インフルエンサーマーケティングとは?
インフルエンサーマーケティングとは、SNSなどで自分のフォロワーやファンを一定数持ち、多くの人に対する影響力があるとされる人物を活用したマーケティング手法を指す。インフルエンサーマーケティングは、ソーシャルメディアマーケティングの一部だ。まずはインフルエンサーマーケティングのビジネスモデルや市場規模、注目される理由について見ていこう。
インフルエンサーマーケティングのビジネスモデル
企業が広告やプロモーションなどで直接ユーザーに働き掛けるのではなく、影響力を持つインフルエンサーを起用することにより、ユーザーに対して自社商品・サービスの認知向上や購買意欲を高めるのがインフルエンサーマーケティングだ。
従来のマーケティング手法では、テレビや新聞、雑誌、ラジオといったマス4媒体などを中心に、企業が消費者(ユーザー)に対して自社商品・サービスの広告宣伝や販売促進などのプロモーションを行ってきた。
インフルエンサーマーケティングでは企業がインフルエンサーを起用し、間接的にユーザーに対して働き掛ける形になっている。
インフルエンサーは、それぞれに自分のフォロワーやファンといったロイヤリティの高いユーザーを含むコミュニティを有している。マス媒体よりリーチ(広告の閲覧人数)は少なくても、ユーザーの共感を得て信頼されているインフルエンサーに自社商品やサービスの良さを伝えてもらうことによって、企業が販売促進を狙う。リーチよりもエンゲージメント(関心や愛着の高さ)を重要視するビジネスモデルだ。
インフルエンサーマーケティングの市場規模
YouTuberやインスタグラマーといったインフルエンサーを起用したインフルエンサーマーケティングの市場規模は、年々拡大している。
株式会社サイバー・バズと株式会社デジタルインファクトの共同調査によると、2023年のインフルエンサーマーケティングの市場規模は741億円で、前年比120%となる見込みだ。2027年には、2023年と比べて約1.8倍の1,302億円になると予測されている。
なお2023年のソーシャルメディアマーケティングの市場規模は1兆899億円で、前年比117%の見通しとなっている。2027年には2023年と比較して約1.7倍の1兆8,868億円になる見通しで、近年どちらの市場も著しく成長している点に注目したい。
インフルエンサーマーケティングが注目される理由
インフルエンサーマーケティングに注目が集まるのは、成長市場だということが大きな理由だ。SNSの広まりによってインフルエンサーそのものが増えてきたことや、インフルエンサーを起用して大きく売り上げを伸ばした企業など、成功事例が数多くあると知られるようになってきたからだろう。
インフルエンサーを活用すれば自社商品・サービスが売れやすくなる。時に過去最高の売上を記録したり、ネットニュースになったりと、話題を提供することで企業の認知度やイメージだけでなく、中には株価が上がることもある。
そんなインフルエンサーマーケティングを、企業側が放っておくはずもない。
インフルエンサーマーケティングを導入するメリット
次に、インフルエンサーマーケティングを導入するメリットを見ていこう。企業とユーザーとの間にインフルエンサーを置くことによって生まれる利点には、具体的にどのようなものがあるのだろうか。
ターゲティングしやすい
マーケティングの際に重要になるのはターゲティングだが、インフルエンサーを起用すればターゲティングがしやすくなるという特徴がある。
性別や年齢、学歴、職業、居住地といった「デモグラフィック」だけでなく、近年では価値観の多様化が進み、ユーザーの個人的な趣味や嗜好、ライフスタイル、習慣、性格などの心理的特性を表す「サイコグラフィック」によるターゲティングが、より重要になってきている。
たとえば、旅行やグルメ、ファッション、コスメ、ゲームなど、インフルエンサーにはそれぞれに得意ジャンルやコアなファンを持つ領域がある。インフルエンサーを起用するメリットは、フォロワーの特性から「デモグラフィック」「サイコグラフィック」によるターゲティングがしやすい点だといえる。
起用することで購買のハードルを下げられる
