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「地図を描くのではなく、常に最適なナビゲーションをすることが重要」HPが語る、最高のCX創出の要

 Webサイトで検索し、モバイルで予約し、不満があればソーシャルでつぶやく。そんな購買行動が当たり前になった今、「カスタマーエクスペリエンス」は企業への信頼を高め、ブランド力を向上させる原動力だ。この実現に向け、HPが掲げた新たなビジョンについて、同社ジョイナー氏、およびメノン氏に詳しい話を聞いた。

カスタマーエクスペリエンスがビジネスの主軸になる

 ヒューレット・パッカード(以下、HP)が新たなビジョンを掲げた。それが「The New Style of Customer Engagement」だ。具体的には、どのようなものなのか。また、日本においても実現することは可能なのか。同社のアンドリュー・ジョイナー氏および、スニル・メノン氏に詳しい話を聞いた。

米ヒューレット・パッカード Marketing Optimization担当 バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー アンドリュー・ジョイナー氏(右)、同社CTO Marketing Optimizationスニル・メノン氏(左)
米ヒューレット・パッカード Marketing Optimization担当
バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー アンドリュー・ジョイナー氏(右)、
同社CTO Marketing Optimization スニル・メノン氏(左)

 インターネットが普及し、モバイルなど様々な技術革新の結果、人々の行動は大きく変化している。購買行動やコミュニケーションなども、リアルな場からネットを介したデジタルへと置き換えられている。物理的な制約が小さくなり、ビジネスのチャンスが広がると同時に競争の激化が進み、思わぬリスクを負う可能性も生じている。

 たとえば、ある人が飛行機に乗った際に機内食に問題を感じたとしよう。その人はカスタマーセンターに電話する、ブログに書く、ツイートする、その他、どのような行動を取るだろうか。そして、いったい誰がどう対応するべきなのか。顧客の行動とそれに対する応対が複雑化し、見えにくくなっている。時にその状況は予想以上のトラブルを引き起こし、ブランドイメージを失墜させることになりかねない。

 ジョイナー氏は「こうした複雑化する顧客の行動に十分に対応可能なテクノロジーが、既に登場してきています。HPが掲げた新たなビジョンはまさに、新しいマルチチャネルによるエンゲージメントを可能にするものです。そのビジョンと、実現される世界をぜひとも知ってほしい」と語る。

 オフラインで顧客と接する場合、声や表情といった様子から状況を推測して適切に対応することができる。しかし、ネット上のデジタルなコミュニケーションでは、顧客の断片的な情報でしか判断ができない。しかも、どのチャネルにいつアクセスするかも予測が難しい。

 そこで、サイエンステクノロジーを賢く利用して情報を収集し、その人向けにカスタマイズされたコンテキストに基づく情報を提供することが重要となる。それが『カスタマーエクスペリエンス=顧客経験価値』を高めることに大きく貢献するというわけだ。

 実際に先進的な企業では、カスタマーエクスペリエンスの重要性に気づき始めている。ガートナーの調査によると、89%の企業がカスタマーエクスペリエンスに基づいて競争力を強化していくという。

「私のことをわかってくれている」と感じられる体験の提供を

 マーケティングテクノロジー市場の規模は、10年間で120億ドルから1,200億ドルへ、10倍の成長が予想されている。これは、従来のIT市場と比べてもはるかに大きい。

出典:Foundation Capital、2015年 MarTech and the Decade of the CMO
出典:Foundation Capital、2015年「MarTech and the Decade of the CMO」

 「ITの予算は、コスト削減や効率化を目的として立てられていました。一方、マーケティングテクノロジーの予算は、新たな利益を獲得するために“顧客対応に使う投資”と考えられています」(ジョイナー氏)

 「カスタマーエクスペリエンス」を最大化するためには、顧客を熟知することが不可欠だ。かつてのリアルな世界なら、直接顧客と向き合ってニーズや好みを聞き出すなど「深掘り」が可能だったが、今は電話やWebなどチャネルが増え、様々なデータソースから情報を集めてコンテキスト化していくことが必要となる。また、チャネルが混在することで生じる矛盾を回避するために、どのチャネルでも的確に対応できる“仕組み”を講じることが重要なのだ。

