ユーザー投稿からブランドのバリューが伝わり、共感を集める
――はじめに自己紹介をお願いいたします。
井上:Oisixのブランドマーケティングを担当しており、コラボレーション案件、SNS施策を中心に、テレビCMや交通広告などマーケティング領域を担当しています。
本宮:私はEC事業本部でFacebookをはじめとしたデジタル媒体のプランニングやキャンペーン設計、クリエイティブ制作のディレクションとWebプロモーション全般を担当しています。
大前:ECのクライアント様を専門にFacebookやInstagramの広告運用のコンサルティングを行ってきました。Oisixさんと一緒にお仕事をさせていただいています。
――早速ですが、OisixさんのInstagramについてうかがいます。まず活用の目的と運用体制について教えていただけますか?
井上:Oisixでは、Instagram公式アカウント(@oisix)をマーケティング室が担当し、本宮のプロモーション室が広告を運用しています。
Instagramはお客様と双方向にコミュニケーションし、Oisixの提供価値やバリューを伝える手段のひとつとして活用してきました。
――Oisix会員の方による、#Oisixのある食卓のInstagram投稿が活発ですよね。
井上:そうなんです。お客様による投稿の一部は公式アカウントのストーリーズでご紹介していますが、Instagramはビジュアルとテキストの両方で表現できるため、ライフスタイルや価値観も含めて伝えることができるのが、素敵なところだと思います。「Kit Oisixを使って20分で作れた!」「仕事で遅くなったけれど、すぐに食卓を囲めた」など、生活が想像できる文章を添えてくださる方も多いのです。
このことは「おいしい」「便利」という機能面だけでなく、「自分の暮らしに合っている」という情緒的な共感を集めることにつながっています。UGC(User Generated Content)は公式アカウントの発信以上に、Oisixのバリューが伝わるコンテンツかもしれません。
本宮:Instagram上のファンの声は、広告による新しい出会い作りも後押しします。UGCを通してOisixのバリューに共感してくださった方々へ広告を配信すると、コンバージョンにも良い影響が出ます。InstagramやFacebookは人ベースで広告配信ができ、ターゲティング精度が高く、広告の反応がわかりやすいと感じます。
ポイントは一貫したメッセージの発信
――続いて、Facebook Japanの大前さんにも伺います。OisixさんのInstagramマーケティングには、どのような特徴があるのでしょうか。
大前:原則としてFacebookでは、既存のお客様とコミュニケーションし、よりエンゲージメントを深めるオーガニックフィードと、新しいお客様と出会う広告の両方をご利用いただくことをおすすめしています。ですから、OisixさんのInstagramマーケティングは、とても理想的です。
井上:Oisixの公式アカウントのフォロワーも、約半数がOisixのお客様です。そのため、オーガニック(公式アカウント)での投稿はお客様向けの情報も多いですね。
大前:オーガニックとペイド広告それぞれで、一貫したメッセージを発信されている点も素晴らしいです。
実は、担当者や組織が異なるゆえに、2つのメッセージがバラバラになってしまうブランドは少なくありません。オーガニックと広告の両輪をうまく走らせるためには、メッセージの整合性が大事なポイントなのです。広告を見てサービスに関心をもった人たちが、公式アカウントを訪問した時に求めている情報にアクセスできれば、もっと知りたくなり、プロフィールを深く読んだり、フォローしたりという次のアクションにつながっていきます。
――なるほど。Oisixさんは、どのようにしてメッセージの整合性をとっているのでしょうか。
井上:すべてのマーケティングコミュニケーションで、ブランドパーパスに沿った発信をするよう徹底しています。Oisixのミッションは「これからの食卓、これからの畑」のビジョンのもと、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決すること。フードロスや共働き世帯の仕事と育児、家事の両立といった幅広い社会課題を、Oisixで解決できないかと考え、メッセージを設計しています。
――根底にあるブランドパーパスが、ぶれない発信を支えているのですね。では、広告を用いた新しいお客様とのコミュニケーションにおいて、意識していることはありますか。
本宮:日頃から、クリエイティブは本当に大切な要素だと実感しています。
具体的には、その時々で変わる社会や人々の生活を想像し、寄り添うようなメッセージを発することができるかが勝負です。「お客様はいまこんな気持ちなのではないか」というインサイトが見えてきたら、すぐにクリエイティブに反映させるようにしていますね。実際に、通常のクリエイティブと比べてCTRが160%、CVRが120%向上したケースもありました。
そのクリエイティブは伝わりやすさを最優先にしたシンプルなものだったのですが、大きな反響や拡散につながっていました。ビジュアルを用いてメッセージを強く訴求できるInstagramの効果を感じた出来事でしたね。
コロナ禍における食の課題をコミュニケーションで解決へ
――オーガニックも広告も、食に関する社会課題の解決を基点としているからこそ、一貫したメッセージを届けられているのですね。
井上:はい。さらにコロナ禍では、休校や在宅勤務で家族がご自宅にいらっしゃるので、食事を作る機会が増えるなど、食に関する新たな社会課題が顕在化しました。コミュニケーションの面でなにかできないかと考え、Instagramで様々な施策を展開したんです。
たとえばステイホーム期間を少しでも前向きに過ごしていただくために、Instagramのアカウントでは、レシピ紹介に加え、家族の会話を想定した「ソーシャルディスタンスをトマトで表すと何個分?」といった投稿を続けてきました。
