広める価値のあるアイデアを共有する場
TED(テッド)は、テクノロジー・エンターテインメント・デザインをキーワードに、“Ideas Worth sprading”(世の中に広める価値のあるアイデア)を求めて活動するグループ。アメリカのカリフォルニア州ロングビーチで年1回開催されているTED Conference(テッド・カンファレンス)の主催を中心に、さまざまな活動を行なっている。
今回開催されたTEDxTokyoは、TEDの精神を引き継ぎ生まれたコミュニティーであるTEDx(テデックス)が運営主体となったイベントだ。朝9時からテクノロジー・エンターテインメント・デザインというジャンルの中で活躍する35名のパフォーマーがプレゼンテーションを行った。本記事では特に印象的だったプレゼンテーションを紹介する。
“データ”ではなく“しりとり”
印象的なプレゼンテーションを行った一人が、バンダイで現在はカプセル玩具の企画開発を担当する高橋晋平氏だ。高橋氏は見たこともない新しいおもちゃを作りたいという夢を持って9年前に入社。高橋氏が開発した「∞(むげん)にできるシリーズ」(∞プチプチ、∞エダマメ)は、2008年の第1回日本おもちゃ大賞「トレンディ・トイ」部門大賞に輝き異例の大ヒットを記録しているが、そのきっかけは“しりとり”にあったという。プレゼンテーションの冒頭、高橋氏は入社したばかりの状況について次のように教えてくれた。
「新しいおもちゃを作りたいという夢を持って入社した私は、毎日たくさんの新しいアイデアを考えて上司に提出していました。すると、必ずこう言われました。『これが売れる根拠はあるのか? 市場データを分析して企画しなさい』。そのため、市場データを見ながら考えるようにしたのですが、新しいアイデアがまったく出てこなくなったのです」
出てくるアイデアは既にあるようなアイデアばかり。市場データを分析して考えるようになったことで、アイデアの幅が狭くなり、考えるのが嫌になり「結果的にこんなに痩せてしまいました(笑)。同じような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?」(高橋氏)と会場に問いかけた。
そこで、高橋氏がとった行動は「データを捨てる」こと。新しいおもちゃを作ることが自分の夢であることに改めて気づき、別の方法でアイデアを考えるようになったという。その方法が、しりとりを使った発想法だった。
「とにかく、くだらなくてもよいからアイデアをたくさん出す方法を考えました。そこで思いついたのが、“しりとり”を使った発想法です」