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待たれるオンオフ統合 データマーケティング時代の展望

20年経ってもデータ連係が不十分

――デジタルマーケティングという言葉も、最近は実質的にはデータマーケティングやデータドリブンマーケティングを指すようになっていると感じています。ユーザーデータを広告配信に活用するという発想も10年前にはなかったと思いますが、現在の発展をどうご覧になっていますか? たとえばヤフーに入られた約20年前に、予想できていたことでしょうか?

ある意味では、私がヤフーに入った1996年当時の延長にあり、ある意味では「まだここか」という落胆もあります。自戒の念を込めて、ですが。延長とは、当時の枠売りのときから「バナーはマス広告と何が違うかというと、効果が数字でわかるんです」というのがセールストークでした。今でも、それは変わらないデジタル広告の価値だと思っています。その意味で、検索連動やプログラマティック、CPCやCPA、最終的にKPIが満足できたか、と数字で判断する側面が強まっているのは正当な流れだと思います。落胆といったのは、当時は「数字でわかる」といっても最終的にはオンライン完結の事業に限られ、それ以外では購買ファネルの上部ではマスメディアとの連動、下部ではECサイトや実店舗のPOSデータとの連係ができていなかった。それが実現すれば本当の意味で広告効果が測定可能になると、早い段階からいわれてきましたが、20年経って未到です。

ある意味では、私がヤフーに入った1996年当時の延長にあり、ある意味では「まだここか」という落胆もあります。自戒の念を込めて、ですが。

 延長とは、当時の枠売りのときから「バナーはマス広告と何が違うかというと、効果が数字でわかるんです」というのがセールストークでした。今でも、それは変わらないデジタル広告の価値だと思っています。その意味で、検索連動やプログラマティック、CPCやCPA、最終的にKPIが満足できたか、と数字で判断する側面が強まっているのは正当な流れだと思います。

 落胆といったのは、当時は「数字でわかる」といっても最終的にはオンライン完結の事業に限られ、それ以外では購買ファネルの上部ではマスメディアとの連動、下部ではECサイトや実店舗のPOSデータとの連係ができていなかった。それが実現すれば本当の意味で広告効果が測定可能になると、早い段階からいわれてきましたが、20年経って未到です。

 ダイレクト系の広告主はオンラインで完結するので、ネット広告を活用していち早く発展しました。ですが、マス広告含め桁違いの広告予算を使っているブランド広告主は、違います。このファネルを一貫したデータ統合、そして広告効果測定ができれば、ネット広告市場はまた格段に発展するはずです(図表1)。

図表1:フルファネルでのデータ統合
図表1 フルファネルでのデータ統合

インターネットは万人が見るマスになった

――そのあたりの支援を、まさに有馬さんが率いる楽天データマーケティングで担っていく、と。

 まったくそのとおりです。グーグルが伸びたのも、ダイレクト系の広告主がごく少額で自分で広告を出せる仕組みを確立したからです。彼らがブランド広告主への営業に注力し始めたのは、ここ5〜6年の話です。

 その背景にあるのは、状況が整ったからというより、ユーザーの変化が大きいですね。以前は「ネット広告の出稿=ダイレクト系」でしたが、スマートフォンの浸透で多くの生活者が毎日ネットに触れるようになった。するとネットが購買の場ではなく本来の“広告”媒体として重要になり、ブランド広告主がそこで初めて、ネット広告を出稿する意味を認識したといえます。

 楽天市場でも今、流通総額の約64%がスマートフォンを中心とするモバイルからなんです。購買という意味でも、視認という意味でも、スマートフォンがネットと生活者の距離を一気に縮めました。これが、ブランド広告主にとってのネット広告の価値が大きく変わっている原動力だと思います。

約9,300万のIDデータの活用に集まる期待

――有馬さんは楽天データマーケティングの設立発表と同時に楽天自体にも参画されましたが、楽天がこのタイミングで広告ビジネスにさらに力を入れていく理由と経緯をうかがえますか?

 経緯は、楽天の創業時から三木谷とは面識があって、その後も随所で縁がありました。私はこの数年、複数の企業で役員などをしながら自分の会社で講演活動などをしていました。このままセミリタイアもあるかもしれないと思っていた折、三木谷に広告事業を大きくしたいからと声をかけてもらったので、ぜひと答えた次第です。

 力を入れていく理由というと、前述のユーザーの変化にも通じますが、ECサイトの見られ方が変わったことです。これまで、ECサイトはそこでの購買が主目的なので、せっかく来た顧客を広告で外部に飛ばしては本末転倒、ECサイトと他社の広告は相容れないという見方が一般的でした。

 それが、広告視認の場としてネットが重要になり、ECサイトもそれに準じ、ブランド広告主が「自社サイトに人を連れてこなくてもいい。見てもらうことに価値があるから」という態度になった。それならば、ECサイトとしてはぜひ出稿を、となるわけです。

 楽天データマーケティングの設立時、9,000万を超える楽天会員IDと、楽天の約70のサービスを使って、横串を通して様々な活用ができるとお話ししました。そこに、楽天のポイントパートナーのPOSデータも連係できます。マーケターとして必須の、「どんな人がどこで何を買っているか」の情報がどんどん溜まるので、大きな可能性を感じています。昨年10月に開催した広告主向けのカンファレンスでは、楽天スーパーセールのCMという自社事例ながら、テレビCMとネット広告の重複が購買に有意な差を生むことを発表して大きな反響があったので、企業からの期待を感じています。

 ただ、よく誤解されるのですが、楽天と電通は互いに独占ではありません。あくまで楽天のプロダクトを楽天データマーケティングが仲介して電通が提案する流れで、楽天のプロダクトは他の代理店にもオープンですし、電通も他のパートナーと提携しています。データマーケティングはまだ立ち上がり期の市場なので、強みを持つ同士で組んで良質なプロダクトを集中的に提供し、市場を拡大させる意図があります。市場が大きくなれば、お互いまた全方位でやると思いますよ。そのほうが市場が大きくなりますから。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/27759

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