出版社媒体ならではの先読み配信が人気のマンガアプリ
――はじめに、「マンガほっと」のサービス概要と特徴について教えていただけますか?
花田:マンガほっとは、出版社であるコアミックスが自社媒体として運営していることが強みで、人気作品の最新話をいち早く読めるマンガアプリです。最近の作品では『終末のワルキューレ』が人気を集めていますが、最新話は先読み配信として、アプリと紙媒体とでほぼ同時に掲載しています。
花田:一般的にマンガの読者には、単行本が発売されてから作品を読む層と、毎号最新話を追う層が存在していて、現在のマンガほっとは後者の層により強く支持されていると思います。
弊社の社長が「週刊少年ジャンプ」の元編集長だった影響もあって、我々が考えるマンガほっとの役割は、かつてのマンガ雑誌です。紙媒体全盛の時代は、学校などの小さなコミュニティで「新しいマンガが始まったけど、もう読んだ?」といった会話が毎週交わされ、彼らの反応が数ヵ月後のコミックスの売り上げやアニメ化につながっていました。マンガ雑誌が担っていたマーケティングツールとしての役割を、アプリが引き継いでいます。
従来のマネタイズを支えるIDFAターゲティング広告への懸念
――iOS14におけるプライバシーの強化にともない、従来の広告マネタイズへの影響を懸念されているかと思います。マンガアプリを運営する上で、現状どのような課題があるとお考えでしょうか。
横山:おっしゃる通り 、iOS14におけるプライバシー強化にともないIDFAの使用が制限されることで、広告収益が大きく下がることが直近の大きなの懸念です。ATTダイアログの設置によって、ユーザーが広告トラッキングを事前に拒否できるようになれば、従来のターゲティング広告によるマネタイズは非常に難しくなります。
横山:プライバシーの強化は、おそらくAppleだけの動きには留まらないでしょう。広告マネタイズへの影響は避けられないだろうと考えています。
そのような背景もあり、マンガほっとでは戦略上、動画リワード広告よりもオファーウォール広告を重視しています。
――ターゲティング広告によるマネタイズを課題と考え、オファーウォールに注力されているのですね。御社で現在活用されているのはSkyfallが展開する「SKYFLAG」のオファーウォールですが、選んだ決め手は何だったのでしょうか。
横山:実は、SKYFLAG導入前にも別の広告事業者のオファーウォールを利用していました。SKYFLAGは、マンガほっとのオファーウォールとしては3代目にあたります。
オファーウォールを刷新した主な理由は、読者の低年齢層化です。元々マンガほっとは『北斗の拳』や『シティーハンター』などの名作を目的に集まった読者が多く、30~40代がメインのユーザーでした。
それが『終末のワルキューレ』をはじめとした新作のヒットにともない、読者の低年齢層化が進んだ結果、最近では18歳~24歳がボリュームゾーンとなりつつあります。
そこでSKYFLAGによってマンガアプリとの親和性が高いであろうゲーム案件を充足させ、若いユーザーへの訴求力を高める狙いがありました。また、SKYFLAGの案件は前広告事業者と比較しても圧倒的に単価が高く、収益性が改善されるのは明白でした。
成果地点の深さが特徴のロングCPEリワード広告
――Skyfallの長谷川さんから、SKYFLAGの概要についてご紹介いただけますか。
長谷川:SKYFLAGは「ロングCPEリワード広告」が特徴の広告プロダクトです。
ロングCPEリワード広告は、アプリの魅力を感じてもらえる深い成果地点までユーザーにプレイしていただく言わば体験型広告です。深い成果地点までプレイしたユーザーは、その後も継続的にアプリを利用する傾向にあります。
従来のCPC課金やCPI課金モデルの広告プロダクトでは浅い地点でコストが発生しますが、海外勢のスマホアプリの日本進出が増えたことにより広告の入札競争が激化し、広告の費用対効果が年々低下してきている状況です。その中で現在のマーケティングのトレンドはLTVの高いユーザーを集客し、いかに長くプレイしてもらえるかが重要になってきていると考えています。
弊社は日本の市場でロングCPEリワード広告の啓蒙を先駆けておこなってきました。そこで生まれた先駆者としての豊富な運用実績と案件在庫数がSKYFLAG最大の強みとなっております。
――ロングCPEリワード広告の運用ノウハウに加え、ゲームアプリ案件の豊富さもSKYFLAGの強みでしょうか。
保立:そうですね。ゲームアプリ案件の取扱数とシェア率は業界でも圧倒的です。
もちろん、SKYFLAGはゲームアプリ案件だけに特化している訳ではありません。マンガアプリ・LIVE配信アプリ・決済系アプリなど幅広いアプリ案件を在庫として保有しております。また、VODを始めとしたWebサービス、直近ですとブラウザゲームまで取り扱っております。案件総在庫数ですと、常時600~700程度のキャンペーンを保有しているため案件の流動性が高く、ユーザーを飽きさせないラインナップを提供可能です。
長谷川:案件数やシェア率以外では、365日年中無休のCS対応も弊社の強みです。
