Big Data活用の現状は?
さて、EMAC2016の後半レポートでは(前半はこちら)、名だたるマーケティングジャーナルで賞を獲得しているKoen Pauwels 氏(Ozyegin University, Istanbul)のInvited Speaker Sessionを取り上げます。” How to turn better data into better decisions ? ”(いかにしてより良いデータをより良い意思決定に変えるか)というタイトルの講演です。
まず彼は、データが豊富に手に入る環境となった今日、「データは新たな石油である」、「データがマーケティングの価値を示している」と例をあげた上で、意思決定の改善に繋がっているか引用を交え疑問を呈します。
曰く「あまりにも多くのマーケターがブランド、クリエイティブ、そしてソーシャルバブルに存在しているが、70%のCEOがマーケティングチームに対する信頼を失った」と語り(“Fournaise 2012 Global Marketing Effectiveness Program”)
「当初の期待に応えられることができないまま中断したビッグデータ関連のプロジェクトは55%にも」及び(Infochimps 2013)、「Big dataは幻滅の谷に差し掛かっている」(”Gartner 2014”)。さらには、「Big Dataがこれまでの伝統的なデータ収集や分析に取って代わるとの仮定から不適切な結果を招く例もある」とも。
バイアス:3つのCとV
このように思われてしまう原因は何でしょうか? そこには、データを活用する際に人が陥りやすいバイアスの存在があります。具体的に、Prof. Pauwelsは次のバイアスを提示します。
- Confirmation bias(確証バイアス):先入観と整合的なデータに囚われ客観的な判断ができないと誤った意思決定となる。
- Communication misunderstanding(コミュニケーションにおける誤解):組織間に問題が存在すると意思決定の妨げとなる。
- Control illusions(コントロール幻想):コントロール不可能な結果についてコントロールできると信じる傾向にある。
また、Big Dataを紹介する際に特徴としてあげられてきた3V(Volume,Variety,Velocity)も問題点があると氏は指摘します。
- Volume(データの量):より多くのデータがあれば、よりアイデアの確証を見つける多くの機会を得られると考えられているが、実際は大量のデータを前に盲目的になっているため取り扱うための土台、基礎となる設計が必要である。
- Variety(データの種類):多くの企業においてデータの種類が急増することで部門間のコミュニケーション問題が発生している。
- Velocity(データの処理頻度):リアルタイムで変化する各種指標はコントロール可能な幻想をもたらす。また、それら指標は長期的なKPIの先行指標とはなっていない可能性すらある。