マスメディアからユーザーへの広告宣伝やプロモーションで最もハードルが高いのは、自社商品・サービスの購入といったアクションを起こしてもらうことだといわれる。ユーザーにとってはよく知らない商品・サービスであっても、インフルエンサーによってその魅力が伝えられれば、購入への心理的なハードルが下がりやすい。
インフルエンサーが持つ影響力は、ユーザーとの間で時間や労力をかけて構築してきた信頼関係に基づいている。「見る目のある人だから」「嘘を付かない人だから」「あの人がそう言っているのだから」といった信頼によって、商品・サービスへの信頼値が上がるといっても良いだろう。
インフルエンサーマーケティングは本質的に広告だが、広告感が薄く、親しみやすい施策だといえる。
情報の拡散や口コミの広がり方が早い
インフルエンサーが活動する主なプラットフォームはSNSだ。YouTubeやInstagram、X(旧Twitter)、TikTokなどのSNSは、情報のシェアや拡散のスピードが速い。インフルエンサーの投稿が短時間に立て続けにシェアされたり、多くの人の目に留まったりして「バズる」ことも珍しくない。
フォローしているインフルエンサーの投稿を受けて、ユーザーが引用や別のコンテンツを投稿すれば、情報はますます拡散していく。想定以上のリーチを獲得したり、SNS上で口コミが期待以上に広がったりすることも期待できるのだ。
SEO対策にもなる
SEO(Search Engine Optimization)対策とは、検索エンジンを最適化するための対策で、具体的には自社コンテンツが検索上位に表示されるようにする施策を指す。広告のように指定の場所に表示されるというものではなく、情報の内容や信頼性、新しさなどがアルゴリズムによって評価されるものだ。
インフルエンサーの投稿をきっかけとしてフォロワーやファン、ファンとつながっている人たちへと情報が拡散され、自社商品・サービスについての投稿が増えることは、興味関心を持つ人の多さを表す指標になる。
初めて興味を持った人がキーワードやハッシュタグで検索をする際にも、検索結果の多さは、話題性や人気の高さの裏付けとして他者から認識されることにもつながるだろう。
データ取得や分析が可能
SNSは投稿がどのような結果を残したのかが、データで明確に残せるというメリットがある。データがあれば、狙った通りの結果が出たのか否かという判断や、次回以降につなげるための分析、改善策を講じることが可能となる。ユーザーの足跡が残る媒体だからこその魅力だ。
どのようなターゲットにインフルエンサーの投稿が届いたのかだけでなく、インプレッション(表示回数)やリーチ(閲覧人数)、いいね、コメント、シェア、保存などのエンゲージメント、リンクのクリック数、サイトへの遷移率、購買数なども細かく見られる。
インフルエンサーマーケティングを導入するデメリット
インフルエンサーマーケティングには、念頭に置いておきたいデメリットもある。デメリットを上手にコントロールすることが重要だ。
適切なインフルエンサーの選定が難しい
インフルエンサーマーケティングの肝となるのは、当然ながらインフルエンサー当人だ。かつてはフォロワー数の多さが評価されていたが、それが原因でフォロワーを買うインフルエンサーも登場するようになってしまった。
近年ではインフルエンサーの数が増え、フォロワーの人数だけではなく、性別や年齢層、居住地、職業、興味関心などといった発信者の質を見る必要がある。それに加えてインフルエンサーの投稿内容や頻度、発言の傾向、熱量、フォロワーからのエンゲージメントなど、インフルエンサーの何が好まれているかを考慮して選定しなければならない。
費用が高額になる可能性がある
有名なインフルエンサーに依頼する場合、費用が高額になる可能性がある。知名度や影響力の高いYouTuberやインスタグラマーの中には、出演料として数百万円やそれ以上を求めるケースもある。出演料は成果報酬とは異なり、広告の成果に関係なく支払うものだ。
成果報酬の場合、フォロワー数や閲覧数に対して数円単位で単価が設定されていることが多い。動画や投稿内のアフィリエイト広告や記載したURLからの遷移・CV(成果の対象とするユーザーのアクション)によって報酬が決まるパターンもある。予算に応じて使い分けよう。
