激変するマーケティング環境をキャッチ
スマートフォン・タブレットの急速な普及、ネットの浸透、ソーシャルメディアの台頭による生活者の行動多様化、マーケティング領域へのデータ活用推進……企業を取り巻くマーケティング環境は劇的に変化している。
それと同時進行で顧客行動にも大きな変化が起きている。いまや多くのユーザーは、企業の一方的な宣伝情報だけでなく、ソーシャルメディアや価格比較サイトなどの口コミ情報を重視し、さまざまなチャネルやデバイスを経由してアクセスをしてくる。このような顧客行動の変化に対し企業は対応を迫られており、その手段の1つとしてマーケティング領域でのテクノロジー活用が求められている状況だ。
では、そのような新しい企業戦略へ転換するためには具体的に何からはじめ、どのような壁を乗り越え、何を実現しなければならないのか。IBMが運営するIBMオンライン・ユニバーシティーでは、「アドテクノロジー」「顧客中心」「ペルソナ・アプローチ」といった新たな戦略を実現するためのヒントになるような動画や、さらには3D広告などのデジタル広告の未来像が、株式会社マイクロアドの渡辺健太郎氏らによって解説されている。本記事ではその中の動画から特にオススメの動画を編集部がチョイス。見どころをダイジェストで紹介していく。
「共有」「ターゲティング」「3D」……商品購入のプロセスを近未来形へ近づけるマーケティングテクノロジー
まず、オススメしたいのが「TOP企業に聞く!デジタルを活用したマーケティング最前線」だ。この動画ではデジタル広告分野の中で、特に注目の領域であるアドテクノロジーのトレンドや3D広告などのデジタル広告の未来像も提示されている。
動画はまず環境変化の状況把握からはじまる。商品選択において、企業が提供する情報に対する信用度は2割程度にまで下がっているとも言われ、他社製品との比較や使用感など、気になる商品に関する情報は、友人や口コミサイト経由で集めるという人が主流となっている。
オフィス、自宅、出張中など、「いつでも、どこでも、欲しいときに欲しい情報を最適な方法で手に入れたい」一方で、個々人によって手に入れたいタイミングや必要とする情報は大きく異なる。これらの要求を満たすには、一人ひとりの客を「個客」として捉え、それぞれのニーズに合わせた適切なコミュニケーションが必要だ。
コミュニケーションの1つとして重要視されるのがWebメディア、SNSなどデジタルを活用したマーケティングである。インターネット広告費はテレビに次ぐ2位で、成長率107%、6,629億円の市場が広がっている。中でもバナー広告を代表とするディスプレイ広告はここ数年で大きな進化を遂げた。一般的だった、広告主が広告枠を一定期間購入するスタイルから、Webサイトに訪問してくる顧客に合わせて適切な広告を0.1秒以内で入札、配信する「運用型広告」と呼ばれるスタイルへと変化し、「個客」のニーズに合わせた広告配信が可能となっている。
「運用型広告」手法を使えば、広告主がそれぞれのターゲットに応じて広告の予算配分を行い、最適な運用を手動あるいは自動でやりながら、より広告効果を高める配信ができる。そして、このような手法の浸透から広告枠の販売方法についても変化が起きている。具体的には、昔ながらの「枠売り」ではなく自社のターゲットにあった広告枠だけを購入することができる「バラ売り」の世界が広まっているという。
動画内で渡辺氏はこの変化について、「『枠売り』の世界を牛肉で例えるならこれまでは牛を一頭まるごと購入していたようなものです。本当はいらない部位もあるのに購入せざるを得なかった。これに対して『バラ売り』の世界は、必要な部位を必要なだけ購入することができるようになると言えます」と表現し、これからの広告枠販売の潮流について端的に示している。
1つの広告枠にはいろいろなユーザーが訪れるが、販売する商品に関心がある人だけに広告を配信すれば購入確率が上がるのは自明の理だ。仮にサッカーの観戦ペアチケットを販売する場合、「サッカー少年の父」にターゲットを絞ることができれば広告効果は高い。
配信ターゲットを絞るためには、Web上で「サッカーのサイトを見ている」、加えて「育児のサイトを見ている」など、インターネットユーザーがどういうサイトを見ているか、どういう広告に反応したかなど膨大なデータを解析することが必要になる。テクノロジーの進化によってユーザーニーズの推測はここまでできるようになっている。
運用型広告を使った最適な広告配信は、それだけにとどまらない。夏場の気温が高い時だけ、アイスクリームの広告を出す、あるいは、サッカー日本代表のチームが勝った瞬間にビール会社の広告が出るなど、リアルタイムな状況に合わせた配信も可能だ。
さらに近未来――スマホを使いFacebookなどで情報収集。改札機でスマホをタッチすると、スマホの情報から推測される顧客が必要としている広告だけが、駅ホームの電子看板、デジタルサイネージに現れる世界がやってくるかもしれない。妻の誕生日前には、夫宛に妻のお気に入りブランドの商品情報が届けられることもあるだろう。デジタルサイネージのその先は、「3D広告」だ。分譲マンションで、街並みや間取りを立体的に見る、あるいは、ハンドバッグにどのくらいのものが入るか、商品を立体的に360度見られるようにすることで、より詳細な情報を伝えることができるようになる。動画後半で紹介されているデジタル広告の近未来像は、広告・マーケティング関係者ならわくわくできる内容なので、ぜひ視聴いただきたい。