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Adobe Experience Makers Live 2022 先進的なデジタル体験事例の紹介

 2022年9月12日(月)、アドビはブルーノート東京において「Adobe Experience Cloud」のソリューションを活用して優れたデジタル体験を創出しているデジタルマーケターが最新のデジタルエクスペリエンスソリューション活用事例を紹介する「Adobe Experience Makers Live 2022」を3年ぶりに対面で開催した。本稿では、アドビの既存顧客など限られた招待客が参加して大いに盛り上がった当日の様子をレポートするとともに、同ソリューションを活用した最新事例などをお届けする。

「The Experience Maker of the Year」を受賞した東京海上日動

 Experience Maker──それは「Adobe Experience Cloud」のソリューションを活用して、顧客中心主義志向を貫き、これまでの常識にとらわれることなく、創意工夫と大胆な行動力で素晴らしい顧客体験をお客様に届け、企業と顧客との関係性というものを変革し、企業の事業成長を牽引する人々のことを指している。

 本イベントには、日本の「Experience Maker Award」受賞者や「Adobe Marketo Engage Champion」受賞者らも出席し、各企業・チームの成功体験を発表した。開催場所は東京・南青山にあるジャズ・クラブ「ブルーノート東京」。ムーディな雰囲気の中、生バンドが各講演の合間にジャズミュージックを演奏し、その場を盛り上げる。

 冒頭のセッションにはAdobe Experience Maker Awardsの一つである「The Experience Maker of the Year」を受賞した東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)の吉村歩美氏が登壇する。

東京海上日動火災保険 デジタルイノベーション部 マネージャー 吉村歩美氏

 吉村氏が所属するデジタルイノベーション部は2019年に立ち上がった。主なミッションは、国内の市場に多大な影響を持つプラットフォーマーやマーケットホルダーと協力して新たな保険の提供モデルを立ち上げたり、新たなソリューションを開発・導入して保険の提供チャネルを改善し、効率化を促したりすることにある。これらのミッションの一環として、吉村氏は損害保険におけるデジタルマーケティングの活用に着手した

 従来型の損害保険事業では、東京海上日動とエンドユーザーを保険代理店(以下、代理店)が仲介するBtoBtoCのビジネスモデルが中心となっている。

「このビジネスモデルを前提に考えると、東京海上日動におけるデジタルマーケティングとはすなわち『代理店のデジタルマーケティングを支援すること』というシンプルな結論に至りました」(吉村氏)

難解な保険商品の解説コンテンツを制作

 吉村氏は、代理店の業務支援の切り口として「保険の難解さ」に目を付けた。損害保険は種類が豊富なため「医療保険とがん保険の違いは?」「個人賠償責任保険って何?」などエンドユーザーの疑問は尽きない。一方で、難解な保険の内容をわかりやすく、かつ正しく説明したオンラインコンテンツは「意外と少ない」という。そこで吉村氏は、東京海上日動側で記事や動画コンテンツを作り、代理店のWebページなどに掲載してもらう施策を考えついた。

「どの保険に入ることで、どういったリスクヘッジが可能なのかをWeb上で簡単に調べられれば、エンドユーザーがより合理的に意思決定ができると考えました」(吉村氏)

 また、エンドユーザーの利益につながるのはもちろん、代理店にとってもメリットがあると考えた。コンテンツの制作を東京海上日動が請け負うことで、代理店の負担にはならない。「コンテンツが増えれば代理店におけるCVRを高められる」との発想だ。

 効率的にコンテンツ制作を行っていくためにはCMSが欠かせない。そこで、外部の制作会社にシステム導入を依頼。提案されたのがアドビの「Adobe Experience Manager as a Cloud Services」だった。吉村氏はAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesについて「GUI(Graphical User Interface)によって直感的な操作が可能であり、HTMLやCSSといった言語に不慣れなメンバーでもWebページを簡単に構築できる」と高く評価する。

代理店に応じた二つのコンテンツ提供方法

 東京海上日動ではAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを活用することにより、各代理店へのコンテンツを二通りの方法で提供した。「API提供(※)」と「Web提供」だ。二種類の提供方法を用意したことが、本施策を成功に導く重要な鍵になったと吉村氏は振り返る。

※プログラミングを通じ、クライアントとサーバーでデータをやりとりする仕組み

 吉村氏によると、代理店は全国に約4万6,000社も存在するという。企業規模も様々で「有資格者である損害保険募集人が何百人といらっしゃる大規模な代理店もあれば、数人で地域に根差して経営している小規模な代理店や、主業のビジネスと合わせて保険を提供している代理店も存在します」と説明する。

 規模や環境が様々な代理店のWebページにコンテンツを載せてもらう場合、懸念点となったのがコンテンツの“届け方”だ。たとえば、東京海上日動が「記事をAPI提供するので掲載してください」と依頼しても、Webページを保有していない代理店はそもそも掲載のしようがない。一方で、既にリッチなWebページを持つ代理店に対してWeb提供で記事を送っても「外部サイトに遷移させたくない」と抵抗を示されてしまう。

