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マーケターが向き合うべき「人間の欲求」を丸裸に!セガ エックスディー伊藤氏と面白法人カヤック後藤氏が語る、ゲーミフィケーション最前線

「AI時代を生き抜くマーケターの条件」とは?ビービット藤井氏とセガ エックスディー伊藤氏が語る

AI時代にマーケターが磨くべき能力

藤井:AIが代替できない領域もあります。それは、企業やサービスとユーザーの間に築かれる深い関係性です。AIは「楽に情報を手に入れてあげる」と提案してくれますが、ゲームの「毎日ログインボーナスをもらう」という体験のように、人の習慣や楽しさまでは代替できません。関係構築をともなう体験は、AIに奪われることはないと考えます。

 この関係構築の重要性を十分に理解しておらず、獲得の文脈を追求しがちな企業も少なくありません。しかし、先ほど話したように獲得領域はAIに代替されていくため、いかに早い段階で関係構築にシフトできるかが今後の勝負の分かれ目になるといえます。その意味で、伊藤さんの提唱される、その場の行動だけでなく意識や習慣の変容までゲームの力で設計していく「ゲームフルデザイン」の考え方は、ユーザーのロイヤル化や関係構築において今後ますます重要になるでしょう。

伊藤:藤井さんの仰る通り、今後は効率化できる部分はAIが担い、人間には考える時間が生まれます。この時間をどう使うかが、今後、マーケター個人の能力を左右する重要な要素になります。AIに頼りきり、思考を放棄してしまう人は淘汰されるでしょう。逆に、AIを使いこなし、生まれた時間をクリエイティブな発想や想像力、あるいは対人コミュニケーションに費やせる人が生き残るのだと思います。AIによって、人々の間に明確な格差が生まれるでしょう。

 5年、10年後には、「AIを使いすぎた結果、どこにも必要とされない層」が出てくるかもしれません。AIを使いこなすこと自体は、もはや特別なスキルではなくなります。誰もが同じようにAIを使えるようになった時、思考力や人間力といった能力が差別化の要因になると考えます。

 AIは0から100の答えを導き出すことはできますが、100から200、300へと高めていくのは人間の仕事です。AIが出したアウトプットを評価し、より良いものへと導く品質判断能力が、今後ますます重要になります。具体的には、AIに「200案の中からベストなものを選んで」と聞くのではなく、自分のセンスで「この2つの案は素晴らしいから、この方向性でさらに発展させてほしい」と指示できる能力がマーケターに求められます。これは、日々の思考力やセンスを鍛えることでしか得られません。

 AIにすべてを任せると、誰もが同じ答えにたどり着き、事業全体が均質化する危険性があります。AIに判断まで委ねる「AI貧困」が生まれるかもしれませんね。

藤井:業務がAIに代替されることで、個人の付加価値が失われていくということですよね。たとえば、AIが素晴らしい体験案をたくさん出してくれたとしても、マーケターがどれを選べばいいか判断できなければ意味がありません。そうした品質判断こそが、これから各マーケターにとっての勝負どころになるでしょう。

伊藤:だからこそ、感性を含めた人間ならではの能力を磨くことが重要です。様々な人やサービスと出会い、多様なインプットを得ることで、AIを使いこなすための判断力を養うことができると思います。

ゲーミフィケーションは「人の本質」を捉える武器

MZ:対談の最後に、今後の展望をお願いします。

藤井:AIがどれほど進化しても、ユーザーとの関係構築や意味的価値はAIに奪われません。今、関係構築のノウハウに十分な自信を持てていないマーケターも少なくなく、手法を模索している状況だと感じます。

 そのような時代だからこそ、ゲーミフィケーションを正しく捉えることが一つのカギになります。ポイントの配り方一つでもユーザーの心は動きます。しかし、勢いでポイントプログラムを作っただけでは不十分です。ゲーミフィケーションの本質や考え方を学ぶことで、関係構築という今後重要になるスキルを身につけることができるでしょう。

伊藤:ただ、ゲーミフィケーション、ゲームフルデザインがすべての問題を解決するわけではないことも強調しておきたいです。そうしないと、ゲーミフィケーションがうわべの手法としてトレンド的に消費された2011年頃と同じ過ちを繰り返すことになりかねません。

 ゲームフルデザインは、あくまで「人間の本質的な欲求」を理解するための一つの武器にすぎません。今まで解決できなかった問題も、この考え方でアプローチすれば解決の糸口が見つかるかもしれません。そういった位置づけで捉えていただければ幸いです。

MZ:本日は貴重なお話をありがとうございました。

対談前編はこちら

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/09/30 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49457

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