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大元隆志のマーケター訪問記

大人がワクワクできるモノ作りに携わりたい/ちょっと先の未来を体感できる『マイ3Dプリンター』企画秘話

 デアゴスティーニという企業をご存じだろうか。特定のテーマについて完成された一つの知識体系を毎号分割で刊行し、全巻揃えれば一冊の専門誌になるという「パートワーク」で有名な出版社だ。そんな同社が2015年に仕掛ける商品、週刊『マイ3Dプリンター』のプロダクトマネージャーであるデアゴスティーニ・ジャパンの鎌田奈那美さんにお話をうかがった。

「ちょっと先の未来を体感できるコンテンツを」そんな思いから実現した週刊『マイ3Dプリンター』の企画

 デアゴスティーニ・ジャパンはこれまで、城や船といった模型を作るシリーズの商品を数多く刊行してきたが、最近ではロボットのような先端技術を駆使したシリーズの商品も出版している。特に2013年2月に刊行したフレンドリーロボット「ロビ」を作る週刊『ロビ』はネットでも話題となり、再刊行をしたほどだ。

 そんな同社が2015年に出版するシリーズが“3Dプリンター”だ。3Dプリンターを使ってスマホケースやフィギュアを作るのは珍しいことではなくなってきたが、3Dプリンターそのものを自作しようという試みは斬新だ。また組みたてながら、その使いこなし方まで身に付く工夫が盛り込まれているという。今回は、この週刊『マイ3Dプリンター』のプロダクトマネージャーである同社 マーケティング部 プロダクトマネジャー 鎌田奈那美さんにお話をうかがった。

壁にはずらっと、これまで刊行してきたシリーズがかざってありました!
(左)伊藤忠テクノソリューションズ ITビジネスアナリスト 大元隆志氏
(右)デアゴスティーニ・ジャパン マーケティング部 プロダクトマネジャー 鎌田奈那美さん

――週刊『マイ3Dプリンター』の特徴はどういったところにあるのでしょうか。

鎌田:3Dプリンターについて楽しく学べる、そして作る楽しみを体験できるところです。3Dプリンターを買いたいだけなら完成品を購入してもらえればいいと思うのですが、それだと3Dモデリングの知識は別途学習する必要があります。週刊『マイ3Dプリンター』は完成するまでに、3Dプリンターの基本構造と、3Dデータの創り方(モデリング)の知識、3Dプリンター活用方法までじっくり学びながら制作を進めることができます。全55号を読み終わった時には、読者の方自身が自分で好きなデザインを形にできるようになっていただくのがゴールですね。

――非常に興味深い商品ですよね。でも、3Dプリンター自体を自分で組み立てて作るとは、想像以上に難しそうですが、なぜこの企画をやろうと思ったのでしょうか。

鎌田:もともと弊社のパートワークは「ここでしか手に入らないものを提供する価値」というコンセプトに基づき、コンテンツを提供してきました。例えば、車や船をテーマにすることも多いのですが、普通のお店では手に入らないスケールにするとかですね。

つぶらな瞳がかわいいロビくん◎

鎌田:そういうコンセプトなので、時折ちょっと変わった「冒険」に出る時があります。その一つが2年前に発売した週刊『ロビ』で、創刊号で10万部を超えるヒットになりました。イタリア、香港、台湾でも発売され、日本から世界へ出て行くコンテンツになりました。ロビがヒットした理由を弊社で分析した結果、「ちょっと先の未来を体感したい」というニーズがあるのではという仮説に行きつきました。そこで「ちょっと先の未来」を体感できるコンテンツを増やしたいな、ということになったのです。ロボット以外のテーマを考えていた時に、3Dプリンターも候補に上がったという流れです。

――確かにロボットや3Dプリンターの話題はたえませんし、私自身もすごく欲しいです。とはいえ、プラモデル組み立てるのとレベルが違うじゃないですか。実際に自分で挑戦するのはハードル高いように感じるのですが、企画はすんなり通ったのでしょうか。

鎌田:簡単ではなかったですね(笑)。実は、週刊『マイ3Dプリンター』の企画が出てきたのは2年半ほど前のことです。ロビよりも前から、企画自体は上がっていました。しかし当時はまだ3Dプリンターの認知自体がそれほどでもなく、また市場が成り立つのか、そもそも3Dプリンターは家電のような物なのでそれを組み立てたいというニーズがあるのかというような議論もあり、一旦は立ち消えになっていました。

 ただ、ロビのヒットもあり「ちょっと先の未来」で作りたい物について1年半ほど前に定量的なリサーチを行ったところ、3Dプリンターを希望する方が断トツでした。それも、20~60代までまんべんなく。潜在ニーズはある程度存在すると確認できたので、企画を推進する方向に動き出しました。

 次に、組み立てるハードルをどこまで下げられるかを考えました。こだわったのはドライバーとレンチだけで作れること。一冊の作業時間は10~15分くらいでできること。監修メーカさんや有識者の方々の協力によって、このハードルもクリアーできることがわかりました。ニーズがあることの数字的な裏付けを取り、一般読者でも作れることに目途がついたので、先行販売を行いました。この先行販売が品切れになるほどの反響を呼び、手応えを感じました。

――なるほど。とはいえ、3Dプリンターが欲しい人なら、完成品を買った方が良いと思う人も多いのではと思いますが、あえて自分で組み立てることのメリットは何でしょうか?

鎌田:そもそも弊社の組み立てシリーズの商品自体が、自分で組み立てること自体に価値を感じていただける方を対象としていますからね(笑)。まず、3Dプリンターを今買うと10万円前後はします。マイ3Dプリンターの場合は創刊号は999円で、次号からは1,999円。初回の購入ハードルを下げることができます。

 3Dプリンターは買って終わりではありません。買った後に何を作るかが重要なのです。その買った後の環境を作ることが、実は大変なのです。自分で作ることで動作原理を基礎から学ぶことができ、モデリングツールや印刷用の樹脂素材(フィラメント)も購読している間にそろいます。買ったけれど何から始めれば良いのかわからない、という状態にはなりません。

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この記事の著者

大元 隆志(オオモト タカシ)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーションビジネス推進部 エキスパートエンジニア
国士舘大学 経営学部 非常勤講師

通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。現在はCASBソリューションのセールス開発・プリセールスを担当する一方で、国士舘大学 経営学部にて学生向けに企業におけるクラウド、モバイル利活用について講座を担当する。最新のIT動向や技術動向分析が高く評価され、ヤフーニュース、IT Leaders、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多くの記事を執筆。所...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/12/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/21566

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