ブランドにとってのTwitterの価値
イベント冒頭には、Twitter Japanにて上級執行役員 広告事業担当本部長を務める味澤将宏氏が、ブランドにとってのTwitterの価値について最新のデータとケースを用いながら紹介した。
まずTwitterの特徴として、「Look at this」なSNSであると味澤氏は説明。他のSNSが「Look at me」、自身に関することを見てもらう目的で投稿されるのに対し、Twitterは、今起きていることを投稿したり、関心のある情報を探したりする利用者が多い傾向にある。
そして、このような特徴を持つTwitter利用者がブランドに寄与する理由として、以下の3つが挙げられた。
1. 情報・広告への受容度が高い
企業公式アカウントを積極的にフォローする、広告に対する受容度が高いというデータも出ている。
2. 話題にしてくれる
Research Now調べでは、ツイートを会話のネタとして使用する人が68%もいる。さらに他のSNSに比べ情報をシェア拡散しやすいというリサーチ結果も明らかになった。
3. 広告の成果につながる
プロモツイートにエンゲージした利用者のリフト値の平均を見ると購入意向が18%、ブランド好意度が12%向上しているという。
では、これらのTwitterの真価はいつ活かせるのか。味澤氏によれば「商品・サービス、キャンペーンのローンチ時」と「世の中のモーメントに合わせたキャンペーン」の時のパフォーマンスが非常に高いという。
味澤氏は最後に「Twitterはブランドとブランドにとって最も価値のあるオーディエンスをつなげるプラットフォーム。ぜひ彼らと一緒に新しいキャンペーンをスタートさせてほしい」と語り、講演を締めくくった。
女優・アーティスト・経営者が語る独自のTwitter活用
続いて実施されたパネルディスカッションには、女優のしゅはまはるみ氏、アーティストの和田永氏、キッズライン 代表取締役の経沢香保子氏が登壇し、自身のTwitterの使い方について語った。
はじめに話を始めたのは、和田氏。古い電化製品を楽器として生まれ変わらせ演奏する同氏は、自身の活動をTwitterに投稿している。
たとえば、「鉄工島フェス」という音楽とアートの祭典の中で、和田氏が家電による楽器を鉄工所で制作していたところ、一服しにきた職人のおじいさんが突然踊り出したという。この模様をツイートしたところ、大きな話題となった。
鉄工所での家電楽器の滞在制作中、音を鳴らしていたら一服しに来た隣の御年80歳・旋盤職人のお父さんが突然踊り出した瞬間は、忘れられない。#鉄工島フェス pic.twitter.com/Q4DCa1rYdi
— 和田永 │ Ei Wada (@crab_feet) 2019年2月14日
「僕の活動の場合、ライブだけ見てもらっても伝わらない部分が多い。楽器を作るプロセスから知ってもらおうと投稿しています。また、他のSNSなら加工する部分もTwitterでは加工なしで、逆に生々しさを魅力的に伝えられる。そのフランクさが特徴的だと思っています」(和田氏)
女優のしゅはま氏は、自身も出演し2018年の大ヒット映画となった『カメラを止めるな!』において、Twitterを使って話題化させた話を聞かせてくれた。
クランクインから2017年11月のイベント上映まで、出演者やスタッフ全員のTwitterアカウントで宣伝を実施。半数ほどは新規にアカウントを立ち上げた人だったという。
しかし地道な宣伝が功を奏し、公開後6ヵ月間で85万以上のツイートが発生。ポテンシャルインプレッション数は2億を超えた。さらに、「#Twitterトレンド大賞 2018」の19位にもランクインするほど話題となった。しゅはま氏はこの結果について以下のように振り返った。
「Twitter上のコミュニケーションが鑑賞者との交流の第一歩だったので、宣伝し始めてから興味を持ってもらったことがわかるツイートに対しては、いいね!や『ぜひ見に来てください』と返信やリツイートすることを全員で繰り返しました。ツイートした方々はそれをすごく喜んでくれて、さらにツイートしてくれたり、作品を見に行くきっかけになったりしたのだと実感しました」(しゅはま氏)
スマホで呼べるベビーシッター・家事代行サービスを提供するキッズライン 代表取締役の経沢氏は、自身がTwitterを昔から高頻度で利用していることを明かし、その中で実感したTwitterの拡散力について語った。
「Twitterの素晴らしいところは議論になっていくことです。Instagramは気軽に拡散はしないので、自分の世界を発信してもあまり炎上しない平和な場所。Facebookは同窓会のご無沙汰防止の近況報告。Twitterは議論や意見が広がりやすいイメージで、拡散力が1番あると思っています」(経沢氏)
課題解決のカギは「それ1個ちょーだい」問題
続いて、クライアント事例としてロッテとミクシィが自社のTwitterのマーケティング活用事例について紹介した。