――ここでも、テキストとビジュアルで表現できるInstagramの強みが生かされていますね。
井上:はい。また、Oisixの宅配段ボールを利用したサッカーやバスケットゲームの遊び方などもご紹介しました。Instagramのフィード投稿のフォーマットは、複数枚のビジュアルで構成できるため、段ボール加工のプロセスや遊び方を丁寧に説明できています。
本宮:ほかにもOisixではコロナ禍で飲食店や給食への供給が停止し、在庫を抱えてしまった生産者様を支援する「食べて応援」「購入応援」施策を行ってきたのですが、その周知にInstagram広告配信を活用しました。
特に3月の初めに行った、学校の給食用に卸す予定だった牛乳を販売した際は、会員以外のお客様からも多くの反響をいただきました。それを受けて、余ってしまった牛乳をたくさん販売して支援するため、Oisix「おためしセット」の食材として扱うことにして、その広告を他のWeb媒体に先行してInstagramに配信しました。
コロナ禍において企業が続けるべき「2つの発信」
――Instagramはコロナ禍を受けて、動画機能の充実や中小企業への支援など、人と人のつながりを支える取り組みを展開していました。企業がInstagramを活用するにあたって、アドバイスしていることはありますか。
大前:Instagramは、「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」をミッションとしてサービスを提供しています。家族や友人など、すでにつながりのある人だけではなく、興味関心や好きなことを起点に、情報収集ができる場です。好きなものに触れてポジティブな気持ちになりたいと考える生活者にとっては日常に欠かせないプラットフォームとなっていることから、コロナ禍においても利用が世界的に伸びています。
その上で、私たちは企業の皆さまへ2つのご提案を続けています。それは、お客様へブランドのメッセージを発信し続けること、そして、双方向のコミュニケーションを行うことです。
――まさに、Oisixさんが行っていることですね。
大前:おっしゃる通りです。Oisixさんはお手本になるケースだと感じます。
先ほど井上さんもお話されていましたが、料理やレシピ紹介だけでなく、お子さんが楽しめる塗り絵やアクティビティを提案したり、保育園の給食レシピを配信したりといった、食の社会課題を解決するというブランドのパーパスに沿った情報を、お客様のニーズに寄りそった形で発信し続けていらっしゃいました。また、アンケートスタンプを活用してお客様の声を集めたり、お客様の投稿をシェアするなどコミュニティ内のコミュニケーションも活発に取り組まれています。
――Oisix会員のお客様、そして新しいお客様からはどのような反響があったのでしょうか。
井上:まず、4月の緊急事態宣言下においては外出を控える方が増え、ネットスーパーや食品宅配サービスへのニーズが自然と高まりました。そのような社会的背景がある中、サービスのひとつとしてOisixを選んでいただいた方が比較的増えました。
Instagramでの発信をはじめ、これまでのマーケティング・PR活動により、ブランドが想起される状態ができていたことが根底にあったからこそ、お客様に選んでいただけたのだと考えています。
Instagramのフィードは、顧客理解を深める絶好のチャネル
――では、Oisixさんのマーケティングにおける今後の展望と、Instagramの活用についてお話ください。
井上:ひとつ、長期的な変化として予想しているのは、デモグラフィックによるターゲティングがあまり意味をもたなくなるのではないかということです。すでにその傾向は表れていると思っていて、たとえばステイホーム期間中も、年代や性別に応じて同じインサイトをもっていたわけではなく、職業や家族構成、お子さんの年齢層などによって、抱えている問題が異なっていました。
このような環境下では、よりお客様の価値観や考え、暮らし方を理解しなくてはなりません。このとき、Instagramの利用者の投稿内容はとても参考になるんです。
たとえば、Oisixのタグをつけて投稿してくださっている方のフィードを見ていくと、食器やインテリア、家族構成からその方々が大切にしている価値観が見えてきます。「だからOisixをご利用いただいているんだ」ということも掴めてきて、ブランドを理解し直すことにもつながるのです。
マーケターの観点から顧客調査をするのに、InstagramをはじめとしたSNSは重要なチャネルです。お客様を理解し、食の社会課題をひとつでも多く解決することで、楽しくて豊かな自分なりの生き方ができる社会へつなげていきたいと考えています。
――広告を用いたコミュニケーションについてはいかがでしょうか。
本宮:広告も同様です。デモグラフィックが同じでも、価値観や生活によって、使うサービスや伝わるメッセージも異なります。
広告チームも、Oisixを使ってくださるお客様の生活を知りたいときに、Instagramを使っています。そして、そこから見えてきた暮らしを送る方たちへ届く、最適なメッセージや言葉遣いを試しているんです。キャッチコピーやクリエイティブのA/Bテストを重ねるほか、ご入会いただいたお客様にもインタビューを行い、新しいお客様との出会い方を追求しています。
Withコロナ時代、お客様の暮らし方は刻々と変わっていますので、私たちブランドはそうした変化を感度高くキャッチアップする必要があります。InstagramをはじめとしたSNS活用もこれまで以上に意識的に取り組み、お客様を深く理解していきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
Instagramでは、企業が新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、コミュニティや顧客とのつながりを維持できるよう、様々なリソースを提供しています。最新情報はこちらからご覧いただけます。