驚異の成長を見せるECサイト「ZOZOTOWN」ができるまで
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)の運営元であるスタートトゥデイが4月27日に平成22年度3月期通期決算を発表した。(参考情報:決算説明会IR資料)。同決算内容を簡単に紹介すると、売上高は対前年比60.4%増の171億5900万円、営業利益は対前年比47%増の32億3600万円、当期純利益は対前年比46.3%増の18億5900万円という数字を記録。不振にあえぐ百貨店業界を筆頭としたリアル小売とは対照的に、際立った業績を残した。
各社が苦戦を強いられる中、同社が躍進する秘訣はどこにあるのか? 同社の取締役 マーケティング本部長 前原正宏氏(写真右)に、同社のマネタイズエンジンである、ZOZOTOWNの成り立ち、コンセプトなどについて聞いた。
まず、同社の歴史を紐解いてみると、スタートゥデイは1995年にCDとレコードのカタログ通信販売から事業を開始している。元々は「音楽や洋服が好きで“自分たちが好きなもの”を売ろうというスタンスではじめました」とのことだが、大きな転機となったのは「インターネット販売」にニーズを感じた時のようだ。
「自分たちが好きだった音楽を好きな人は、洋服も自分たちと同じような感覚のものが好きでした。当時、私たちが好きだったブランドは東京のみでの展開だったり、店へ行っても常に行列だったりで、窮屈な思いをしていました。そこで、わざわざ東京に行かなくても、気軽に自分たちの好きな洋服を変えるようになる、インターネットを利用した洋服販売にニーズがあると直感的に思ったのです」という。スタートトゥデイがカタログ通販からオンラインショップ化し、アパレルを扱うようになったのが2000年。EC黎明期にいち早く動いたわけだ。
このように、独自の嗅覚でビジネスを展開していった同社だが、ベンチャー黎明期につきものである「商習慣の壁」には何度もぶち当ったようだ。「EC出店店舗の誘致のための営業は困難を極めました。もっとも障害となったのは仕入れ先の確保です。インターネットでモノを販売・購入する(できる)ということを説明するのが大変でした。『試着ができないのにインターネットで洋服は売れないのではないか』と一蹴されることもありました」
このように、困難を極めたEC出店店舗誘致の営業だが、どのような手法で今のように拡大できたのだろうか。
「私たちが営業をかけていたメーカーさんは、商品の卸し先を決める時、各都道府県にある店舗や店員さんを実際に見て、ブランドイメージを保てるかどうかを判断します。そのことを私たちは知っていました。そこで、実際に持参したノートPCでサイトデザインなどを見てもらって、まず“ブランドイメージが崩れない”ということを理解してもらえるようにしました」
そのような営業手法を地道に繰り返し現在の規模となるまでいたったわけだが、「インターネット通販という業界に良いイメージを持っている人がほとんどいなかった」こともあり、仕入れ先を確保する苦労は並大抵ではなかったようだ。