↓竹井氏を迎えたWebセミナー「マーケティング戦略の大転換」第4回のダイジェストはこちら↓
コロナ禍によって変化したカスタマージャーニー
次世代マーケターのためのコミュニティ「0 to Loyal~ゼロ トゥ ロイヤル」のWebセミナー、第4回のゲストとして、20年以上に渡りJリーグの世界で業務に従事し、現在はガンバ大阪においてデジタルの力を駆使して歴代最多平均観客数を達成した竹井学氏が紹介された。
ガンバ大阪は、1993年のJリーグ発足のときからリーグに参入しているオリジナル10クラブのうちの1つ。大阪をホームタウンに、これまで9つのタイトルを獲得し、2016年にはホームスタジアム「Panasonic Stadium」もオープン。恵まれた環境で試合を行ってきた。
ところが同クラブは、今マーケティングの転換期を迎えている最中にある。それまでのスタジアムビジネス中心のやり方に、新たな発想を加えようとしているのだ。きっかけはCOVID-19の影響で試合が開催できない期間が続いたこと。それを新たな成長曲線を描くチャンスと捉え、様々な取り組みを展開している。
ではそんな状況下でどのようなことに気づき、チャンスと認識しているのか。3つの観点が、セミナーのホストを務めるチーターデジタル ジャパンの副社長 兼 最高マーケティング責任者の加藤希尊氏から紹介された。
・カスタマージャーニーの解釈を拡大する
・ファン理解を深化する
・マーケティング資源を再解釈する
ガンバ大阪ではこれまで、カスタマージャーニーを「スタジアム来場に向けた“一本道”」と想定しており、それにともない商圏もスタジアム周辺に限定されたものだった。しかし、それが実現できない状況となり、それでもファンやサポーターに楽しんでもらえる何かができないかと考えたときに、デジタルを活用したコンテンツの配信やオンラインでの選手とファンの交流会などを開始した。
「これまでファンになってもらうための入り口をかなり狭く考えていましたが、デジタル活用によって間口を広げられると気づき、今は大きな可能性を感じています」(竹井氏)
これに対して加藤氏も「物理的・時間的な制約にとらわれないカスタマージャーニーの解釈がされている」と説明を加えた。
“ファン理解の深化”こそカスタマージャーニー拡大の始まり
カスタマージャーニーを拡大し、オフライン・オンラインの両方で顧客エンゲージメントをするためには、ファンの理解が欠かせない。これについて竹井氏は、今までのアプローチを紹介しつつ、「思い込みが邪魔をしてしまう場合もあった」と語り、データを見ながらファンの理解を深める重要性を強調した。
「ガンバ大阪を好きでいてくれる理由は本当に様々です。好きな選手の応援に行きたい方もいれば、サッカー観戦そのものが好きな方、スタジアムの臨場感を楽しみたい方、私たちが提供するコンテンツをおもしろいと感じて好きになってくれた方もいます。
そのため来場回数だけでグルーピングしたり、思い込みでファン像を描くのではなく、お客様とコミュニケーションをとりながら、一人ひとりの想いを理解していく必要があると考えています」(竹井氏)
竹井氏は、デジタルのサービスを拡充する際にも、ガンバ大阪を好きになったきっかけや理由をデータの中から把握しながら提供していきたいと考えを明かした。
ガンバ大阪の直近の取り組みについて、動画本編で詳説しています。視聴はこちらから!
ファン理解のためにどんなデータを収集すべきか?
竹井氏の言葉に対して加藤氏は、顧客自らが教えてくれる嗜好データ、つまりゼロパーティデータの理解がサッカーのビジネスにおいても重要になってくるのではとコメントした。
「顧客の深い理解が、オンラインとオフラインのカスタマージャーニーを拡大することができる源泉になります」(加藤氏)
さらにイングランドのプロサッカークラブ、アーセナルの事例を紹介し、ファン自らが情報を提供してくれる状況をどのように整えていくかアイデアを提供した。
マーケティング資源を再解釈する
3つ目のテーマとして語られた、「マーケティング資源の再解釈」。サッカークラブにおいてスタジアムへの来場が目標かつ、試合こそが最も重要な資源であったが、その資源自体の解釈を広げることで、デジタルマーケティングの可能性を伸ばしていこうとする動きが出ている。
その一例として、加藤氏から、イングランドのプロサッカークラブであるウエストハム・ユナイテッドの事例が紹介された。彼らは、クラブで活躍を見せた歴代の選手をマーケティング資源として再解釈し、ファン・エンゲージメントの取り組みを、立ち上げている。具体的には、その時代別の選手を各ポジションに当てはめて、その時代ごとのベストチームを選出する仕組みをファンに提供したのだ。
「このように、資源を解釈しなおすと、往年のファンも対象にでき、アプローチの可能性が広がると思います」(加藤氏)
対して竹井氏は、これまで持っていながらも活用できていなかった資源を使いながら、ガンバ大阪を好きになってもらえるようなサービスを展開していきたいと話す。
「たとえば、Jリーグ初年度から活動してきた歴史や、個性的なキャラクターを持った監督や選手、そして選手のプレイだけでなく、提供しているファンサービスの裏側にあるストーリーや私たちの想いなどのバックヤードストーリーといった資源を活かし、YouTubeのコンテンツとして配信したりして、好きになってもらうきっかけをつくっていけないかと考えています」(竹井氏)
実際に、今年から『CAZI散歩』という番組をYouTubeチャンネルで開始。ガンバ大阪のOBで元日本代表の加地亮氏をMCに、OBの選手をはじめとしたさまざまなゲストを招き、当時の思い出話や現在どんな活動をしているか語ってもらったり、ファンクラブの成り立ちや商品開発の裏側など、よりガンバ大阪のことを知ってもらうためのコンテンツを用意している。
ゼロパーティデータをカスタマージャーニーの拡大にどう活用する? 動画本編で事例とともに解説しています。
新たな成長曲線を描く戦略の大転換
スタジアムビジネスが中心だったこれまでの戦略を転換し、新たな成長曲線を描くため、今後ガンバ大阪ではどんな取り組みをしていくのか。竹井氏は次のように語った。
「これからもスタジアム集客が重要であることは変わりませんが、スタジアムに来場いただいたかどうかで始まるカスタマージャーニーの考え方は変えていくと思います。
スタジアムへの来場は接点の1つにはなりますが、それだけでなくデジタルで配信するコンテンツ、交流会など、一人ひとりのニーズに沿ってサービスを展開することで、新たな収益モデルをつくっていきたいです」(竹井氏)
加藤氏はすべての業界・ビジネスに通じる考え方として、「戦略とは、シンプルに表現すると“目的”に対する“資源配分”」と述べ、本セミナーで話された内容を図解でまとめて解説した。
「こうした環境下で目的を再解釈して、資源配分を再解釈すると、新しいマーケティング戦略が生み出されるストーリーへとつながっていきます。この新しいマーケティング目的と、拡大解釈を加えた資源によって、ガンバ大阪のマーケティング戦略がさらに強いものになっていくと確信しています」(加藤氏)
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