ステマと誤解されないための配慮が不可欠
広告感の薄いインフルエンサーマーケティングでは「ステマ」と誤解されないよう、広告である旨を表記する必要がある。
「ステマ」とは「ステルスマーケティング」の略で、ユーザーに広告と気づかれないように商品・サービスを宣伝・口コミすることを指す。企業から依頼されているにもかかわらず、インフルエンサーが商品・サービスをまるで自分が見つけたかのように発信してしまうと、炎上するだけでなく法律違反となる可能性もある。
インフルエンサーの投稿内容がステマと誤解されるような内容を含んでいると、自社商品・サービスやブランド、企業イメージにも影響を与える可能性があることを忘れてはならない。
ステマ規制対策(景品表示法違反防止)
2023年10月1日から、ステマは景品表示法違反となった。規制の対象となるのは自社商品・サービスの広告宣伝を依頼する企業側だが、インフルエンサーもフォロワーからの信頼に影響が出ることは間違いない。
投稿内容には注意が必要だ。WOMJ(クチコミマーケティング協会)の自主的なガイドラインによると、次のような対策をとる必要がある。
- 企業とインフルエンサーの関係性を明示する
- 関係性明示のために必要な2つの要素(広告の依頼主と便益提供の有無)を明示する
- 広告宣伝する商品・サービスだとわかる文言やハッシュタグを使う
広告の依頼主とインフルエンサーに金銭や物品、サービスなどの提供があったかの明示に加えて、インフルエンサーの投稿が誤解なく広告だと伝わるような表現を盛り込む必要があるとしている。具体的な文言は、以下のようなものだ。
- 「宣伝」
- 「広告」
- 「PR」
- 「プロモーション(Promotion)」
- 「スポンサード(Sponsored)」
- 「サポーテッド(Supported)」
- 「アンバサダー(Ambassador)」
- 「協賛」
- 「提供」
- 「タイアップ」
知っておきたいインフルエンサーの基礎知識
ここでは、インフルエンサーにはどのような種類があるのかを見ていこう。一口にインフルエンサーといっても、取り扱うジャンルや活動の中心となるプラットフォームなどの違いがある。
インフルエンサーの種類を決める要素とは
ここまでインフルエンサーマーケティングについて見てきたが、そもそもインフルエンサーとはどのような人なのかという基礎知識を改めておさらいしておこう。
広義のインフルエンサーとは、知識人や文化人、芸能人、アスリートなど、多くの人の言動に影響を与える有名人を指す。しかし、インフルエンサーマーケティングでいうところのインフルエンサーとは、SNSを中心に自分の好きや得意を発信し、フォロワーやファンを一定数集めて自分のビジネスや広告宣伝を担う人のことだ。
インフルエンサーには、対象ジャンルやフォロワー数、活動の中心となるプラットフォームなどからくる違いがある。
対象ジャンル
SNSで知名度を上げるには、自分の得意分野を絞り込むことが必須といわれているため、インフルエンサーが自分のジャンルとしている領域は細分化されているケースが多い。
取り扱い可能なジャンルが広いインフルエンサーも一部には存在するが、企業側としてはジャンル特化型のインフルエンサーのほうが、情報が伝わりやすいだろう。具体的には、以下のようなものがある。
- 観光地、ホテル・レジャーなど旅行系
- ランチ、スイーツなどグルメ系
- ダイエット系
- ボディメイク、筋トレなどフィットネス系
- アパレル、コーディネートなどファッション系
- メイク、コスメなど美容系
- レシピ、時短調理など料理系
- ビジネス系
- ペット、動物系
- イラスト、写真などアート系
このほかにも、ニッチながらコアなファンを獲得しているインフルエンサーは枚挙に暇がない。それに加えて同じ旅行系インフルエンサーでも、格安旅行なのかリッチな旅行なのか、カップルなのか、ファミリーなのかによってもフォロワーは変わってくる。
フォロワーの数と質
以下のようにフォロワーの数と質によっても、インフルエンサーの種類は異なる。
