極端なことをいえば、今後はコードが書けなければ、オンラインマーケティングに手を出せないような状況になるのではないかとさえ思えてくる。少なくとも個々のスタッフが自らの言葉で情報発信できることが要請されるのは時間の問題かもしれない。
これまで社内調整やアウトソース先の企業とのやりとりに費やしていた時間は、すべてスタッフ個々人が独立しての情報発信や外部とのコミュニケーションのために置き換えていかざるを得ないだろう。
本稿では、いったい何がそういった変化を要請しているのか? また、これから私たちはどんな準備をしていかなくてはならないのか? 今回はそうした視点から今後のオンラインマーケティングに関して考察する。
指数関数的に増加する情報
オンラインマーケティングに変化をもたらす最大の要因は、Web上の情報量の劇的な増加です。
情報量の増加の要因は複数考えられます。1つにはブログやソーシャル・ネットワークに代表される情報発信ツールの低価格化~無料化、一般への普及があげられるでしょう。こうしたツールはこれまで情報を一方的に受け取る側でしかなかった一般ユーザーやそれまでホームページを持たなかった中小企業などにも情報発信の機会を与え、いまや「総表現社会」という言葉が生まれるほど、情報発信を行うプレイヤーの数は増加しています。
さらにブロガーたちはニュースや他のブロガーたちの発信する情報を引用しながら自身の意見を述べた二次的な情報を生成し、情報の複利的な生産が進みます。また、ブログや検索サイトなどから自動生成されるRSS/Atom Feed がさらにこうした状況に拍車をかけているといえるでしょう。他にも様々な要因が重なり合うことでWeb上の情報量はこれまでをはるかに超えるスピード感で、指数関数的 な増加を見せているのです。
現在の情報量の増加速度は、感覚的にとらえられる増加速度をはるかに超えています。指数関数的な増加とは現在の値がそれ以前のすべての値の合計よりも常に大きくなるような増加です(16は1+2+4+8よりも大きく、1028は1+2+4+8+16+32+64+128+256+512よりも大きい)。今、現在、Googleには約80億のURLがインデックスされていると公表されていますが、この数がさらに指数関数的に増え続けることになるのです【図1】。
独立、分散した形で多様な情報発信をしよう!
当然ながら、こうしたスピード感で増え続ける情報量に対しては、いかなる市場の拡大も太刀打ちできません。おのずとひとりの顧客を獲得するために必要な情報量は、これまでとは比較にならないほど膨らむことになるでしょう。
もちろん、こうした情報量増加の影響はすべての企業に平均的に負担されるわけではありません。他社に比べれば比較的発信量の増加も少なくて済む企業もあれば、どんな大量の情報を発信しても市場から見向きもされない不幸な企業も出てくるといったバラつきは生じてしまうでしょう。しかし、ただ1つ言えるとすれば、いかなる企業といえども、これまで以上に積極的にコミュニケーションを行っていく姿勢をみせなければ、簡単に市場から忘れ去られてしまう危険性を持った時代が訪れようとしているともいえます。
こうした時代の流れの中で、マーケティング的にみれば、あまり意味をなさない社内調整のためだけの内部的なやりとりに時間を費やしていては、あっという間に外部は自社以外の情報で溢れかえってしまうことになります。今後必要なのは調整役に何人ものメンバーを揃えることではなく、各自が独立、分散した形で多様な情報発信ができる人材とそれを実現するマーケティング体制であるといえるでしょう。そこでは、自らコード化【図:2】ができ、スピーディーに情報発信できる人の数は、多ければ多いほどよいのではないかと思います。