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第106号(2024年10月号)
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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

膨大なユーザーインタビューから顧客心理を知り、V字回復へ。エアークローゼットの市場創造への挑戦

 「プロが選んでくれるお洋服の月額制レンタル」という発想で、ファッションレンタルのサブスク市場を切り開いてきたエアークローゼット。サービス開始から8年目となる2022年、東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。この要因のひとつには、ユーザーへの貢献を模索しながら組織としても確立していった、マーケティンググループの活躍がある。コロナ禍によってオフィスカジュアルの需要が激減した事態も乗り越えた同社の取り組みを、社長室長・マーケティンググループ長でマーケティングを統括する石川桂太氏に聞いた。

「このサービスが広がれば、世の中が変わる」

——2022年は、御社にとって上場という大きな節目を迎えた年になったと思います。はじめに、石川さんは創業初年度に参画されたとのことですが、2015年当時はまだまだ生活者の理解が低かったサブスク型のサービス、しかも洋服のレンタルという事業になぜ飛び込まれたのかをうかがえますか?

 おっしゃる通り、当時はとても新規性の高いサービスでした。サブスク型で、しかも第三者のプロのスタイリストが選んでくれる、この2つの掛け合わせが生活者に新しい行動を生み出していくと直感したことが、参画の理由です。

 私は新卒で野村総研インドに入社したのですが、ネット広告でエアークローゼットのティザーサイトを偶然知ったときも、インドにいたんですね。当時は“シェアリング”という言葉が出始めてはいたものの、お洋服はやはり店舗で見て買うことがスタンダードだったので、もしこのサービスが広がったら生活者も変わり、世の中も変わるだろうとワクワクしたんです。それで、天沼(創業者で社長の天沼聰氏)に連絡をとったのがきっかけでした。

株式会社エアークローゼット 社長室長 執行役員 CSO 兼 マーケティンググループ長

株式会社エアークローゼット 執行役員
社長室長・マーケティンググループ長 石川桂太(いしかわ・けいた)氏

慶應義塾大学在学中に会計士試験に合格した後、インドの大手会計事務所でインターンを経験。2013年に新卒で野村総研インド法人に就職し、海外進出戦略コンサルタント・M&Aアドバイザーとして活動。当時史上最年少でシニアコンサルタントに就任。airClosetの”新しいライフスタイルを創る”という理念に共感し、2015年6月に入社。CSO 社長室長として、全社の戦略策定を担うとともに、新規事業/アライアンス・事業推進・解析/データサイエンスを管轄。2018年4月からマーケティンググループを立上げ、月額制ファッションレンタルサービスairClosetの400%成長を実現。2022年7月東証グロース市場に上場。

——そうだったんですね。ある程度の事業の勝ち筋や、自分が事業を伸ばせそうだという見込みに基づいているのだろうと想定していたので、意外です。

 天沼と最初に話した際、事前登録は相当伸びていると聞いていたので、新しいコンセプトでも潜在的な需要があるのだな、とは思いました。安定的に実現するのは難しそうでしたが、だからこそ、実現できたら最高じゃないかと。人ができないことをやろうとしているからこそ価値があると思って、参画を決めました。エアークローゼットの企業理念である「新しいあたりまえを創る」に共感したことも、大きな理由です。

広告に依存しない計画的なグロースが課題に

——現在、月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』を筆頭に、複数の事業を展開されています。概要をおおまかに教えてください。

 『airCloset』のほか、スタイリストが提案する商品を自宅で試着して購入できる提案型ファッションEC『airCloset Fitting』や、オンラインでパーソナルスタイリングを受けられる遠隔パーソナルスタイリングサービス『airCloset Talk』、メーカー公認月額制レンタルモール『airCloset Mall』のサービスを展開しています。また、不動産のエイブルさんとコラボしたレンタルショップ店『airCloset×ABLE』も運営しており、こちらでもスタイリストの提案を受けることが可能です。

 主軸の事業である『airCloset』は、初回の「ファッションタイプ診断」でユーザーの好みを把握して、以降はスタイリストが選んだお洋服をお届けしていく仕組みです。いちばんライトなプランは税込7,800円で、月に3着届き、毎月交換ができますが気に入ったお洋服があったら着続けていただいてもいいですし、そのまま購入することもできます。どのプランでも、返却時のクリーニングなどは不要です。現在約300ブランド・35万点以上のお洋服をそろえ、有料会員は3万人、スタイルなどの閲覧やエコセールへの参加が可能な無料登録会員は80万人を超えました(2022年9月末時点)。

 ユーザーの属性は、20代後半~40代の方が72.3%で、お仕事をされている方が9割以上ですね。また、お子様がいる方が6割以上で、なかなか店舗でゆっくりお洋服を選ぶ時間がない方に多く利用されていると捉えています。

——それまでほとんどなかった「洋服をレンタルする」市場をどう切り開いていったのか、初期からの伸長の要因や、工夫したことなどを教えてください。

 これまでも、貸衣装やドレスの単発レンタルはありました。ですが、僕らのような日常のお洋服で月額制のサービスはなかったので、発表した時点でティザーサイトやプレスリリースが多くの人の目に留まり、PRと口コミで認知が広がっていきました。最初はむしろユーザーが集まりすぎて、お洋服の仕入れやスタイリストの確保などのオペレーション構築に苦労しましたね。

 2018年ごろから基盤ができてきたのですが、メディアに取り上げられるたびにウェイティングの方が出てしまう状況はまだあって。『airCloset』のモデルは、ユーザー数を予測し、先にお洋服を仕入れておいてサブスクで回す形なので、中長期的なグロースには計画的なユーザー増が必要だという壁に直面しました。そこで本格的に、マーケティンググループを立ち上げました。

 ——公表されている会員数の伸びを拝見すると、全体的に右肩上がりの中で、特に2019年に急激に伸びていました。これがちょうど、マーケティング発足の翌年なんですね。

 はい。計画的に新規顧客を獲得していこうと、デジタルマーケティングを中心に様々な施策を打ち、失敗もたくさん重ねながらPDCAを回した成果が現れてきた時期でした。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/04 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40609

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