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SUBARUのマーケティング戦略&態度変容・CV向上を支えるコネクテッドTV活用とは

 9月17日から9月20日まで東京アメリカンクラブにて開催されたイベント「Advertising Week Asia 2024」。同イベントで行われたセッション「SUBARUが実践するデータ活用の最前線:注目のコネクテッドTVの活用方法とは?」には、SUBARUのマーケティング推進部宣伝課で課長を務める安室敦史氏と、The Trade Desk Japanで広告主を支援する大川翠氏が登壇した。本記事では、同セッションの内容からSUBARUのマーケティング戦略、両社が取り組んだコネクテッドTV広告の活用事例などについて紹介する。

SUBARUの成長のカギは「安全性」

 セッションで最初の主題となったのは「SUBARUのマーケティング戦略」についてだ。安室氏はSUBARUのマーケティング戦略を進める指針となっているSUBARUの積極化・新規化の要因について分析した結果を共有。その結果を見ると、消費者は安全技術に優れている点や安全性能が高い評価を受けていることを知ると、SUBARUに対して積極的な情報収集をしたり、新規顧客としてディーラーに訪れたりすることがわかったという。

株式会社SUBARU 国内営業本部 マーケティング推進部宣伝課 課長 安室 敦史氏
株式会社SUBARU 国内営業本部 マーケティング推進部宣伝課 課長 安室 敦史氏

 しかし「SUBARU=安全とは思われていなかった」と安室氏は語る。

 「SUBARUの車を買いたい、興味があると思っている方は安全性を認知・実感している一方で、SUBARUのことを知らない方は『男性の趣味車』『レースが好きな人の車』『危ない車』などの認識を持っています。このパーセプションのギャップを埋めていくところに力を入れています」(安室氏)

 SUBARUでは、安全性を訴求するために、安全性を重視したクリエイティブを制作。たとえば「インプレッサ『いのちを守る篇』」では、母親の日常的な運転シーンの中で起こりうるリスクに対し、アイサイトが事故を防ぐ様子を伝えながら、アイサイト搭載車が追突事故発生率0.06%であることを伝えた。

 これにより、全業界の指名検索スコアが高かったクリエイティブ3位にランクイン(ノバセル調べ)し、サイト流入単価も大きく改善。新たなクリエイティブが「SUBARU=安全性が高い」というパーセプションの変化につなげるきっかけを作った。

 一方で「スポーティな車が欲しい」「運転が好き」など、自動車に興味を持つきっかけは様々なので、安全性以外の訴求はデジタルマーケティングを中心に、各車種のバリュープロポジションを網羅して配信しているという。

6年ぶりの販売台数前年越えを支えた、データ活用と統合

 この「SUBARU=安全性が高い」を重視した戦略に切り替えた結果、営業の努力と相まって2023年の販売台数が6年ぶりに前年を超えたSUBARU。安室氏は、この結果を支えていたデータ統合と効果計測について解説した。

 SUBARUでは、2016年からCDPの導入を始めてデータ活用と統合をスタートし、各種広告の配信結果からメーカー/ディーラーWebサイトでの行動データ、ディーラーの行動ログ、オーナー専用アプリ「マイスバル」のデータなど、あらゆる接点のデータを蓄積し、One IDで統合。そして、これらのデータを基に様々な広告・マーケティング施策を展開している。

 安室氏は、このデータ活用と統合の仕組みが整ったことにより「様々な施策から得られたコンバージョン(来店予約や試乗予約など)だけでなく、それが受注につながったかどうかまで一筆書きで追えるようになった」と語った。そして、自動車の検討行動の変化を例に、データ活用・統合の重要性を伝えた。

 「昔は自動車を検討する際3~4回ディーラーを訪れるのが当たり前でしたが、今は多くの方が購買直前まで来店しません。私は見えないトーナメント戦と呼んでいますが、Web上で検討する方のデータを見ながら施策を展開し、来店を検討する選択肢の中に入ることを目指しています」(安室氏)

SUBARUに学ぶ、広告のビジネス貢献の可視化

 続いて安室氏は、SUBARUが展開している様々な広告をどのようにして効果計測しているかについて紹介した。SUBARUでは、オンライン上のコンバージョンだけでなく実店舗の見積や受注を重視し、オフラインコンバージョンでの評価を取り入れている。

 この評価はデジタル広告だけでなくテレビCMでもほぼ同様な形で行えているという。具体的には、テレビCMの放送された時間やエリアのデータ、番組別視聴率のデータを自社の持つデータと連携し、テレビCM放送時に起こるWebサイト流入がどの放送局・時間・番組で行っているのかを可視化。その結果とWebコンバージョンや成約データと結び付けることで、テレビCMのビジネス寄与度を明らかにしている。

 ここまでの内容を踏まえThe Trade Deskの大川氏は「このようなデータ活用・統合の仕組みを作る上でどのような苦労があったのか」と質問。これに対し安室氏は「経営層はもちろん、システムを一緒に開発するベンダー、ディーラーなど様々なステークホルダーと調整する必要があるので、その点は苦労した」と話した。

