恥の多い生涯を送って来ました――太宰治さえも出だしに気合いを入れた
「コピーは示現(じげん)流のごとく、出だしに魂を込めよ」という格言があ……いや、いま思いついた。示現流、時代劇や歴史ものに詳しい人なら耳にしたことがあるかもしれない。江戸時代の初期、薩摩(今の鹿児島県)で生まれた剣術である。数ある剣術の中でもユニークな特徴を持っている。
ひと言で言うなら、初太刀ですべてを決する。最初の一撃で仕留めることを旨としている。二の太刀はもってのほかというもので、幕末、新撰組の近藤勇は「薩摩ポウとやるときは初太刀を外せ」と隊士に注意を呼びかけていたという。ああ、コピーと同じだなと思ったものである。すべてはイントロで決まる。
コピーにおいて、初太刀というとキャッチフレーズだが、リードコピー、ボディコピーといったちょい長めのコピーでは第一センテンスである。つまり出だしの文章だ。話をどのように始めるか、どのようなセンテンスではじめるかで読む、読まないが決まると言っていい。しかし、いざ書こうとすると悩むものである。
ホラーやSF小説で知られるベストセラー作家、ディーン・R・クンツは「ベストセラー小説の書き方」の中で最初の1ページ、ファーストシーンが勝負だという。そこで読み手の心をつかむことができなければその本は棚に戻されるだろうとアドバイスをしている。
たしかに小説の冒頭にはその先を読みたくなるような表現が多い。たとえば太宰治、出だしの上手い作家だと思う。話の先を知りたくなるような表現をいくつか見てみよう。
- メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。(走れメロス)
- 恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。(「人間失格」の第一の手記)
- おわかれ致します。あなたは、嘘うそばかりついていました。(きりぎりす)
- 菊子さん。恥をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。(恥)
コピーに比べて読んでもらえそうな小説でさえ、こうした読まれる努力をしている。ましてや、気まぐれな読み手が相手のWebでは、それなりの初太刀で切り込まなければいけない。
そうは言っても、太宰治のような書き出しは誰でも書けるわけではないし、コピーにそこまでのクオリティは必要ない。それに幸いなことにコピーの場合、良く使われるパターンがある。書き出しに悩む人はそれらを真似したり応用して書くのが近道だ。
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