コンテンツ開発はバケツリレーからスクラムへ

有園:お客様ありき、まさにそうですね。どういう人であるかと同時に、その人が今どういうシチュエーションにあるかも、デジタルだと捉えられる。
石井:ええ。また、思考プロセスの転換と同時に、オリエンベースの慣習も変わるべきだと思います。今回の商品価値とターゲットはこうで、その価値を感じる瞬間はこんなシーンですというオリエンは、所詮オリエンする人の知識や考えの域を出ません。クリエイティブの段階でのジャンプは起きるかもしれませんが、そもそもの設定段階で可能性を狭めています。ターゲットも訴求価値も複数になったら、通り一遍のオリエンではもうカバーできない。
オリエンって、基本的にバケツリレーですよね。そうではなく、データを中心に、ブランドマネージャーとデータサイエンティスト、それからクリエイターとで、ラグビーでいうスクラムを組むんです。最初から皆でアイデアを出し合って考えないと、バリエーションのあるものにならないと思います。
有園:なるほど、データはいわゆるラグビーボールですね。
石井:そうそう。当社でも以前実験したのですが、たとえばネットのバナーだと認知を獲得する広告、購買意向を高める広告、購買の最後の一押しをする広告は全部異なっていました。
データ解析からターゲットの理解、シチュエーション設定とそれにマッチするビークルのすべてを一人でオリエンできるスーパーブラマネがいたらいいですが(笑)、データを真ん中に置いて、チームでやっていく方向に変えるのが妥当だと考えているんです。
自動化する業務と判断が必要な業務を見極める
有園:伝統的なマスマーケティングを続けてこられた花王の方が、そんなふうにおっしゃるのは、重みがありますね。実際、御社では体制の整備も含めたデジタルトランスフォーメーションが進んでいるのでしょうか?
石井:そうですね。チーム編成やツール導入、情報システム部門との連携など、できることからどんどん進めています。
ターゲットが細分化しているだけでも、マーケターのすべきことはぐっと増えています。効率を考えれば、スモールマスもできるだけ括りたいのですが、括りすぎると結局効かないということになる。なので、100万人を10万人×10にするのか5万人×20にすべきかといったことはデータ解析ツールに任せたいですし、設定したKPIに見合っているかの確認、高速PDCAの実行も同様ですね。
有園:業務が増えている分、どこをツールで自動化し、どこにマーケターの判断を効かせるか、見極めが大事ですね。先ほどの「皆でスクラムを組むように」考える際も、やはりデータをわかる形で共有できるツールが必要でしょうか?
石井:そう思います。社内の使えるデータを集約し、組み合わせて解析し、ビジュアライズするツールが、チームでの取り組みを後押しするでしょう。