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ITmediaエンタープライズ×MarkeZine特別対談!マーケティング部門とIT部門の協業はなぜうまくいかないのか?

 相次ぐ競合参入とスマート化する消費者により、企業にはこれまでにないほどのスピードや変化対応力が求められている。もはや単一部門で対応できる課題は稀であり、顧客視点に立った部門連携で、企業は価値を提供していかなければならない。ところが、競争力の要となるべきマーケティング部門とIT部門の協業が、ちぐはぐとなるケースが後を絶たない。日本IBMが、IT部門の代弁者としてITmediaエンタープライズ編集長の大津心氏と、マーケティング部門の代弁者としてMarkeZine編集長の押久保剛に、マーケティングとITの協業のあるべき姿を聞いた。

この記事は、マーケティング部門へのメッセージをより多く掲載できるよう編集しています。

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ITmediaエンタープライズ編集長の大津 心氏(写真左)
MarkeZine編集長の押久保 剛(写真右)
ITmediaエンタープライズ編集長の大津心氏(写真左)てMarkeZine編集長の押久保剛氏(写真右)

売り上げ拡大の先にある、データ活用の新たな目的

── スマートフォンやSNSの普及は、顧客が積極的に情報を収集し、購買活動を行うことを可能にしました。このような顧客の変化に伴って、企業の取るべき戦略も必然的に変わっていくと思います。企業における現状と、今後とるべき戦略についてお話しいただけますでしょうか?

大津:現状は、顧客の声を売上拡大などの改善だけに使われている状況ですね。しかし、見えているものの改善だけでなく、見えていないものを生み出すことが、今後は重要になってくると思います。

押久保:顧客を中心に考えることの大切さは昔から言われていますが、昔と大きく異なるのは自分たちの顧客がどこにいるのかが捉えづらくなっていることです。環境が大きく変わる中でマーケターが、この施策は反応が良い、あるいは悪いといった結果だけに関心を払っていると、どうしても効率化やコスト削減に偏りがちになってしまいます。

 そうではなく、新たな潜在顧客を自社に振り向かせ、自社のマーケットそのものを拡大していくためには、顧客データを活用して顧客のインサイトを発見するような循環を考えることも必要だと感じます。

大津:“ファーストペンギン”(※)つまり新しい市場に最初に飛び込むために、顧客の声を聴くのですね。これこそ今求められていることではないでしょうか。IT部門はビッグデータの活用という形でマーケティング部門に協力できると思います。ビッグデータ活用の環境が整ってきた現在、顧客の声は、単なるコスト削減や利益向上のためだけでなく、新しい市場開拓への第一歩を踏み出すために活用する、という考え方の方が現実に合っていますよね。

新しい市場に一番初めに飛び込んだ企業が、一番おいしい思いができるという例え。最初に飛び込んだペンギンは、サメなどの強い生き物に食べられてしまうリスクがある一方、餌となる魚も豊富にあるためたくさんの魚を食べることができる。

押久保:データ活用の観点では、IT部門の協力は本当にありがたいですね。このような協業ができると、企業はファーストペンギンとなるために、顧客の声をビジネス活動の中心に据えた、顧客中心の戦略として生かせるはずです。コスト削減から新市場開拓にシフトチェンジしてデータを活用する。今の時代、まさに企業に求められていることではないでしょうか。

脅威!?攻めの組織に舵取りを始めたIT部門

── それでは顧客中心の企業戦略を実現するために、現在のIT部門とマーケティング部門に求められる役割、果たすべき役割とは、どのようなものなのでしょうか。

大津:クラウドサービスの利用により、多くの場面で“持たざるIT”を実現することができるようになっています。いうまでもなく、企業はインフラを持たない方が強い。このままの運用中心のITでは、システム運用は自動化、あるいはアウトソース化されて、将来IT部門の仕事がなくなることは明らかです。そこで部門として考えなければならないことが、インフラの保守業務から抜け出して経営に貢献する“攻めのIT”を目指すことです。

押久保:マーケティング部門では、スピード重視の“個客”対応ですね。マーケティング施策が、従来のマス広告からWebやスマートフォンを利用したデジタルマーケティングへと変わっていく中で、顧客の一人ひとりに的確に、迅速にアプローチしていくことが求められています。

── そうした現在の役割を果たすために、今後両部門にはどのような取り組みが必要となってくるのでしょうか?

大津:新しいテクノロジーを日々、積極的にキャッチアップして、使えるものはどんどん取り込んでいくことではないでしょうか? ただし、ITはいわば道具に過ぎません。業務部門からすれば、使うことさえできればいいはずです。IT部門は、いかにユーザーに意識させることなく、新たな仕組みを提供していくかに配慮する必要があります。

押久保:そう言っていただけるとありがたいですね。勝ち組と言われている企業は、顧客データを発想の起点にして、自社のビジネスを組み替え、データ活用のPDCAサイクルを効率的に回すためにITをうまく活用しています。

 そのためにはITと連携し、スピード重視の“個客”対応を実現することで、具体的な成果を上げることが重要です。もちろん、人力では実現することができません。この点はIT部門にサポートしていただくことが前提になってきますね。

大津:IT部門としても、より経営企画に近いところで業務部門と一緒にビジネス課題に取り組み、その課題を解決するためのIT活用を提案していくことも必要です。そうすることで、ITを利用する知識を持たないマーケティング部門のリテラシーを高めていく効果もあると思います。

