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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

膨大なユーザーインタビューから顧客心理を知り、V字回復へ。エアークローゼットの市場創造への挑戦

常にビジョンに立ち返れるいくつもの仕組み

——販促のような狭義のマーケティングは、それこそたくさんの手法や学ぶ方法もありますが、ブランド創造や市場創造に向き合うマーケターには、どのような素養が必要だとお考えですか?

 僕らもまだ研鑽中ですが、当社においてひとつ言えるのは「お客様の感動が第一」であると皆で強く認識し、それに基づいた行動を徹底していることだと思います。

 当社では「9 Hearts」と呼んでいる9つの行動指針を掲げています。他に「スピード感を持ち、動く」「失敗を恐れるな」などがありますが、先の「感動」はその筆頭で、お客様がしてほしいことを提供して満足していただくのではなく、想像を超える喜びや楽しみをお届けして感動していただくことを目指そうとしています。それが一番いいサービスですし、それを重ねる先にブランド創造や市場創造があると考えています。

 市場を創造したり拡大したりするときには、やはり生活者のインサイトに強く響く何かをメッセージとして届けないと、伝わっていかないんですね。レンタルでサブスクでプロが選ぶ、を3つ同様に推していたら、やはりここまで広がらなかったと思います。

 お客様の漠然としたファッションへの不満や悩み、本当に実現したい状態を理解するために、今でも徹底的なユーザーインタビューを大事にしています。僕も、いまだに年間100本ほど自分でインタビューをしたり同席したりしているんです。

 一人の人の強いニーズでありながら、多くの人に似たような気持ちがある、大きな層を獲得できるインサイトをつかみたい。そのためにも丁寧に話を聞き、WHOとWHATを探すことに常に注力しています。

——この行動指針、またビジョンやミッションを徹底するために、どういったことをされているのですか?

 マーケティングのグループでは、チームとして同じ方向と目線で動けるようコミュニケーションの質と量を重視しています。具体的には、毎朝顔をつきあわせての朝礼、週次のグループmtg、メンバーとの1on1を週次と月次で実施するなど、個人の向かいたい方向性と、チームとしてのビジョン・ミッションが、紐付き続けることを意識しています。

 また、創業時からの経緯や代表の考え、想いを綴った本があり、その輪読会を定期的に実施しています。そのほかにも、チーム内で「伝説」を選出するイベントを開催し、各自のアイデアで実施した施策を“エアークローゼットらしいか”という観点で「伝説」として認定し、僕らの大事にしていることを再認識し、新しい人にも伝わりやすくしています。

データサイエンスでマッチングと需要予測を磨く

——盛りだくさんのお話、ありがとうございました。最後に今後の展望をうかがえますか?

 冒頭で紹介した企業理念である「新しいあたりまえを創る」を軸に、当社はファッション業界で「パーソナライズ×シェアリング」というあり方を打ち立てようとしています。これがつまり、新しい市場の創造であり拡大だと考えています。その上でマーケティンググループとしては、前述の「レンタル」「サブスク」「パーソナルスタイリング」という3つの要素の掛け算をいかに理解していただくかに取り組んでいきます。

 上場はしましたが、それでもまだサービスの認知度は、一桁パーセントなんです。なので、まだまだ認知を広げていく必要があります。

 また、働く女性が増え、可処分時間がどんどん短くなっています。一方でSNSの普及により、選択のバリエーションはさらに増え、皆さんが常に「私に本当に合うものは何だろう」と考えているような潮流もありますよね。選ぶのが大変になっています。

 そこで僕らは、もっとパーソナライズの要素でお客様に貢献できると思います。もっと自分に合った、わくわくするものに出会えるようにしていきたい。重ねてパーソナライズを追求すれば、アパレル業界で重要な商品廃棄の問題の軽減にもつながると思います。そのために、社長室直下のデータサイエンスのチームでは、個々人へのマッチングと仕入れの需要予測に取り組み始めています。

 これらを包括して、「新しいあたりまえ」をさらに広げていきたいです。今はレディースだけですが、将来的にはメンズ、キッズ、シニアなどにも広げ、また冠婚葬祭など特別なニーズにも応えながら、5年10年のスパンで市場を創造していくつもりです。

 マーケティングにおける戦い方や考え方も、絶対的な正解というものはなく、常に変化し続けています。これまで、最適解が何なのかを愚直に考え続け、自分たちの戦略も都度変化させてきました。仲間と共に変化を楽しみながら、これからも新しい挑戦をしていきたいと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/04 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40609

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