まずは、Twitter上で議論を活性化させることで、話題量を増やし売上アップも実現したロッテの「雪見だいふく」の事例だ。2018年に秋冬限定の販売から通年販売に切り替えた同ブランドは、季節を問わない年間のブランディングに課題を抱えていた。
季節に関係なく食べたくなる仕掛け作りを考えていた同社は、SNSの話題量と売上に相関性があることに気が付いた。ブランド全体の話題量アップに取り組むことを決め、拡散力と生活者を巻き込む力に長けるTwitterでの施策実施を決断した。
また、施策を行うにあたり、Twitterで起きていたある議論にフォーカスを当てた。それが「それ1個ちょーだい」問題だ。様々な食品に対して使われるこの言葉だが、2個入りの雪見だいふくに対して使われた時、自分は「あげる」のか「あげない」のか。この話題をブランド自らが問いかけることで話題量を上げ、食べたいと思ってもらえるモチベーションを高めようと考えた同社は、2018年11月に投稿型キャンペーン「#それ1個ちょーだいあげる派あげない派総選挙」を実施した。
同キャンペーンは、公式アカウントをフォローして「#あげる派」か「#あげない派」かを選んで投票すると参加できる。特設サイトでリアルタイムの投票傾向やツイート内容を見られるようにすることで、議論の活性化を狙った。
そして、Twitterの活用に最適なタイミングであるローンチ時、その後の中押し期、結果発表期の3つの山場を設け、話題が途切れないよう、細やかに施策を展開していった。
インフルエンサー、企業アカウントも巻き込み大成功
他にも、この施策でユニークだった点がある。それは一般のTwitter利用者に加え、多数のインフルエンサーや他企業のTwitterアカウントを巻き込んだ点だ。インフルエンサーはYouTuberからVTuber、アイドルまで様々なジャンルのインフルエンサー29名を起用して、自らの主張を展開させた。
企業アカウントに関しても吉野家やハウス食品、花王、ぺんてるなど全17企業に企画に参加してもらった。1個ちょーだい問題を自分たちのブランドに置き換え投稿してもらうことで、キャンペーンの盛り上げを図った。
キャンペーンを多角的に展開した結果、ハッシュタグの話題量と雪見だいふくの言及量ともに目標に対し263%達成。「雪見だいふく」の売上自体も前年比で104%と伸長した。
本キャンペーンを担当した坂本実咲氏は、「施策を通して手に取ってもらうために消費者に気付きを与えること、そして食べたいと思わせることの大切さを実感しました。入り口となる話題化のさらなる強化も必要。ただ話題になるのではなく食べたい気持ちを購買行動へつなげる施策を行いたい」とキャンペーンを振り返り講演を終えた。
ミクシィが定義する「バズ」と「バイラル」の違い
ミクシィのマーケティング本部長を務める根本悠子氏は、スマートフォンゲームアプリ「モンスターストライク(以下、モンスト)」におけるTwitter活用および同社のバイラルマーケティング戦略について語った。
SNS上で施策を行う際、「バズ」と「バイラル」という言葉が良く出てくるが、根本氏はこの2つの言葉を「バズ=話題化(短期的)」、「バイラル=話題伝播の常態化(長期的)」と定義づけているとした。そして、ミクシィでは「話題になり、それがずっと伝播している状態」を作る取り組みを行っているという。
「短期的なバズを起こしながら、それを常態化していくことでブランド価値が上がっていくと考えています。自分たちのブランドがオーディエンスの会話のネタとなっている状態をどのように作っていくかを意識し、施策を企画・実行しています」(根本氏)
根本氏はさらに企画の肝となる要素として「バイラル装置」と「バイラルコミュニケーション」の2つを挙げた。バイラル装置は、プロダクトや商品の中にあるバイラルさせる仕組み。バイラルコミュニケーションは、その装置を伝えたくなるコミュニケーションを指す。この2つを掛け合わせて誰かに勧めたくなる、マネしたくなるストーリーや仕組みを作り上げている。
Twitterで話題伝播させるポイント
この中で、Twitterはどのような役割を担っているのだろうか。その答えとして根本氏は「バイラルマーケティングの主要な可視化装置である」とした。ツイート量が伸びるとモンストのアクティブな利用者も増加することがわかっており、バイラルコミュニケーションに欠かせないプラットフォームとなっている。
そして、ツイート量を伸ばすために行っている施策として代表的なのがミッションツイートだ。有名IPとのコラボが始まった時に、ゲーム内からTwitterで投稿する機能を使うと、特別なインセンティブを付与する。このように、バイラルさせる仕組みとコミュニケーションを両立している。
根本氏は「今後は、リアルソーシャルグラフを中心としたバイラルマーケティングを続けていきたい。その中でTwitterをはじめとした強い拡散力、オーディエンスを持ったメディアと協力しながらプロダクトの最大化を図っていきたい」と展望を語り、講演をまとめた。