月1回の効果測定では“遅い”と感じていた
2011年にネスレ日本に入社し、現在は媒体統括部で様々なメディアのプランニングと施策改善を担当しているネスレ日本 媒体統括部 メディアスペシャリストの小堺吉樹氏。
小堺氏の所属する媒体統括部では、「キットカット」や「ネスカフェ」など同社が持つ約20近くのブランドについて、メディアプランを考え、効果改善のための施策を練り、実行することをミッションとしている。5名のチームで各ブランドを分担し、テレビや新聞といった4マスメディアからデジタル広告のプランニングまで一手に責任を持つ。
ネスレ日本が「Datorama」を導入したのは2016年のこと。当時、急速に成長しつつあった同社の直販サイト「ネスレ通販」の重要性が増してきたことが背景にあった。
「長年運営してきた『ネスレ通販』ですが、ECサイトの需要が急増したことにともない、広告投資の金額も右肩上がりになってきました。しかし、当時は効果測定レポートをいただけるのは月1回の定例会の時だけ。それを見てから状況を分析し、意思決定をしていては、日々刻々と変化するサイトの状況に、PDCAのスピードが追いつかないと感じていました」(小堺氏)
それに加えて、媒体統括部では少ないメンバーが一人で複数のブランドを担当する。そのため、キャンペーンやメディアごとの異なるKPIを正確に把握したうえで、PDCAをスピーディーに行うことに課題を感じていた。
「ブランドやキャンペーンごとのKGIやKPIについては、その都度時間をかけて議論します。その内容を最終的にメディアブリーフというオリエンテーション資料にまとめ、CMOのチェックを通らなければ、実施に至りません。このメディアブリーフはメディアプランニングを組み立てる時のすべての指標となるものです。とはいえ、複数ブランドを担当する媒体統括部のメンバーにとって、メディアブリーフに沿いながらKPIに対する進捗を管理し、PDCAを回して日々効率を改善していくことは容易ではありません」(小堺氏)
Datoramaを導入、リアルタイムで予算アロケーションが可能に
そこで検討したのがDatoramaの導入だった。同社では「ネスレ通販」に加えて、楽天やAmazonなど大手ECプラットフォームにも出店しており、それぞれ別の広告施策を展開している。そのため、複数のメディア、広告、指標をひとつのダッシュボードで一元管理できることは、Datoramaの大きな魅力の一つだった。
導入後に画期的だったのは、レポート作成業務にかかる工数が劇的に減り、効果を振り返るために行っていた定例会も格段に短く済むようになったことだと、小堺氏はいう。
「これまでは、様々な広告施策、メディアに関するレポートをそれぞれ個別の資料としていただいていました。よっていただく資料も膨大になりますし、それを読みこなすにも時間がかかっていたのです。しかしDatoramaを導入したことによって、あらゆる広告チャネルのレポートデータをダッシュボード上でタイムリーに見ることができるようになり、その時各広告施策、各メディアがどのような状況になっているかひと目でわかるようになりました。
それまでは月1回の定例会議でパートナーの電通デジタルさんからいただくレポーティングを待ってから、広告効果を分析し、改善案を検討していたのですが、今ではDatoramaのダッシュボードを見ればすぐ現状を把握できるようになっています。ダッシュボードを見て気づいたことがあればすぐ確認や修正が可能なため、リアルタイムで予算のアロケーションを検討・実施できるようになりました。意思決定のスピードが格段に上がりましたね」(小堺氏)
パートナー企業ともダッシュボードを共有
ネスレ日本のパートナーとしてともにデジタル広告施策に取り組む電通デジタル 樺沢裕氏も小堺氏の意見に同意する。
「通常、広告効果を測定するためのレポーティング作業には、各メディアの管理画面からエクセルをダウンロードして集計し、エクセルやパワーポイントでまとめる必要があるため、細かい作業が発生し、多くの工数がかかります。
しかしネスレ日本様との取り組みでは、Datoramaの中に自動的にデータが格納されるようになったため、媒体レポートをまとめる手間と時間を大幅に縮小できました。おかげで今は、スピーディーに各施策の実施結果を確認することができています。また、私たちもネスレ日本様と同じダッシュボードでデータを確認できるため、リアルタイムでの共有が可能となり、より一層意思疎通がしやすくなりましたね」(樺沢氏)