 では目指すべきカスタマーエクスペリエンスとは、どのようなものか? メノン氏は“最高の”カスタマーエクスペリエンスについて、次のように語る。

 「老舗のホテルのように、顧客が『ここは私のことをわかってくれて、対応してくれている』と満足に感じられることが大切なのです。デジタルのコミュニケーションにおいても、こうした最高の体験を実現することが、企業の価値を高め、競争力となります。そして、それを実現するためには、的確に情報を収集し、活用することが必要です」(メノン氏)

ニコンが進める、カスタマーエクスペリエンス向上施策とは?

 日本でもすでに、HPとタッグを組んだ、カスタマーエクスペリエンスの向上施策がはじまっています。
その例となるのが光学機器メーカー ニコンです。同社の米国ケーススタディ資料を公開中!
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理想を現実にする統合プラットフォーム

 HPでは、この「マルチチャネルにおける最高のカスタマーエクスペリエンス」を実現するために、マーケティングテクノロジー分野において、革新的な4つの製品を提供している。

 1つ目がカスタマーコミュニケーションマネジメントソリューションの「HP Exstream」。銀行からの「取引明細書」など、企業から顧客に対して通知するメッセージやコミュニケーションコンテンツを、印刷物やメールなどの様々な手段で的確かつタイムリーに提供できる。年間で何百億件ものカスタマーコミュニケーションに対応している。

 2つ目に、WebサイトにおけるCMSソリューションの「HP TeamSite」。大きな特徴は柔軟性だ。一般的なデータベースへの登録型とは異なり、ファイル型のCMSなので、既存のコンテンツファイルをコピーするだけで導入が完了する。運用を続け、大規模化したサイトでも容易な移行と、素早い稼働を実現できる。現在、1万以上のWeb/モバイル エクスペリエンスのサポートをしている。

 3つ目が「HP Optimost」は、多変量解析テストによってWebサイトやデジタルキャンペーンにおけるコンバージョンや、利益を最大化するソリューション。既に何十億ドルもの収益向上に貢献しているという。

 そして4つ目の「HP MediaBin」は、デジタルアセット(資産)管理ツール。企業内に分散した資産の一元管理・配信が可能となる。他にも、現段階では日本未提供だが、全コンタクトセンターにおけるエンゲージメントのハンドリングを行う「HP Qfiniti」。「Augmented Reality(拡張現実)」をベースにしたデジタル体験を提供する「HP Aurasma」が用意されている。

 そして、これらはすべて「HP Digital Marketing Hub」というプラットフォーム上に統合されている。Webであっても、電話や対面であっても、統合された情報のもとに顧客を理解し、最適なコミュニケーションをはかる環境が構築できるというわけだ。

 「このようなポートフォリオが提供できるのはHPだけ」とジョイナー氏は自信を見せる。「これらによってHPの顧客企業のブランディングやマーケティングなど、様々な面において高い価値を提供できるものと考えています。もちろん、BtoB、BtoCを問いません」(ジョイナー氏)

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「地図を描く」ではなく、「ナビゲーション」をする

 メノン氏は「HPの強みは決して技術だけではない」と語る。「たとえば、HPでもお客様を理解するためには、まずは営業担当者に情報を与え、コミュニケーションすることを優先させます。デジタルにおいても同様です。最新のレコメンデーション機能や分析アルゴリズムなど技術を有しているだけでなく、実際に“データを活用するための知見がある”のです」(メノン氏)

 データを何に役立てるのか、目的を達成するための予測因子になるかどうか。その見極めができないまま、情報を集めたり、分析したりしても意味がない。かつては、属性情報を手がかりとして行動分析がなされることが一般的だった。しかし、現在は属性に加えて多量のログデータを活用し、行動予測へとつなげているという。サイエンステクノロジーを含め、データから最善の結果を得るための手だてやノウハウを持っていること、それがHPの強みだ。