名称 |
フォロワー数 |
特徴 |
トップ(メガ)インフルエンサー |
100万以上 |
リーチは広いがエンゲージメント率が低い |
ミドル(パワー)インフルエンサー |
10万以上 |
リーチはトップ級ではないものの、エンゲージメント率はトップより高い |
マイクロインフルエンサー |
1万以上 |
リーチはナノより広いものの、エンゲージメント率はナノより低い |
ナノインフルエンサー |
1万まで |
リーチは狭いがエンゲージメント率が高い |
トップ(メガ)インフルエンサーとは、インフルエンサーの中で最も知名度や影響力が高い。ミドル以下のインフルエンサーにフォローされている場合も多く、インフルエンサーの訴求力と商品・サービスの特性が掛け合わさった際には、バズることも珍しくない。SNSだけではなく、マスメディアに登場する人もいる。
ミドル(パワー)やマイクロインフルエンサーは、特定のジャンルで強い影響力を持つことが特徴だ。大きな違いはフォロワー数だが、トップ(メガ)インフルエンサーほどのリーチはないものの、エンゲージメント率の高さが魅力といえる。
1,000~1万人とインフルエンサーの中では最もフォロワー数が少ないが、エンゲージメント率の高さでは負けないのが、ナノインフルエンサーだ。自分の好きなことを熱量高く発信している人も多く、トップインフルエンサーを広く浅いタイプとすると、狭く深いタイプがナノインフルエンサーだといえる。
距離感のあるトップインフルエンサーより、身近なナノインフルエンサーが好まれる傾向もあるともいわれている。
活動するプラットフォーム
インフルエンサーは、それぞれに活動の中心とするプラットフォームがある。主なプラットフォームは以下の5つだ。プラットフォームごとにメインのユーザー層があるため、インフルエンサーマーケティングを検討している場合は押さえておこう。
YouTube
YouTubeは、Google社傘下のYouTube社による動画配信プラットフォームだ。近年では子ども、特に男子がなりたい職業のトップ10にYouTuberがランクインするほどの人気を誇る。
プラットフォームとしての規模も大きい。ユーザー数の多さに加えて年代も幅広く、2020年以降は40代以上のユーザーが増加傾向にある。2000年以降に成人や社会人になったミレニアル世代や、1990年代半ばから2010年代始めに生まれたZ世代を意識したショート動画、縦型の広告にも対応している。
- 世界ユーザー数:25億以上
- 国内ユーザー数:7,000万人以上
- 国内ユーザー属性:性別や年代を問わずユーザーが多い
- 利用料:無料(有料プランあり)
- 配信コンテンツ:動画、ショート動画、ライブ配信(投げ銭)
Instagramは、Meta(旧Facebook)社傘下のInstargam社によるプラットフォームだ。YouTubeに次いでインフルエンサーが多いといわれている。
Instagramを主戦場とするインフルエンサーはインスタグラマーと呼ばれる。国内ユーザーの中心は女性だが、半数弱は男性の他、10代の利用率も高い傾向だ。
- 世界ユーザー数:20億人以上
- 国内ユーザー数:3,300万人以上
- 国内ユーザー属性:20~30代の女性が中心(男性は半数弱)
- 利用料:無料(有料プランあり)
- 配信コンテンツ:画像、ストーリーズ(24時間限定コンテンツ)、リール(動画)、ライブ配信(投げ銭は利用条件あり)、ショッピング機能(ECサイトへの導線)
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)はSNSの中では先発だがユーザー数が伸びず、2023年4月に実業家のイーロン・マスク氏に買収され、「X」社へと名称変更された。
即時性と拡散の速さが特徴的で、マスメディアや企業のキャンペーンに利用されることも多い。日本では「140字制限の文字メディア」というイメージが強いが、画像や音声、動画など、買収後に対応範囲を広げている。
- 世界ユーザー数:2億4,500万人
- 国内ユーザー数:4,500万人以上
