脅威!?攻めの組織に舵取りを始めたIT部門
── それでは顧客中心の企業戦略を実現するために、現在のIT部門とマーケティング部門に求められる役割、果たすべき役割とは、どのようなものなのでしょうか。
大津:クラウドサービスの利用により、多くの場面で“持たざるIT”を実現することができるようになっています。いうまでもなく、企業はインフラを持たない方が強い。このままの運用中心のITでは、システム運用は自動化、あるいはアウトソース化されて、将来IT部門の仕事がなくなることは明らかです。そこで部門として考えなければならないことが、インフラの保守業務から抜け出して経営に貢献する“攻めのIT”を目指すことです。

押久保:マーケティング部門では、スピード重視の“個客”対応ですね。マーケティング施策が、従来のマス広告からWebやスマートフォンを利用したデジタルマーケティングへと変わっていく中で、顧客の一人ひとりに的確に、迅速にアプローチしていくことが求められています。
── そうした現在の役割を果たすために、今後両部門にはどのような取り組みが必要となってくるのでしょうか?
大津:新しいテクノロジーを日々、積極的にキャッチアップして、使えるものはどんどん取り込んでいくことではないでしょうか? ただし、ITはいわば道具に過ぎません。業務部門からすれば、使うことさえできればいいはずです。IT部門は、いかにユーザーに意識させることなく、新たな仕組みを提供していくかに配慮する必要があります。
押久保:そう言っていただけるとありがたいですね。勝ち組と言われている企業は、顧客データを発想の起点にして、自社のビジネスを組み替え、データ活用のPDCAサイクルを効率的に回すためにITをうまく活用しています。
そのためにはITと連携し、スピード重視の“個客”対応を実現することで、具体的な成果を上げることが重要です。もちろん、人力では実現することができません。この点はIT部門にサポートしていただくことが前提になってきますね。
大津:IT部門としても、より経営企画に近いところで業務部門と一緒にビジネス課題に取り組み、その課題を解決するためのIT活用を提案していくことも必要です。そうすることで、ITを利用する知識を持たないマーケティング部門のリテラシーを高めていく効果もあると思います。
どのようなテクノロジーがあり、どう使えば良いかをマーケターも理解できれば、スムーズに仕事が運ぶはずです。一方、今のIT部門が見ている顧客は業務部門で、本当の顧客はその先にいるというのが現状です。
しかし顧客中心のアプローチでは、IT部門も直接本来の顧客と接し、彼らの課題を解決する、あるいは満足度を高めるためのシステムを提案する必要があります。そのためにはマインドチェンジをして、業務部門と一緒になって顧客の課題に取り組むという姿勢が求められるのだと実感しています。
押久保:そうなるとマーケターにとってはある意味脅威ですね(笑)。仮にテクノロジーに詳しいIT部門の方々がマーケティングの視点まで身に付けたら、今のマーケターの役割を担えるかもしれません。また、IT活用の基盤が整えば、現在、人手で行っているような業務をオートメーション化し効率的に回す環境ができるので、本来マーケターが行うべき施策プランニングなどの業務に多くの時間を割けるようになると思います。