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Instagram活用企業特集

「Instagramを使わなきゃ」から離れると施策が生まれる/事例で探る広告クリエイティブの勘所


「Instagramで効果を出すクリエイティブ」に必要な3つの視点

 いざInstagramで広告展開を考えた場合に気になることが、「どのようなクリエイティブを作るべきか」だろう。ここからは、Instagram広告のクリエイティブ提案・制作領域を担当する田中氏に伺った、クリエイティブ制作に必要な視点と、実際に広告効果を出している良例を紹介したい。

――Instagramで広告を打つ場合、クリエイティブの観点から気を付けるべきことは何でしょうか?

田中氏:Instagramに限らず広告展開を考える場合に、企業が明確にすべき大前提が3つあります。まずはビジネス目的。次にブランドの言い分。つまり、なぜ商品を買う必要があるのか、何を打ち出して有名になりたいのかといった部分です。最後が、適切なターゲット層。これは所在地、性別、趣向などのデモグラや、web全体の行動履歴といった情報を組み合わせてセグメントをつくり、広告を配信する意識があるかということです。

 これをクリアしたうえで、「Instagramで効果的なクリエイティブ」を制作する際に意識すべきことが3つあります。ひとつ目が利用者の目にとまるビジュアルを作ること。インスタグラムに投稿される作品は非常に多いです。中には多くのフォロワーを抱え、素晴らしい作品を発するアカウントも存在する。溢れるほどのオーガニック作品の中にあって、利用者の手を止める美しいビジュアルを用意する必要があります。

 2つ目が、きれいなビジュアルであっても、特定のブランドのクリエイティブだとわかる(=広告だとわかる)ものにすること。ブランドが前面に押し出されたものは倦厭されますが、「あのブランドだ」と分からなければ、オーガニックと区別がつかなくなります。

 3つ目に、そのビジュアルのクリエイティブアイディアが少なくとも3か月から半年は継続できるものであることです。例えば、ティファニーといえば、ブルーグリーンが特長です。ブルーグリーンの中に置かれた商品=ティファニーだと記憶に留めた利用者は、多くのフィードの中でも、ブルーグリーンがあれば目にとまり、ティファニーだと分かります。もちろん、クリエイティブアイディアは色だけでなく構図やアングルなどが考えられます。

 クリエイティブアイディアを統一することで、たくさんのフィードと共にタイムライン上を流れていく広告同士につながりができ、利用者に印象付けることができるわけです。そして、これらを広告主と制作サイドが合意している必要があります。

Instagram広告クリエイティブの好例をチェック!

――田中さんがご覧になって、上手なクリエイティブだと思われた例はありますか?

田中氏:ケンタッキーフライドチキンさん(@kfc_japan 以下、KFC)は非常に好例だと思います。彼らの広告クリエイティブは性別や年齢の異なる手がパーティバーレルのオリジナルチキンに伸びている様子を、上から撮ったものになっています。実は、このキャンペーンの目的は「ケンタッキーがあると気分が上がる」「仲間や家族と囲むケンタッキー」というメッセージを訴求して、認識を持ってもらうこと。そのため、誰かとオリジナルチキンを食べているという構図になっているのです。

 この広告の素晴らしい点は展開した後の調査で「みんなで食べるファストフード」と聞いて初めに想起するブランド(トップオブマインド認知)として、25-34歳で7ポイントものリフトが見られ、さらに「ケンタッキーフライドチキンはみんなと一緒に食べたい」という設問に対し「非常に当てはまる」と答えた人の割合に5ポイントのリフトが見られたこと。ビジュアルを通して、KFCからのメッセージが確実に伝わっているのです。

 他にも、土屋鞄製造所さん(@tsuchiya_kaban)も素晴らしい事例です。こちらの会社は「知名度の向上」を目的に、品質の高さを訴求するブランディングをされています。彼らの広告クリエイティブの共通点は、必ず手が写っていて「鞄を抱きしめている」という点。抱きしめたいほど良い品物だと、ビジュアルで訴えているんです。

 広告の効果を見ると、50.8万人に広告が接触し、広告に接触した人と、非接触の人を比較すると、29ポイントの広告想起のリフトが確認できています。ブランド認知度についても6ポイントのリフトが見られました。ビジネス目的が反映されたクリエイティブによって、利用者に変化を促す良い例といえます。

――このようなクリエイティブは狙って用意しないと実現しないものかと思います。一方、企業によっては既存のクリエイティブアセットを利用した広告を作りたい場合もあるのではないでしょうか

田中氏:既存のアセットを利用するならば、複数の写真広告をスライドショー式で展開するカルーセル広告は適しているかと思います。例えば、横長の写真を活用して、車内の広さをスクロールしながら見てもらうといったクリエイティブが考えられます。起承転結のある写真を利用することもできるかと思います。

 例えば通販化粧品のライスフォースさん(@riceforce)がまさに、既存アセットを活用されています。同社の化粧品は比較的高価格帯なのですが、非常に高品質。それだけの価値がある。しかし、その点が認知されておらず、購買につながりにくいという課題を持っていました。

 どれだけ品質が良いかというと、海外の高級ホテルに化粧品を提供しているほど。ライスフォースさんはこのエピソードを上手に扱って、クリエイティブに反映させています。具体的には、ホテルの入り口、ロビー、スパ、商品という写真を組み合わせて、ホテルのスパで商品と出会うというストーリー構成のカルーセル広告になっています。

動画も写真も必然性が重要

――最後に動画活用の勘所があれば教えて頂けませんか

田中氏:10月からの広告効果を調べると、動画を利用したものは効果が高いです。おそらく、現段階ではオーガニックでの動画の投稿が少ないからだと思います。動画というだけで目につくわけです。

 ただし、何でも動画にすれば良いわけではありません。「だから動画にしたのか」と、クリエイティブを目にした利用者が納得できる必要があります。物理的には動画の方が目につきますが、そこで「意味が分からない、つまらない」と思われたら二度と見てもらえないかもしれませんから。

 例えば、ウイスキーを注いで、氷がカランと音を立てるような瞬間の動画は非常にエモーショナルです。しかし、そのコップの上を飛行機が飛んでいたら「何で?」となりますよね。写真のクリエイティブにも共通しますが、必然性が重要なのです。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/12/15 18:19 https://markezine.jp/article/detail/23513

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