- 国内ユーザー属性:年齢層は広いがボリュームゾーンは20代で男女半々
- 利用料:無料(有料プランあり)
- 配信コンテンツ:文字(140文字)、画像、動画(140秒)、スペース(音声配信)
TikTok
TikTokは米国企業であるオラクル社傘下のBytedance社による、ショートムービー共有プラットフォームだ。15~60秒ほどの動画が中心で、スマホの全画面を使う縦型動画という特徴がある。
登場は2017年からと後発だが、アプリのダウンロード数が累計20億回を超えたと話題になった。TikTokで活躍するインフルエンサーはTikTokerと呼ばれ、10代の若者を中心に圧倒的な人気を誇っている。
- 世界ユーザー数:10億以上
- 国内ユーザー数:950万人以上
- 国内ユーザー属性:メインユーザーは10代で男女おおよそ半々
- 利用料:無料(広告なしの有料プランの導入が検討されている)
- 配信コンテンツ:動画、ライブ配信(ライブ配信・投げ銭ともに条件あり)
FacebookはMeta社(旧Facebook社)によるSNS黎明期に登場したプラットフォームだ。世界ユーザー数の多さを誇る。個人は実名での利用と1人1アカウントが原則で、企業アカウントが2億社以上あることも特徴だ。
- 世界ユーザー数:30億5,000万人
- 国内ユーザー数:2,600万人
- 国内ユーザー属性:30~40代が多く男女おおよそ半々
- 利用料:無料
- 配信コンテンツ:画像、動画、ライブ配信(投げ銭)、ショップ機能(ECサイトへの導線)
重要なのは自社に適したインフルエンサーを選ぶこと
インフルエンサーにはジャンルをはじめとして、フォロワー数や活動の中心とするプラットフォームなどから来る違いがある。重要なのは、自社商品・サービスの広告宣伝をしてもらうのにふさわしい人を選ぶことだ。
ジャンルから絞り込んでいき、プラットフォームそれぞれの特徴を踏まえて、フォロワー数を選んでいくという方法をお勧めしたい。インフルエンサーのイメージやキャラクター、個性と自社ブランドのイメージが合うかどうかも確認が欠かせない。
インフルエンサーの選び方と費用相場
ここでは、実際にどのようにしてインフルエンサーを選ぶのかとその費用相場について見ていこう。トップからナノといったインフルエンサーの規模感や活動ジャンルを考えると、彼らは相当数いるものと推測される。
直接依頼する
企業側からインフルエンサーに、メールやDMなどで直接依頼するという方法がある。プラットフォームにはそれぞれ、インフルエンサーと直接連絡ができる手段が用意されている。直接連絡ツールが公開されていない場合には、メールなど指定の方法で連絡できるようになっているはずだ。
このような場合、企業側の広報担当や従業員などが、既にインフルエンサーの熱心なフォロワーかファンだということも多い。フォロワー数の多いインフルエンサーには連絡も多いと予測されるため、たくさんの連絡の中から選んでもらえるようにする工夫が必要だ。
インフルエンサー検索ツールを利用する
インフルエンサーを検索できるサイトやアプリもある。ジャンルやフォロワー数、フォロワー属性、投稿に対するエンゲージメントなどの条件による絞り込みが可能で、インフルエンサー本人に直接連絡できるといった効率的なインフルエンサー探しが可能だ。探すだけではなく、インフルエンサーの投稿パフォーマンスや依頼したPRの実績も確認できる。
依頼する企業側からすると、1つの商品・サービスに複数のインフルエンサーを起用した場合、比較検討が簡単にできる点も魅力といえるだろう。インフルエンサー検索ツール担当者によるサポートの有無を確認しよう。
キャスティング会社に依頼する
キャスティング会社からインフルエンサーを選ぶことも可能だ。キャスティング会社は、インフルエンサーと企業とのマッチングサービスを提供する。
インフルエンサー選びの際に、担当者のサポートを受けられることが検索ツールとの大きな違いだ。中には、芸能人のキャスティングも可能とする会社もある。
広告宣伝の効果測定だけでなく、プロモーションの企画やSNS運用の戦略立案など、インフルエンサー選びだけに留まらないサービスが魅力といえる。PR投稿の二次利用を可能としている会社も多い一方で、費用は高めといえる。