その結果、定例会では細かいデータの確認に時間を取られることもなく、数値から読み取れる分析内容や、今後の媒体運営において重要なプラスアルファの提案に時間を割くことができるようになったと、樺沢氏は手応えを感じている。
双方にとってメリットを作る
広告主と広告施策担当者が良好なパートナーシップを保ちながら、より良い協力関係を築いてデジタル広告施策に取り組むにはどのような工夫が必要なのだろう。その問いに、電通デジタルの樺沢氏は次のように答えた。
「大切なのは、広告主と広告施策担当者が、双方にとってメリットを感じられる運用方法を考えることです。当初は自動化やAPI連携などが手探りだったため、ネスレ日本様の一部のブランドでテストケースとしてDatoramaを活用することからはじめました。まずはスムーズに運用できるようにするための、土台づくりに時間をかけましたね。
双方にとってメリットのある導入のあり方を考えるのはハードな挑戦でしたが、最終的にはネスレ日本様にとって『データが見やすく』、当社にとって『レポート作成工数が削減できる』ダッシュボードを作ることができたと考えています」(樺沢氏)
担当者の数値に対する責任感も向上
Datoramaを導入したことによって、広告効果を振り返る定例会の実施方法や、広告の運用体制も一新。大幅な効率化が実現したと小堺氏は話す。
「これまでは月次の効果測定会議で、エクセルやパワーポイントの資料を複数いただいていたため振り返りのミーティングにも時間がかかっていました。しかしDatoramaの導入後は週に1回ほんの30分の、Skypeによるオンライン定例会で済むようになりました。
デジタルマーケティング会社からレポートをいただくのを『待つ』という受け身の姿勢から、今では関わる全員が『主体的に』Datoramaのダッシュボードにアクセスして、積極的にデータを見るという姿勢に変わりました。数値に対する責任感が増し、自分ごと化が進んだように感じます。Datoramaの導入後は、担当者が事前にDatoramaのデータをチェックしてくるので、会議の場で起こる議論の質も高くなりましたね」(小堺氏)
それ以外にも、各ブランドのマネジメント層へ広告の効果を報告するために、マーケティング担当者から依頼されるレポート作成業務に時間を取られることが多かったのだそう。
しかし、今では各部署の担当者にDatoramaのアカウントを発行し、自分でダッシュボードを見てもらえるようになった。その結果、媒体統括部の作業コストを大幅に削減することができ、本来の業務に集中できるようになったという。各部署の担当者も自分の目でデータを見られるようになったため、情報の透明性が担保できるようになったのではないかと、小堺氏は感じているという。
AmazonのROASは約2倍に
Datoramaの導入によって、ECサイトの中でもAmazonの効果が劇的に改善されたことに、小堺氏は驚きを感じている。
「中でも顕著に改善したのは、Amazonの運用効率です。それまで月次で作成・検証していたAmazonのレポートを週次に変え、そのレポートはすべてDatorama上で行うことを徹底しました。すると、広告メニューやターゲティングを都度細かく調整しながら、タイムセールやプライムデーといったセールのタイミングを逃さずPDCAを回せるようになったため、ROASが約2倍になりました」(小堺氏)
他にも、Datoramaを導入した意外な副産物もあったそうだ。
「弊社では、『マーケティングミックスモデリング(MMM)』というリサーチを行っています。これまではこのリサーチに必要なデータをデジタルマーケティング会社にお願いして集めてくるだけでもひと苦労だったのですが、今では『Datoramaのデータを見てください』と伝えるだけでデータ収集を終えることができるようになりました」(小堺氏)
広告施策に関するデータを分析したい時は、データがDatoramaにすべて集約されていると思うととても心強いと小堺氏は力を込めた。
これからのDatorama活用について小堺氏は、ダッシュボードでトラッキングする指標について改善を進め、アドベリフィケーション指標と広告パフォーマンスの相関性の可視化等、PDCAの質をさらに向上させたいと考えているという。
「ビューアブルインプレッションやリアルタイムのブランドリフトをチェックし、ブランドの認知や興味喚起、購買意欲に最も貢献しているメディアは何なのかを可視化していきたいですね」(小堺氏)