3,000人のマーケターがラスベガスに集結
2015年3月30日~4月2日、米国ラスベガスにてオラクル主催のイベント「Modern Marketing Experience 2015」が開催された。同イベントは、オラクルがEloqua、Responsys、BlueKai、Compendium、などのマーケティングソリューションを買収し、「Oracle Marketing Cloud」として展開を開始後、北米では初となる、マーケティングに特化した大規模イベントだ。世界中からおよそ3,000人近くのマーケターが参加し、最新のテクノロジーや成功事例、知見が共有された。
今回は、キーノートセッションを中心に紹介し、オラクルが提唱する「モダン・マーケター」のあるべき姿を考えたい。
マーケターは顧客と経営層の板挟みになっている
3月31日のキーノートにはオラクル・マーケティング・クラウド担当ゼネラルマネジャー 兼 シニア・バイスプレジデント ケビン・エイクロイド氏が登壇。マーケターが抱える課題と、解決すべき道筋が語られた。
現在、マーケターは2種類の要求に応えなければいけない。一つはビジネスの成果だ。CEOやCFOなどの経営層(ウォールストリートと表現)は、マーケターにROIや売上向上といった企業や事業への貢献を求めている。もう一つが、顧客や見込み客といった消費者(メインストリートと表現)からの要望だ。彼らは企業やブランドに対して、素晴らしい体験をしたい・期待を裏切られたくないと考えている。マーケターはこのニーズに応えなければならない。
そして、両者の要求レベルは高くなる半面、マーケターに与えられる期間は短くなってきているという。このような状況のなかで、ウォールストリートとメインストリートを満足させるために、マーケターは何を行えばよいのか? エイクロイド氏は4つの実践すべきテーマを掲げる。
1つ目は、新しいカスタマージャーニーの創出だ。現在、消費者はソーシャル、モバイル、PC、オフライン等を自由に横断している。しかし、企業側がそれを把握できていない。チャネルごとに顧客の情報が分断されているのが現状だ。マーケターは消費者一人ひとりのリアルタイムでの行動を把握し、全チャネルを横断した長期的なカスタマージャーニーを作り出す必要がある。
2つ目が、ビッグデータがすべてを解決してくれるという誤解を解くことだ。単純にデータを溜め込んでも、役には立たない。適切なデータを用いて顧客体験を高めるためのタイミングやメッセージが何かを分析することが重要となってくる。
3つ目が、「本当の意味」でのオムニチャネルの実現だ。顧客行動の文脈を理解し、各顧客がジャーニーのどこにいるかをリアルタイムで把握したうえで、最適なコミュニケーションを取る必要がある。そのために、コンテンツ戦略を考えることが求められている。
そして、最後にテクノロジーを賢く使うこと。市場には多くのマーケティングツールが溢れている。そのため、「この技術を使えばもっと良くなる」と考えがちだ。しかし、使用目的を考えなければ、ツールの利用ばかりに時間や人的コストをかけることになってしまう。
つまり、マーケターにとって重要なことは、シンプルな技術環境で上手にデータを活用し、顧客中心のマーケティング戦略策定に集中することだ。すると、消費者の購入頻度が高まり、企業にとっても良い結果をもたらすことができる。
エイクロイド氏は、マーケターに次の問いを投げかけ、セッションを終えた。「経営層と顧客とマーケターの間の隔たりは何でしょうか? 彼らの期待に応えるために、マーケターはどう変化すれば良いでしょうか? 成長するために、どのようにテクノロジーを管理すれば良いでしょうか?」
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米国の“モダン・マーケター”の取り組み
実際に、マーケターはどのようにして顧客の期待に応え、企業の成長に貢献しているのだろうか。Orchard Brands、JCPenny、Juniper Networksの3社の事例を紹介したい。
700万人のカスタマージャーニーを創出するOrchard Brands
ファッションアイテムのカタログ通信販売、ECサイト運営を行う「Orchard Brands」は、700万人の顧客を抱えている。同社ではメール配信とキャンペーンマネジメント機能を兼ね備えた「Oracle Cross-Channel Marketing (旧Responsys)」を活用して、オンライン上の行動と各顧客に関する200以上の情報から予測分析をして、適切な情報の提供をしているという。
「顧客のLTV(生涯価値)を高めるアプローチをしています。そのためには、顧客一人ひとりにジャーニーがあることを理解し、それに沿ったアプローチをする必要があります」と、同社CMO ビル・バース氏はビジョンを語る。
メールのCVR25%増を実現したJCPenny
米国の老舗デパートチェーン「JCPenny」もOracle Cross-Channel Marketing を活用して成果をあげた企業のひとつだ。同社では組織を改編し、メールマーケティングのチームを新設するとともに、ツールの活用をゼロから開始。手元にあるデータを整理し、それを基にメール配信の最適化とデータ収集の範囲を拡大することで顧客ライフサイクルの自動化と、ロイヤルティー向上を実現させたという。2014年には収益約121%増、メールでのCVR約25%増を達成している。
同社でメール戦略のディレクターを担当するジェイソン・スコキング氏は「完璧な仕組みを作ってからマーケティングの改善に取り組むのは難しい。まずは今やっていることの最適化を考え、次に新しいテクノロジーを有効に取り入れる方法を考えました」と語り、「できることを迅速に」というメッセージを発した。