 「従来の予測やマーケティングは“地図”のようなもので、スタートから最終地点までを計画していきました。『HP Digital Marketing Hub』が実現するものは、まさにGPSによるカーナビです。渋滞情報など顧客と顧客を取り巻く環境をタイムリーに理解・認識しながら、リアルタイムで最適なルートを探して進む。私たちはこのようなビジョンを持っています」(ジョイナー氏)

 「カスタマーエクスペリエンス」を最高のものにするためには、チャネルを“ピンボール”のように渡り歩く「カスタマージャーニー」を最適化する必要がある。そのために、HPは先ほど触れたような、仮説をスピーディにテストできるツールや、マルチチャネルでの一貫性を担保するツールなどを用意している。そして、最も重要なことが、あらゆるものが「HP Digital Marketing Hub」上に全社的な“デジタル資産“として統合されることだ。

 「かつて、様々なITツールが乱立し、その後プラットフォームの重要性が叫ばれるようになりましたが、それと全く同じことです。情報やコミュニケーションに一貫性が求められるのであれば、あらゆるチャネルのものが調和し、機能することが必要です。『HP Digital Marketing Hub』ならば、そのために必要な業務やデータをスムーズに連携させ、統合プラットフォームとして構築することが可能です」(メノン氏)

 顧客に「カスタマーエクスペリエンス」を“継続して”提供することも重要なポイントだと、メノン氏は指摘する。

 「これまでは『獲得までに98%、獲得後は2%』といわれ、顧客獲得に大きな予算がとられていました。それを、顧客化の施策へと予算をスライドすることで、『カスタマーエクスペリエンス』が向上し、コンバージョン率もLTV(Life Time Value)も上がると考えています。高収益体質へと成長していけるわけです。HPのポートフォリオはそうした“継続性”も意図して設計されています」(メノン氏)

 それでは、どのようにHPのソリューション群が「カスタマーエクスペリエンス」を実現していくのだろうか。また、どのように活用すれば、より一層の向上効果を期待できるのだろうか。最後に、国内外のユーザー動向を聞いた。

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航空会社での高い効果、日本でも活用ははじまっている

 ジョイナー氏によると、最も同社ソリューションの活用度が高く、効果が上がっている業界の1つが航空会社だという。例えば、フライトをWebでチェックしたり、電話で航空券を予約したり、利用者は様々な接点で様々なコミュニケーションを行う必要がある。

 「他にも、銀行や保険、旅行など、あらゆる業界・業種の企業での導入・活用が進んでいます。ITとマーケティングの融合が難しいのではないかという懸念もきかれますが、米国ではマーケティングテクノロジー部門やCMOの設置などによって双方の交流が生まれ、上手くいっているケースが多いですね。日本も後にそのような形で連携するようになるのではないでしょうか」(メノン氏)

 実際に、日本でも主要な航空会社や大手飲料メーカー、グローバル企業はじめ100社以上が導入し積極的な活用が始まっているという。

日本でのマーケティング革新の鍵は「段階的な統合」

 日本の場合は、これまでメーカーならばブランドや事業部ごと、グローバル企業ならば国や地域ごとにコンテンツが個別に制作されてきた。そうした状態でターゲッティングを行なっても成果は部分的にとどまる。そこで、バラバラだったコンテンツを段階的に統合し、テンプレート化し、その上でターゲティングにまでつなげていく。そうしたロードマップで全体統合を実現させているという。

 ポイントは一度に大きな変更を実施するのではなく、ステップを踏みながら確実な統合を行っていることだ。現段階で日本ではITとマーケティングの連携において、トップダウンで一気に統合することはなかなか難しい。しかし、HPのCMSツール「HP TeamSite」などを利用すれば、コンテンツを段階的に統合し、さらに共通のプラットフォームへとつなげていくことができる。つまり、部分的に始めながら、投資を無駄にすることなく全体化できるというわけだ。

 「HPは技術的な面だけでなく、欧米での豊富な導入経験から得た、組織の問題を解決する知見についても潤沢に持ち合わせています。そうしたナレッジを提供しながら、日本でも企業のマーケティング改革を押し進め、貢献していきたいと考えています」(ジョイナー氏)

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/08/21 12:53 https://markezine.jp/article/detail/22630