インフルエンサーの費用相場
直接連絡の場合、インフルエンサー選びの費用こそ発生しないものの、出演交渉や料金交渉など、見えない労力が発生する点に注意が必要だ。広報や法務などの部署が自社内にあると安心だろう。
インフルエンサー検索ツールの場合は月額制が多く、費用は3~5万円からで、月に何人まで選択可能としている場合が多い。無料のサービスもあるものの、機能が充実していなかったり、利用制限があったりなどするため確認が必要だ。
キャスティング会社は、月額制や案件単位など、会社によって課金形態が異なる。利用するサービスによっては数十万円やそれ以上になる可能性も十分にあるといえるだろう。
インフルエンサーマーケティングの成功事例集
では、実際にインフルエンサーを起用したマーケティング施策の成功事例を見ていこう。
YouTube×メーカー・小売り・ゲームなど
YouTubeは最も幅広いユーザー層と動画配信というサービスそのものの認知度の高さを誇るプラットフォームだ。
チャンネル登録者1,000万人を超え、マスメディアに度々露出するYouTuberも珍しくない。保護者のスマホやゲーム機器などでYouTubeを見始める幼児も多く、キッズやファミリー向けの商品・サービスも盛んにPRされている。
- ヒカル×ファッション通販「ロコンド」:新ブランド「Rezard」
- Hikakin×テーマパーク「USJ」:「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のPR
- Fischer’s×おもちゃメーカー「タカラトミー」:コラボ商品「人生ゲーム」(ボードゲーム、Nintendo Switch版はPR)
- ばんのけ×自動車メーカー「マツダ」:「CX-5」のPR
- 椎名亜美×ファッションブランド「GU」:YouTubeショートによる購入品紹介
Instagram×美容・ファッション・旅行など
Instragramは、20~30代の女性がメインユーザーという特徴がある。「映え」という言葉の発祥元ということもあり、画質や色彩、コンセプトなどを含む美しさにこだわった、たくさん見て楽しむ雑誌のようなプラットフォームといえる。インフルエンサーの起用は、そのユーザー層をターゲットとするものが多い。
- 石井里奈×化粧品メーカー「ビービーラボラトリーズ」:「PHプロテクトUVスプレー」のPR
- プチプラのあや×ファッションブランド(EC)「SHEIN」:購入品レビュー
- halno×スマホメーカー「Samsung Japan」:「Galaxy Z Flip5」のPR
X(旧Twitter)×レシピ・日用品・ペットなど
X(旧Twitter)のユーザーには、20代が多く、リアルタイム性と拡散力の高さが特徴だ。ツイートやリツイートの多さでバズを狙うやり方が適しているといえるだろう。
- リュウジ×総合小売り「ドン・キホーテ」:購入品を使った3レシピ紹介
- ゆむい×食品メーカー「キムチの美山」:「イチオシキムチ」のPR
- 藤井おでこ×電気機器メーカー「フィリップス:「S7000シリーズ(シェーバー)」のPR
TikTok×エンタメ・ペット・ファッションなど
TikTokのメインユーザーは10代の若者で、短い楽曲やダンス動画などが多い。ユーザー層の年代は徐々に上へと広がりつつあり、ショートムービーを活かしたエンタメだけでなく、旅行系やアウトドア、ペット、ファッションなど、コンテンツの種類が増えていることが特徴だ。
- いわたまあり×IT「サンジュウナナド」マッチングアプリ「ペアフル」のPR
- とぅん×ペット用品メーカー「aumuca」:「ペット用ブラシ」のPR
- ふきはる×ファッションブランド「COEN」:「カーディガン」のPR
Facebook×企業アカウント
実名利用などのルールがあり、Facebookを中心に活動している国内のインフルエンサーはあまり多くない。
その一方で企業アカウントによるPRは活発だ。世界ユーザー数や企業アカウント数の多さを活かしたマーケティング施策が向いているといえるだろう。