4年をかけてグローバルでの環境を整備したJuniper Networks
ルーターやスイッチなど通信関連機器及びサービスを提供する「Juniper Networks」は、全世界約1万人の従業員を抱えるグローバル企業だ。しかし、同社はデータを集中管理する仕組みを持たず、世界規模でのリードのスコアリングやナーチャリング、キャンペーンの展開などは実施できていなかった。そこで同社は2010年~2014年という時間をかけて、「Oracle Cross-Channel Marketing (旧Eloqua)」を利用したグローバル規模でのマーケティング・オートメーションを構築。まさに、本格的な運用をはじめようとしている。
同社のグローバルマーケティングを取り仕切るアリッサ・ウェーバー氏はプロジェクトを進めるにあたり、「人とプロセスありきで、どのような技術を使うかを考えました」と語る。そして、大規模なマーケティング環境整備を実現できた鍵として「チームワーク・時間・計画性・目標設定」の4つを挙げた。部門や国を横断したチームワークを持ち、時間をかけて取り組み、ローカライズを考慮した早期の計画立案を意識し、実行前にゴールを設定することが重要だったという。
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マーケティングの鍵は「Youtility」
マーケターに必要な視点として、2日目のキーノートでは、コンテンツ・マーケティングのコンサルタントとして著名なジェイ・ベール氏が登壇。「Youtility: Why Smart Marketing Is about Help Not Hype」と題したセッションが行われた。
Youtilityとは、役に立つものという意味のutilityのuをyouに変えた造語。ベール氏はこのYoutilityを「企業と顧客の信頼関係を作り出す、役に立つ情報」と定義する。購買を決定する前に消費者が多くの情報に接する今、自社にだけ注意を向けてもらうことは難しくなっている。そこで必要になるものがYoutilityだと、同氏は語る。
前述の通り、現在では人々の注意喚起が難しくなっている。そこで企業は大袈裟に物事を伝えたり、驚きを与えたりして振り向かせようと考える。つまり、「Hype=誇大広告」を行いがちだ。しかし、顧客と長期的な関係を構築したい場合、この方法は賢い選択とはいえない。Hypeから一文字変えた「Help」、消費者にとって役に立つ情報の提供こそが重要だという。
例えば、世界的なホテルチェーンであるヒルトンはTwitterに「@HiltonSuggests」というアカウントを開設し、様々な提案を行っている。このアカウントの特徴は、ヒルトングループのホテルを利用していない人にも情報を提供している点だ。しかもハッシュタグなどのない、旅行者のつぶやきにも反応する。このような、ヒルトンホテルに助けてもらったという体験が、利用となって返ってくるわけだ。
マーケターがYoutilityになるための、シンプルな心掛け
消費者の助けになり、信頼関係を構築することが可能な有益な情報「Youtility」には次の3つの種類があるという。
- セルフサービス型の情報提供
- 透明性を感じられる情報提供
- リアルタイムかつ、最適な情報の提供
「セルフサービス型の情報提供」とは、企業や製品等に関するデータを事前に準備し、消費者が気になった時にすぐにアクセスできるようにしておくこと。例えば、ホリデーワールドという遊園地では、アトラクションの動画や体重制限、水を使ったアトラクションの場合は水温等、細かな情報を公開している。問合せをしなくても、サイトに行けば情報が全てわかる。
「透明性を感じられる情報提供」は、すべての質問に答えるということを指す。自社に都合が良い情報だけを提供しても、消費者との信頼を築くことはできない。マクドナルドは「Our food. Your questions.」というサイトを用意し、食材や加工過程についての消費者からの質問に動画などで回答をするという活動をしている。これによって、16%の信頼増加が見られたという。
そして「リアルタイムかつ、最適な情報の提供」。消費者の求めている情報は、タイミングや人によって大きく異なる。そのため、必要なときに、必要な情報を提供することを意識することで、消費者が次の機会にも頼りにしてくれるというわけだ。
そして、ベール氏はマーケター自身がYoutilityになる必要性を説く「テクノロジーとは単なる魔法の杖であり、マーケターは魔法使いにならなければいけません。そして、マーケターがYoutilityにならなければいけない。この人ともっと時間を過ごしたいと思ってもらわなければいけません。しかし、難しいことではありません。“私はどうしたら助けることができる?”と自問すれば良いのです」
紹介したセッションや、キーノートに共通するメッセージは「どんなに技術が発展してもツールはツールでしかない。重要なことは、マーケターがいかに顧客中心の視点を持って、長期的な信頼関係の構築を意識した戦略を考えられるか」ということだろう。それが、マーケティングの最前線に立つモダン・マーケターに求められていることだ。そして、オラクルは「Oracle Marketing Cloud」によって、モダン・マーケターの戦略策定と実現を力強く支えていく。「Modern Marketing Experience 2015」は、マーケティング領域におけるオラクルの指針を強く感じるイベントとなった。
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