ECに依存度を高めていく消費者
2008年半ば、リーマン・ブラザーズ破綻に象徴される世界的な金融恐慌。その大波が日本を襲ったことは、記憶に新しい。景気は低迷を続け、多くの企業が赤字決算を発表した。その一方で、楽天などEC事業者の決算は、増収や増益が相次いだ。
検索技術の向上やブロードバンド回線の普及にともなって、誰でもPCや携帯電話を使って、手軽に目当ての商品を最安値で探し出し、注文することができるようになった。2008年末から2009年初にかけては、交通費の節約も考慮に入れて、ECサイト上でお歳暮を購入し、郵送する消費者も目立った。これらの行動は、外に出ずに消費を行うことから、「巣ごもり消費」という言葉で表現された。
NRIでは、この不景気に対する消費者の反応を見るために、2009年2月から8月までの半年間の消費行動が、その前の年に比べてどのように変化したのか、調査を行った。
これによって、消費者行動に関する興味深い実情が浮かび上がってきた。ECを利用する消費者のうち、ヘビーユーザーほど、さらにヘビーユーザーと化している。一方、まだあまりECサイトを使いこなしていないライトユーザーのEC利用は、それほど変化していないEC消費は、二極化の度合いを増していると言える(図表2)。
EC市場は、2002年頃から急激な拡大を始めた。その萌芽期の拡大を支えたのは、ITリテラシーの高い先進ユーザーであった。その後2005年頃からは、一般家庭にも光ファイバーなどのブロードバンド回線が普及したことにともない、40代、50代以上のインターネット後発ユーザーも加わって、さらに拡大してきた。この間の市場規模の年成長率は、2割を超え続けた。この時期、拡大を支えたのは、EC利用者一人ひとりの購入金額よりは、利用人数の拡大であった。
これからの拡大を支えるのは、1人ひとりの利用量の拡大である。ECの世界、Webの世界に依存度を高めていく人がさらに拡大していく。生活のあらゆる側面において、Webがなくてはならない存在となる人々が多く生まれようとしている。

【注】利用金額は2009年2月から7月までの6か月間の平均値。EC利用量の変化はその6か月間の利用量が1年前の同時期と比べて増加したか、減少したかをアンケートで尋ねたもの。