 どのようなテクノロジーがあり、どう使えば良いかをマーケターも理解できれば、スムーズに仕事が運ぶはずです。一方、今のIT部門が見ている顧客は業務部門で、本当の顧客はその先にいるというのが現状です。

 しかし顧客中心のアプローチでは、IT部門も直接本来の顧客と接し、彼らの課題を解決する、あるいは満足度を高めるためのシステムを提案する必要があります。そのためにはマインドチェンジをして、業務部門と一緒になって顧客の課題に取り組むという姿勢が求められるのだと実感しています。

押久保:そうなるとマーケターにとってはある意味脅威ですね(笑)。仮にテクノロジーに詳しいIT部門の方々がマーケティングの視点まで身に付けたら、今のマーケターの役割を担えるかもしれません。また、IT活用の基盤が整えば、現在、人手で行っているような業務をオートメーション化し効率的に回す環境ができるので、本来マーケターが行うべき施策プランニングなどの業務に多くの時間を割けるようになると思います。

「ITを理解しないマーケティング部門 売上を作る観点のないIT部門

── 実際の現場では、両部門の連携がうまく図られていないという話をよく聞きます。なぜそのような状況が生まれるのでしょうか。

大津:IT部門の立場から見れば、経営層から求められている最大の要件が、システムを落とさないこと、かつITコストを抑えることだという背景が挙げられます。極端な話、素晴らしいITシステムを業務部門に提案して売り上げが倍になったとしても、現状ではIT部門は評価されません。その間にシステムが数時間でも落ちてしまったら、それだけで責任を追及される可能性もある。根深いコスト意識も同様です。

 常に厳しいKPIと向き合っていますので、マーケティング部門と連携しようにもそのための予算がなく、やりたくてもやれないという状況です。だから、業務部門を積極的にサポートしにくい。今のIT部門は内向きで、外向きの業務部門と向いている方向が違うのです。

押久保:そうですね。互いに向いている方向が異なるので業務内容の理解や配慮がなく、いがみ合ってしまうということが多いと感じます。コミュニケーションが明らかに不足している印象です。マーケティング部門が求められているのは売上向上で、そのためにITが必須なのは理解しています。しかし、難しいと敬遠してしまい、きちんと理解しないままIT部門に依頼してしまっているのが問題です。

大津:マーケティング部門に「これできますか?」と依頼されても、「無理です」と即答で断るケースが至る所で見られます。“攻めのIT”ということで、IT部門も売り上げに貢献したいという思いはあるものの、現在の評価軸がある以上、視点を内向きから外向きに変えることはなかなか難しい。

 ファーストペンギンを一緒に目指したいと思いながらも、なかなか実行できないジレンマがあります。例えば、各業務部門の下にIT部門を配置したり、IT部門のKPIを業務部門と同じく、売り上げに寄せたりするなど、評価軸を変えられたらいいですよね。これは現場レベルで解決できる課題ではないので、いかにその重要性を経営層に伝えるかがポイントでしょう。

顧客中心のシナリオを軸にしたコラボで生き残れ!

── よりスムーズな連携を図ることが、会社全体の業績アップにも繋がると思いますが、自部門を相手に理解してもらうために、どんな取り組みが必要だと思われますか。

大津: 両部門が同じ方向を向くために、顧客シナリオ、あるいは顧客体験といったものをマーケティング部門と一緒に作ろうとすることは非常に有効だと思います。顧客を中心に据えて、彼らの要求をいかに吸い上げられるか。その課題に対し、まずはマーケティング部門と一緒に取り組んで、顧客により高い価値を提供できれば、会社全体の価値が上がるからです。

押久保:そうですね。同じ方向を見ていると、コミュニケーションも図りやすく、相互理解を深めていけます。マーケター側も、そのテクノロジーを使えばどんなことができるのか、あるいはデータを蓄積することで何ができるようになるのかといった基本的な知識がなければ、必要なシステムを作るだけでも多くの時間がかかってしまい、さらには効果的な活用もままならない。

 そのことは十分肝に銘じておくべきだと思います。もちろんマーケティング部門単独では、やはり難しいでしょう。ここはIT部門の方と協業して進めたいですね。

大津:マーケティング部門との共通言語ができるのはいいですね。実はIT部門が業務用語に慣れていないために、マーケティング部門の要件などを聞き取れないことも多いんです。これもコミュニケーションの問題で、共通言語ができて相互理解が深まれば解消していくはずです。また、基本業務が保守運用の人たちからすれば、顧客中心シナリオを軸にした攻めの施策は大きなモチベーションにもなります。

 現在は両部門の間には壁があり、経営視点でなければなかなか解決しにくい問題だと思いますが、顧客を中心に据えた現場レベルでの取り組みは、その壁を壊す一つの突破口になるのではないでしょうか。厳しい競争を生き抜く原動力となり、企業活動で潜在的な顧客を見つけ出せると思います。

── 企業が勝ち残るためには、顧客中心のシナリオを企業全体で取り組むことが必要だということですね。日本IBMでも、企業戦略やサービス戦略等を具現化し、関係者全員で共有するためのコンサルティングサービス「顧客体験シナリオ・アプローチ・サービス」で、顧客中心の一貫したサービス提供の実現までをご支援していきたいと思います。

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日本IBM(ニホンアイ・ビー・エム)

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/28 12:39 https://markezine.jp/article/detail/20512