空いたインプレッションの収益化こそ重要
高田氏は複数商材を運用することについて「RTB広告のみを運用するときに比べて、RTB広告の収益性を結果的に高める効果がある」と解説する。Kauliが提供するSSPは、アドネットワークから提示される単価よりも高い取引が見込める場合のみRTB広告が配信される。複数商材を運用するとフロアプライスが押し上げられ、おのずとRTB広告で取引される単価も押し上げられることになるからだ。これはKauli独自の仕組みであり、同社のデータ分析力の表れとも言えるだろう。
「よく媒体社側からRTB広告だけでの収益ではダメなのか、SSP導入=RTB広告の収益ではないのか、と聞かれます。ですが、やはりRTB広告だけでは収益を最大化したことにはならないと考えています。冒頭に説明した通り、RTB広告では広告主が都合のいいインプレッションしか買わない。だから、RTB広告でインプレッションを高く売ることはもちろん大事ですが、“それ以外のインプレッションもしっかり収益化できていますか?”という点を考えていただきたいのです」
そのためには、コンサルタントが入って緻密な運用計画を立てるもよし、Kauliのようなテクノロジーベースで管理できるシステムを導入するもよし、と高田氏。空いたインプレッションのマネタイズこそ重要だと強調する。
媒体社とともに、広告の価値の向上に取り組む
また、継続的な収益化のポイントのひとつとして、高田氏は運用リソースへの注目を挙げる。いくら広告販売量が増えても、タグの貼り替えなどの手間や制作会社への費用がそれを上回れば、総合的な収益は下がってしまう。
「したがって、収益を上げることだけに熱心にならずに、手間や運用を最小限にすることにも注力して、上がった収益をいかに確保するかを考えていただきたい。広告販売量を増やしながら手間を減らして、浮いた時間をほかのクリエイティブなことに使えるようにするのが重要です」
RTB広告は媒体社のインプレッションを自動かつ高単価に販売できる仕組みだが、「価格決定の主導権が広告主側にあるので、必ず値崩れが起きます。そのため、当社では媒体社側の視点で、それを回避する仕組みづくりに取り組んでいます」と高田氏は語る。例えば同社で実験的に行っている取り組みとして、入札状況に応じてフロアプライスを上げる試みが紹介された。広告主の入札が多い枠のフロアプライスを引き上げたところ、販売価格が徐々に上向いてきたという。
「SSPをまだ導入していない媒体社は、自社にとって好条件のインプレッションだけを買っていく広告主に対する策として、すぐにSSPを導入する必要があると思います。手間を減らし、媒体社の皆さんとともに広告の価値を向上させたいと考えています」と、高田氏は講演を結んだ。