成長するコネクテッドTV市場の中でSUBARUが行った施策とは

 ここで大川氏は次のテーマとして「動画広告 コネクテッドTV・OTT(Over The Top)の活用」を挙げ、コネクテッドTV・OTT広告市場の概況とSUBARUとThe Trade Deskの取り組みについて紹介した。

The Trade Desk Japan株式会社 ビジネスディベロップメント アソシエイトディレクター 大川 翠氏
The Trade Desk Japan株式会社 ビジネスディベロップメント アソシエイトディレクター 大川 翠氏

 そもそもコネクテッドTVとOTTの違いは何か、読者の皆さんはご存じだろうか。前者はインターネットにつながったテレビ、つまりデバイスを指す。一方OTTはABEMAやTVerなど、コネクテッドTVやスマートフォンなどで再生できる動画配信サービス全般のことだ。

 大川氏は「コネクテッドTVとOTTで配信できる広告の市場は右肩上がりに成長している」と語り、実際のデータを示した。OTTを提供するプレーヤーの市場規模は2024年には1兆円を超えると試算されており、そのうちの約4,000億円が広告収入になるという(AJA/デジタルインファクト調べ)。

 コネクテッドTV広告の市場に関しても、2024年には約1,700億円の市場になる(AJA/デジタルインファクト調べ)と試算されている。コネクテッドTVに関しては、2020年時点では約100億円の市場規模しかなく、この4年で著しい成長を見せている。

 この背景には、ABEMAやTVerといった主要OTTプレーヤーのコンテンツの充実がある。両サービスともにコネクテッドTVで視聴するユーザーが既に一定数いる状態であることがわかっている。

 SUBARUでは、この成長するコネクテッドTV・OTT広告市場にチャンスがあると捉え、フォレスターのプロモーションで活用した。フォレスターはSUBARUの中でも一番売れており、安室氏も「屋台骨を支えている車種」と語るくらいで、その車種でコネクテッドTV・OTT広告の取り組みにチャレンジしたという。

態度変容とCVにつながった施策の内容とは?

 では、具体的にはどのような配信設計とクリエイティブでコネクテッドTV・OTT広告を活用したのだろうか。大川氏によると「TVerを対象に、3パターンのクリエイティブを均等な予算で配信した」という。

 1つ目のクリエイティブでは洗練されたインテリアデザインや心地よい走行性能などを訴求。2つ目はエンジン性能に、3つ目は安全機能に焦点を当てたクリエイティブを制作し、異なる訴求を展開した。また、共通して試乗予約をCTA(Call To Action)に置いた。

 これらのクリエイティブを配信した結果、広告認知率・ブランド認知・ブランド購入意向すべてに貢献したことがわかった。この理由について大川氏は次のように解説した。

 「コネクテッドTVは大画面でインパクトがあり、加えてTVerの場合見たい番組を能動的に探しているため広告視聴に関しても受容度が高い特徴があります。また、この特徴により視聴完了率も95%を超えています」(大川氏)

 また、コンバージョンに関しても一定の成果が得られていたという。コネクテッドTV並びにOTT広告はクリックできない仕様がほとんどだが、The Trade Desk独自の分析技術を用いて、インプレッションとフリークエンシーの状況からビュースルーコンバージョンを視覚化しており、SUBARUの事例でも高い数値につながったという。

コネクテッドTV広告は今後日本でも主流になる

 ここで気になるのが「どのようにしてコネクテッドTV・OTT広告の効果を改善するか」である。SUBARUの取り組みに関する具体的な運用の言及はなかったが、The Trade DeskではビュースルーコンバージョンをKPIとし、それをもとにメディアやデバイス、ターゲティング、クリエイティブなど様々な運用レバーを用いて効果の高いものを検証していくという。

 そして、セッションの最後に大川氏は安室氏にセッションの結びとして今後の市場への期待と展望を聞き、安室氏は「アメリカではコネクテッドTVの活用が主流になっており、日本でもこの流れが来ると思う」と語った。

 「調査では20代~30代を中心にOTTの利用率は高くなっており、40~60代に関しても約4割~5割くらいの方が既にOTTを利用しています(※)。テレビCMが持つリーチと検索リフトの高さは健在ですが、テレビとコネクテッドTVをはじめとしたデジタル広告をどのように組み合わせていくのかは今後重要になってくると思っています」(安室氏)

 この安室氏の展望を受け、大川氏はThe Trade Deskとして広告主に対しどのような支援を行っていくかを語り、セッションを締めくくった。

 「The Trade DeskはコネクテッドTVはもちろん、ディスプレイ広告や音声広告など様々な配信先を組み合わせながら、お客様のKPIをサポートすることにコミットできるプラットフォームとなっております。OTTやコネクテッドTV広告の配信の機会に活用をご検討いただければと思います」(大川氏)

「With/Afterコロナ時代における国内外のOTT-V動向」(マルチメディア振興センター)のOTT利用に関するデータと「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書 」(総務省)のテレビ視聴に関するデータを比較

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:The Trade Desk Japan株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/05 10:30 https://markezine.jp/article/detail/47093