当然ですが、どのメディア様も土日祝日にDAUが上がりやすく、それに伴い問い合わせの数も増加します。「成果を達成したのに報酬が反映されない」といったトラブルはクレームにつながりやすいため、迅速な対応が求められます。弊社では、盤石なCSチームの体制を構築できているため、スピーディーなCS対応が実現できております。
読みたい話数に応じて広告を選択できる環境づくり
――マンガほっとではどのようにSKYFLAGを活用されているのでしょうか? 具体的な事例についてお教えください。
横山:マンガほっとは、基本的にチケットを消費してマンガを読むシステムです。チケットを入手する方法はいくつかありますが、ユーザー側の選択肢を増やすために、オファーウォールを活用しています。
たとえば、長編作品を一気に読みたいユーザーは多くのチケットを必要とするため、動画リワード広告の視聴だけではチケットの枚数が足りません。一気に読みたいときの課金以外の選択肢として、オファーウォールを用意しています。
連載中の新作を目的としたユーザーの場合も、読みたい話数によって広告を使い分けることが可能です。たとえば1話だけ追加で読みたい場合は動画リワード広告、3~4話以上読みたい場合は課金かオファーウォールというように、ユーザー側がチケット獲得の方法を選択できるメリットがあります。
――ユーザー視点としては無課金の範囲で自分にあった楽しみ方をできる良い仕組みですね。SKYFLAGを実際に導入してみて、気づいた点などはありますか。
横山:オファーウォールのデザインを詳細に設定できたのは良かったですね。
アプリとオファーウォールで雰囲気が違うと外部サイト感が強くなり、ユーザーが抵抗を感じてしまいます。SKYFLAGのオファーウォールは、指示事項の細かさによってマンガほっとのカラーを忠実に表現できたため、コンテンツの一部として馴染んでいると思います。
SKYFLAG導入から2週間で広告収益率は4倍に
――SKYFLAGの導入によって、広告収益やユーザーの行動にどのような変化がみられましたか。
横山:導入して2週間程度で、デイリー平均での収益が目に見えて増加しました。前広告事業者のオファーウォールと比較して、広告収益は約4倍です。導入から3ヵ月以上経ちますが、現状売り上げが落ちることはなく増益が続いています。
花田:もちろん収益だけでなく、ユーザーの行動も変わってきている印象です。以前のオファーウォールでも、クレジットカードの新規契約などの案件によって瞬間的に広告収益が増加することはありましたが、それはあくまで一過性の現象でした。
一方SKYFLAG導入後は、デイリー平均広告収益が右肩上がりになっています。これはユーザーと広告のマッチングがうまくいっている証拠だと思います。
横山:マンガアプリの性質上、運営側が把握している、元々収益の上がりやすい曜日やタイミングがありますが、DAUが低いと予想した日にも一定の収益が出ているのはうれしい誤算でしたね。
――他広告事業者とコンバージョンのタイミングが異なる点について、どのような理由が考えられますか。
保立:ゲームアプリ案件では成果地点では数週間かかるものもあり、そのような案件での収益が後から上がってきているのが要因です。またゲームアプリ案件は、他ジャンルの案件よりも単価が高く収益に大きく貢献します。
長谷川:加えて、SKYFLAGの独自機能である「ステップアップリワード広告」も要因と考えております。「ステップアップリワード広告」とは、1つの案件に複数の成果地点を設定し段階的に収益が発生するものです。ユーザーが深い成果地点まで到達する程高い収益が発生する仕組みになっており、弊社の独自のノウハウをもとに成果地点・インセンティブ設計を行っています。
読者と作品をつなぐオファーウォール活用へ
――マンガほっとにおいてオファーウォールを運営していく上で、今後ユーザーにどのような価値を提供していきたいとお考えでしょうか。
花田:今は、雑誌やコミックスなどの紙媒体が売れない時代です。出版社として、新しく生み出された無名の作品が誰にも読まれずに埋もれてしまう状況を憂いていますが、一方で、おもしろいかどうかわからない作品に対してお金を払ってもらうハードルの高さも理解しています。
課金の一歩手前、まずは作品を知ってもらう方法として、オファーウォールは非常に有効です。SKYFLAGの取り扱う案件は広告単価が非常に高い分、チケット報酬も多く設定できるため、目当ての作品を読んで余ったチケットは他の作品へ触れるために消費してもらい、おもしろかったら課金してもらう。広告を通じて作品と読者をつなぐ仕組みとして、今後もオファーウォールを活用したいと考えています。
――Skyfallとしては、オファーウォールを含めた広告マネタイズにおいてどのような予測を描いているのでしょうか? 今後の展望について教えてください。
長谷川:冒頭で横山様がおっしゃっていたように、Appleのプライバシー強化などの要因によって、広告マネタイズ領域において大きな変化が起こると考えております。
より多くのメディア様、アプリ事業者様にSKYFLAGをご活用いただけるよう、市場環境の変化に対応したプロダクトアップデートを重ねていき、新たな広告マネタイズの柱として中長期的にサポートしていけるよう尽力してまいります。