インフルエンサーマーケティングを成功させるポイント
インフルエンサーマーケティングを成功させるために、押さえておきたいポイントがいくつかある。失敗も経験だが、できれば成功する確率を高めたおきたいというのが担当者の本音だろう。
広告の目的とターゲットを明確にする
インフルエンサーは、あくまでも自社商品・サービスの広告宣伝を担う人物だ。インフルエンサーの力を借りはするものの、インフルエンサーに丸投げしてしまわないよう、PRを依頼する目的とターゲットを明確にしておこう。可能であればペルソナ(想定する顧客像)を設定し、ペルソナを意識して投稿内容の方向性を決めていくことをお勧めする。
インフルエンサーにとっても、マーケティングの成功は自分のキャリアになるため、互いに齟齬のないような準備をしておきたい。
KPIを設定し効果測定する
マーケティング施策が成功したのかどうかを確認するには、効果測定が不可欠だ。購入までのフェーズに応じて適切なKPI(重要業績評価指標)を設定しよう。
SNS上の広告の効果測定には、次のようなKPIがある。
- 認知:リーチ数、投稿閲覧数など
- 興味関心:いいね数、コメント数、保存数、UGC数、URLからの遷移数など
- 比較検討:滞在時間、読了率、視聴完了率など
- 購買:CV数、登録数など
認知と興味関心を得たい場合では、確認する指標がそれぞれに異なる。企画の段階で設定した広告宣伝の目的に応じて、適切なKPIを用いることが重要だ。
インフルエンサーマーケティングが成功しても、仮に思ったような結果につながらなかったとしても、何が原因かを分析できるようにしておかなければならない。
広告に適したインフルエンサーを探す
インフルエンサーマーケティングの肝となるのが、インフルエンサー選びだ。前述したインフルエンサーの種類などを踏まえて、適切な人物を選ぼう。同一ジャンルかつプラットフォームでフォロワー数も同等という候補者が複数いる場合には、実際に、またはオンラインで会って話す機会を設けよう。
話してみたからこそわかる人柄やキャラクター、言外に伝わってくる雰囲気などを含めて、自社イメージやブランドイメージになじむ人物を選定しよう。加えて「一緒に仕事をしたい」と思えるかどうかも大事だ。
インフルエンサー自身の言葉で語ってもらう
インフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーとフォロワーとの信頼関係に基づくマーケティング施策だ。そのため、広告感が強過ぎるとフォロワーからの反応が悪くなり、インフルエンサーにとっても好ましい結果にはつながらない。
投稿内容は、ある程度インフルエンサーの裁量に任せ、投稿前にステマと誤解されないかを確認することが重要だ。自社商品・サービスに対する辛口コメントがあったとしても、それが一般ユーザーからの率直な意見だと受け止めるようにしよう。
近年では、企業に忖度しない度胸の良さやフォロワーに対する誠実さが評価される傾向もある。インフルエンサー自身の言葉で語ってもらおう。
インフルエンサーが自社商品・サービスのファンであることが望ましい
ファンが推し商品・サービスの良さを語るときの熱量は高い。インフルエンサーマーケティングも同様に、インフルエンサー本人がファンであると、PRに対する熱量の高さが伝わってくる。不思議なもので、好きでも嫌いでもないものについて語っていると見抜くフォロワーは多いようだ。
インフルエンサー本人が自社商品・サービスのファンであれば望ましいが、そうでないケースもあるだろう。そのような場合は、実際に試してもらった上で率直な感想や意見を聞くという方法もある。嘘や誇張のないインフルエンサーの言葉が、フォロワーに刺さると理解しよう。
SNSを活用したインフルエンサーマーケティングは、遠くのきらびやかな芸能人よりも、もっと身近で親近感の湧く一般人というSNSフォロワーの心理に支えられている。
インフルエンサーが築いたフォロワーとの関係性やイ、ンフルエンサー自身のブランディングを理解することが重要だ。その点を踏まえて、購買のハードルを引き下げるインフルエンサーマーケティングを活用しよう。