る際、お礼やお祝いという「表の目的」に沿ったまえがきに続けて、クーポンを付けて「ぜひ買い物をしてほしい」と行動を促すコンテンツを追加してみる。
こうして、表の目的にしたがったコンテンツのあとに、裏の目的としてアクションを促すコンテンツを埋め込むことで、ユーザーの行動喚起につなげるわけだ。
ただし販促系フォローメールの場合、お知らせ系に比べると表の目的がわかりにくい。たとえば「購入後、リピートはいかがですか」など、リピーター獲得を目的としたフォローメールは、あまりに直接的なメッセージだと逆に敬遠されるリスクがある。
そのため販促系フォローメールを制作するには、よりきめ細かなユーザー理解が必要になる。「ユーザーの状態を理解する」「その状態におけるニーズを理解する」「実際にメッセージを書いてみる」の3ステップで、ユーザーの立場に立ったコンテンツを届けるのがコツだ。
金子氏は以前、ダイエット関連製品のプロジェクトで「お試し版購入後、2週間経過したユーザーに購入を促す」というフォローメールを設計した際に、まず2週間経過したユーザーの状態を把握することから始めたという。すべてのユーザーが購入意思が高まるとは限らず、効果が感じられなかったり、未使用だったり、継続を悩んでいたりと、ユーザーの意識は様々なはずだ。
そこで、想定されるユーザーの状態を理解し、各人が抱えている悩みや迷いを洗い出した上で、それらの迷いや悩みを解決するためのコンテンツを配置したフォローメールを送ることで、ユーザーのニーズに働きかけたという。
「ストーリー設計のコツは、『お困りではないですか?』『お悩みは何ですか?』『より高い効果を実感するためにこう使うといいですよ』など、ユーザーと対話しているつもりで作ることです」と金子氏はいう。こうすることで、よりユーザー目線に沿ったフォローメールになるのだ。
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さて、メールマーケティングに取り組むにあたり、事前に考えておかなければならないことがある。その成果や投資対効果をどう判断するかという問題だ。
実際、マーケティング部がクロスセルを強化する施策を展開し売上単価が昨対比10%上がったとしても、別の事業部では「それは現場の店員が接客で努力したからだ」と捉えていることもある。またメールの目的範囲を「店舗への集客まで」として来客数を増加させたものの、経営層は実際に上がる店舗の売上額しか見ておらず、自身の活動が成果として認識されないケースも多い。
このように、マーケターが考える「成果」と、経営層から見る「成果」との間に大きな乖離があるケースは珍しくない。この乖離を放置しておくと、ある日突然「本当に投資に見合う効果があるのか?」と疑問を呈され、せっかく現場で手応えを感じていても、予算の削減や施策自体が打ち切りになる可能性がある。
この点に関し、チーターデジタル コンサルティング部 松田吉広氏は「各部署や立場で異なる成果やコストの考え方を、日ごろから整理しておく必要があります」と指摘する。
実際、投資対効果を測る上で定量的な把握がしやすいコストについても、「キャンペーンのインセンティブ費用をどこの事業部が担うのか」「施策に関わる社内人件費をどこまで計上するのか」など、企業ごとに試算する範囲に関するルールはまちまちだ。
成果に関してはさらに複雑で、たとえば集客している会員数やサイトへの誘導数、発生した売上額など、購買プロセスの中間指標と最終指標が混在する場合もあれば、認知度やブランド力など定量的な評価が難しいものもある。
松田氏は「中間指標と最終指標の関係性を可視化し、定量化できるデータで実態を押さえることがポイントになります」という。
たとえばある保険会社のメールマーケティング施策の場合、契約に至るまでの顧客行動をモデル化し、配信システムやWeb解析ツール、購買データベースから実際に取得できる中間指標と最終指標を設定。「資料請求数」をメールマーケティングの成果指標として定め、資料請求から契約に結びつく遷移率を係数としてかけ合わせることで売上に対する貢献度を数値化していったそうだ。
こういったルール作りは、業種・業態や製品・サービスの特性などにより状況が異なるため、ケースごとに考えていく必要があるという。
成果をいかに出しやすくするか
メールマーケティングも、ほかの様々な施策と同じく、導入期から成長期、そして成熟期、衰退期と、4つのフェーズを経て、次の新たな施策へと移行していく。松田氏は「投資対効果の最大化を目指すには、このプロセスに合わせて戦略を練る必要があります」という。
たとえば、初期投資が大きい導入期から、ノウハウが蓄積されて効果が上がっていく成長期にかけては、顧客との「関係構築」と「成果の刈り取り」のバランス、顧客視点からのフォローアップ・情報の取捨選択など、全体を俯瞰したシナリオ設計の作り込みやPDCAの推進が成果を大きく左右する。成熟期に入ると、むしろ業務効率化でコストカットを目指す方向に切り替えたほうが、リターン率が高くなる。
そして最も難しいのは、衰退期に入った時の対応だ。施策が衰退する理由は、年月が経つうちにユーザー構造が変化したり、技術革新によりコミュニケーション手段が多様化・陳腐化したりなど、いろいろな要因が考えられるが、いくら施策別の対策を打っても成果指標の数値が低い水準で定着してしまう場合は、視点を変えた別の取り組みが必要になる。
「こうなった場合、システムの刷新を含め、コミュニケーション設計・施策全体の見直しを図ったほうが効果的です」と松田氏はいう。メール経由の売上高・コミュニケーション満足度の低下をきっかけに、MA導入、シナリオの大規模なリニューアルを推進、結果停滞していた各種数値が大きく上昇したケースもあるという。
このように、自社のメールマーケティング施策がどういったプロジェクトのフェーズにあるのかを見定めた上で、戦略を練ることが、投資対効果を改善していくために重要だといえそうだ。