BtoBマーケティング発足時の条件と課題、そして目標設定
ブラザー販売は日本国内のブラザー製品のマーケティング・販売事業を担っている。情報発信機器事業において「BtoBマーケティング強化」を目標に据えたのは2019年のこと。法人向け製品の利用顧客は多岐業種に渡るので、過去の売上実績や製品の性質から、医療、小売・店舗、製造、物流の業種攻略に注力してマーケティング活動を行う方針を固めた。
ブラザー販売は代理店経由販売だ。ユーザーの声が届かず、リード管理が成果に結びついていない。デジタル施策では小口の案件しか入ってこない。営業が最後まで案件フォローできていないし、案件化されたものが売れたのかもわからないと、課題山積の中、訴求ポイントから改めて探る必要があったという。
戦略から見直して社内のデータ分析から開始。分析で最も重要視したのは、拡散した保有リードデータや案件情報、アンケートなどの分析。顧客からも改めてヒアリングしてニーズを理解した。リードや案件情報には企業情報を付与して企業属性をマッピング。改めてどの企業規模、業種区分の顧客が自社にマッチしているのかを探った。
そして、全体の売上に対して10%の案件創出を目標に設定。ゴールに必要なPV数、リード獲得数、MQL数、SQL数、案件創出額、大口案件獲得数を算出した。これをもとにコンテンツ数、メール配信数、インサイドセールス数など、活動計画にも数字を落とし込んだ。
全体的な施策を展開し小さな成功を積み上げる
まずは施策を手広く実践し、小さな成功から蓄積させていくことにした。1つ目は展示会。ブラザー販売は2020年5月にいち早く自社オンライン展示会を開催した。動画やセミナーを配信しながらソリューションを紹介。オンラインチャットボットで有人対応なども受けた。数種のコンテンツの中から、無償貸出機への申し込みがホットリードとして成果になる。
「マーケティングにはデジタルとアナログの融合がとても重要だと感じています」と今村氏。特にBtoBはデジタルだけでは商談や案件創出までつながりにくいという。
「デジタル展示会のあとの無償貸出機でのアプローチは他社にはないサービスで、差別化になっています」と語る。売上率も貸出関連は他の事業よりも約3倍高い。
貸出機は単に売上につながるだけでなく、ユーザーの利用状況が詳しく聞け、ニーズがわかる。その情報はコンテンツ制作にも活かせる上、また製造元であるブラザー工業へレポートして次の製品やサービス向上へも展開できる。
2つ目は見込み顧客がダウンロードするホワイトペーパー。リード情報を確保できるのでインサイドセールスにつなげやすい。ただ、内容が粗末だとブランドイメージを損なうので顧客が求める内容を盛り込むことが大事だ。
そして3つ目は、案件創出のためのウェビナーの開催。たとえば、小売店舗の業務効率化、生産管理ツールの導入など、より具体的な課題解決につながる内容を配信することで案件化を狙う。当初は2%ほどだった案件創出率は現在、セミナー内容が充実したことで10%近くまで伸びている。