そもそもeMetricsとは?
「Metrics」が「数値」「指標」を意味することから分かるように、eMetricsはデータ解析やアクセス解析をテーマとしたイベントだ。モバイル、ソーシャル、アトリビューション、ビッグデータと、トピックはトレンドによって変わるが、「マーケティング最適化」のために手法やツールをどう活用すべきか、どのように結果を出していくか、についての発表や議論を10年にも渡り重ねてきた。
eMetricsを始めたのは、Web Analytics Association(WAA)の共同創始者でもあるジム・スターン氏(写真右)。米国、ヨーロッパ、オーストラリアの主要都市と、過去10年間、場所を変えて年数回開催されてきた。今回は、初のニューヨーク開催となり、「Data Driven Business Week」という傘の下で、Rising Media社が主催する6つものイベントが同じ時間と会場を共有した。いずれも『データに基づくビジネス最適化(データドリブン)』が共通のテーマだ。
- eMetrics: Marketing Optimization Summit:今回参加したイベント
- GAUGE: Google Analytics Users’ Great Event:Googleアナリティクスに特化したワークショップやノウハウ共有のユーザー会
- Conversion Conference:ECやリード獲得系など、明確なコンバージョンが存在するサイトにおけるA/Bテストや最適化についてのイベント
- IMG: Internet Marketing Conference:インターネットマーケティング全般の初心者向けトレーニング
- Predictive Analytics WORLD:SASやSPSSのような大規模データマイニングについてのイベント
- Text Analytics WORLD:形態素解析などテキスト情報の解析についてのイベント
広がりつつある「アナリティクス」という言葉の意味
eMetricsはマーケティングの中でも「アクセス解析」系のイベントだが、そのフォーカスはより包括的な「アナリティクス」にシフトしてきているようだ。「アナリティクス」といっても広義のアナリティクスであり、Webアナリティクスはそのうちの一部でしかない。特にeBayの発表が印象的だった(参考記事:eBayの成長を支えるデータ解析の舞台裏)。自社で取り組んでいるアナリティクスの種類が紹介されたのだが、そこにWebアナリティクスが含まれていなかった。Webは顧客との接点としてのインターフェイスでしかないため、Webで取得したデータを誰が何のために使うのか、という観点でもっと細分化されていくのかもしれない。
eMetricsと同時に開催されたイベントのうち、「Predictive Analytics WORLD」と「Text Analytics WORLD」の2つのイベント名に「アナリティクス」という言葉が含まれている。前者の「プレディクティブ・アナリティクス」は、従来「データマイニング」と呼ばれていた領域であり、将来を予測するという点を強調して、最近は「プレディクティブ」という名称が使われるようになってきたそうだ。同様に「テキストマイニング」を「テキスト・アナリティクス」と呼ぶのだろう。
同じ内容を指すのに時代によって名称を変えるのはどうかと思うものの、接点の多い類似領域を集めて整合性をとるためなら、意義がないこともない。アクセス解析は過去の出来事を集計して理解するだけでなく、将来の予測による意思決定の支援にも広がっていく。データマイニングでは、Webから得られるデータも扱うことが増えている。テキストマイニングは、既にソーシャル系の解析で重要度を増しつつある。
Webアナリティクスについては、「アクセス解析」や「ログ分析」「ウェブ分析」など、日本では用語が揺らいでいるだけでなく、狭義の定義になっている感がある。より広い視野を踏まえて、呼称をそろそろ見直した方が良いのではないか?
「ログ」は本来システムの動作を記録するための記録データであり、当初はそのデータを訪問者の行動分析のために流用していたという歴史的な経緯があるが、現在はビーコン型が主流であり、「ログ分析」「ログ解析」と呼ぶのは限定的すぎる。また、「アクセス解析」だと、何へのアクセスを分析・解析するのかを限定できていない。となると、残る選択肢は「ウェブ解析」「ウェブ分析」だが、データマイニングやテキストマイニングまでも視野に入れるなら、より数学的な「ウェブ解析」が適しているように思える。