 こうした背景から、コンテンツのAPI提供とWeb提供の双方を実現させる必要があったわけだ。この「ヘッドオン(Web提供)」と「ヘッドレス(API提供)」という二つの提供方式を実装するために、東京海上日動ではAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを活用した。

営業担当者もデジタルマーケティングのスキルを獲得

 吉村氏はAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを「非常に高機能なCMS」と評価し、その理由を次のように述べる。

「Web提供はもちろんのこと、ヘッドレス提供でAPIを連携させてコンテンツの中身だけ代理店に送ることもできます。これにより、リッチなWebページを持つ代理店に対してもコンテンツを提供し、既存のページの中にコンテンツを組み込んでもらえるわけです」(吉村氏)

 本施策の推進にあたり、吉村氏が所属するデジタルマーケティングのチームに加え、営業部門や損害部門のメンバーもジョインした。参画メンバーの出自をマーケティング部署に絞らなかったことによる効能を、吉村氏は次のように説明する。

「本施策を進めるにつれ『保険をどのようにお伝えすれば、お客様にわかっていただけるか』という知見が社内に蓄積されるようになりました。また、この施策で得たナレッジを営業現場に還元する取り組みも始まっています」(吉村氏)

 東京海上日動では、本施策から派生する形でリスキリングの取り組みを開始したという。「デジタルマーケティングユニバーシティ」という名称のもと、損害保険ビジネスにおけるデジタルマーケティングの知見の活かし方を、吉村氏を中心にチームメンバーが講師となって営業担当者に教えているそうだ。

営業・SEチームとの心の距離を縮めた日立製作所の事例

 吉村氏のセッションに続き「BtoBマーケターのスキルアップ」というテーマでパネルディスカッションがスタート。「Adobe Marketo Engage Champion」を受賞した日立製作所の加瀬奈月氏と、ソニーペイメントサービスの目黒あやめ氏が登壇する。なお、Adobe Marketo Engage Championとは「Adobe Marketo Engage」ユーザーの中から優れたマーケティング施策に取り組んだ企業や人、チームを表彰する制度だ。

(中央)日立製作所 デジタルマーケティング統括本部 デジタル戦略本部 DXプロモーションセンター部長代理 加瀬奈月氏
(右)ソニーペイメントサービス 営業企画部 マーケティング企画課 係長 目黒あやめ氏

 パネルディスカッションの冒頭、両氏がAdobe Marketo Engage Championに応募した理由を次のように語る。

「私は2016年、アドビさん主催のイベントに出席したことをきっかけに『いつか当社にもAdobe Marketo Engageを導入したい』と強く思うようになりました。それから二年後に導入。活用した成果を振り返る機会にしようと考え応募しました」(加瀬氏)

「このようなイベントに登壇される方々に対し、強い憧れを抱いていました。また、社内でAdobe Marketo Engageを使える担当者が私一人だけという理由から、孤独を感じるように。そこで、Championに応募すればマーケティングの“仲間”に出会えると考えたことが応募のきっかけです」(目黒氏)

 次のディスカッションテーマは「マーケターとしてレベルアップした瞬間」だ。2018年にAdobe Marketo Engageを導入した日立製作所。加瀬氏は導入当時の状況を「マーケティングチームと営業・SEチームの間に心の距離があった」と振り返る。営業・SEの担当者から直接「マーケティングチームには成約率の高い案件のみ持ってきてもらいたい」と言われたこともあったという。

 そこで、加瀬氏はまず自社の顧客データベースからターゲティング対象を抽出。顧客の課題の解決につながりそうなコンテンツを案内し、関心がありそうな人をセミナーに誘導するなど、地道な取り組みを重ねた。そうした取り組みを半年間続けた結果「マーケティングチームのおかげで商談が成立した」と言われるまでになったそうだ。「周囲からちゃんと評価されたとき、成長を感じましたね」と加瀬氏は述懐する。

商談成約率を前年比2倍に!ソニーペイメントサービスの事例

 ソニーペイメントサービスの目黒氏は、リードの育成において成果を上げられた瞬間にマーケターとしてのレベルアップを実感したと話す。当時、ソニーペイメントサービスでは「集客」までをマーケティングが「商談」からはセールスが担当する一方、その間に位置する「育成」はコール部隊が電話でフォローするのみ、という状況だったという。

「コロナ特需でリード件数は増加していた一方で、コール部隊のリソース不足やテレワークによる先方担当者の不在などが原因で、獲得したリードの6割以上とその後のコミュニケーションが取れていない状態だったのです」(目黒氏)

 そこでAdobe Marketo Engageを2020年に導入。顧客から見積もり依頼などがあった際、以前は電話していたところをAdobe Marketo Engageによるメールの自動送付に切り替えた。「これにより24時間365日対応が可能となり、導入から1年以内で商談の成約率が前年比率2倍を達成しました」と目黒氏は手応えを語った。

 アドビが全11ものセッションを通じ、Adobe Experience Cloudの活用事例を共有した今回のイベント。マーケターやビジネスの成長は一朝一夕で達成し得ないものの、自社の課題を苦心しつつも解決するExperience Makerの話から、多くの参加者が再現性のあるノウハウを学び、仲間の存在を実感したことだろう。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/02 10:30 https://markezine.jp/article/detail/40122