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店舗売上は約130%伸長! セブン&アイ・ホールディングスのTwitter×料理動画×リアル店舗施策

 セブン&アイ・ホールディングスは、プライベートブランド「セブンプレミアム」の商品である「サラダチキン」販売促進キャンペーンをTwitterおよびリアル店舗で展開。キャンペーン実施前と比較しネットの売上では4.5倍、実店舗での売上伸び率平均130%を記録した。軸になるのは、テイストメイドが制作した料理動画の活用だ。高い効果を出した同取り組みの狙いと、成功のポイントを取材した。

Twitter×料理動画×リアル店舗で、テレビCMに匹敵する売上効果

 セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランドといえば「セブンプレミアム」。同ブランドの商品「サラダチキン」は新鮮な鶏むね肉を、やわらかくなるまでじっくりと蒸し上げた人気商品だ。2016年10月、同商品の販売促進キャンペーンをセブン&アイ・ホールディングスがグループ横断で実施したことをご存知だろうか?

 具体的には、食をテーマにした動画メディア「テイストメイド」が、サラダチキンを使った料理動画を制作。それをTwitterアカウント(@Tastemade_japan)で発信した。

 さらに、セブン-イレブンをはじめ、イトーヨーカドーやそごう・西武、オムニセブンなどの各事業会社のTwitterアカウントがリツイートしながら、Twitter広告も出稿。結果、360万インプレッション、1.2万リツイート、動画再生は52万回にのぼり、ネットでの売上が4.5倍にまで成長した。

 同時にリアル店舗でも同一の動画を流し、POPや試食販売といった施策を展開(参加企業は、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、そごう・西武の371店舗)。

 結果、3社平均で売上伸長率130%を記録し、同年5月に実施したテレビCMに匹敵する効果をもたらした。

 さらにこの取り組みでは、動画活用の知見も蓄積されたという。今回テイストメイドが制作した70秒の動画をTwitterで流した場合と、過去に放送した15秒のテレビCMを他の媒体で動画広告として流した場合の視聴態度を調べた。すると、テレビCMは動画再生が始まるとすぐに離脱が始まり、動画が75%再生された時点で、利用者の70%が離脱していた。一方、テイストメイドの動画は、同じく75%再生時点で、離脱は30%にとどまったことが判明したのだ。

料理動画の活用が大きな鍵

 ところで、セブン&アイ・ホールディングスはなぜ、このような取り組みを実施したのだろうか。また企業として、この取り組みをどのように評価しているのか。今回、3社の責任者に詳細を取材した。

左:株式会社セブン&アイ・ホールディングス オムニチャネル管理部 販促・マーケティング シニアオフィサー 原田良治氏、中央:Twitter Inc. Client Solutions事業担当副社長 兼 Twitter Japan株式会社代表取締役 笹本裕氏、右:Tastemade Japan株式会社 代表取締役 吉岡研一氏
左:株式会社セブン&アイ・ホールディングス オムニチャネル管理部
販促・マーケティング シニアオフィサー 原田良治氏
中央:Twitter Inc. Client Solutions事業担当副社長 兼
Twitter Japan株式会社代表取締役 笹本裕氏
右:Tastemade Japan株式会社 代表取締役 吉岡研一氏

 セブン&アイ・ホールディングスの販促とデジタルを含めたマーケティング、ブランディングを統括する原田氏は、この企画を承認した立場だ。今回、この企画を通した理由を次のように語る。

 「サラダチキンは、シンプルな食品。料理の素材にもなり、様々な使い方ができる商品です。これをどう販売していくかは、私たちが抱えるテーマの一つでした。部下のオフィサーから今回の企画について説明を受け、テイストメイドさんの動画を見たときに、“これだ!”と思いました。動画は料理する人の目線になって撮影されており、リズムが良くて見ていて気持ちがいいですし、リアリティがあるのも素晴らしいと考えました」(原田氏)

 本施策の拡散のプラットフォームとなったのがTwitterだ。笹本氏は、企業がTwitterをマーケティングに活用する際には、いかに良質なコンテンツに利用者が触れられるかが重要だと語る。

 「Twitterを使うと物を購買する意欲が高まるというデータが出ています。特に日本では、利用者が出先でTwitterを見て、その場で行動を決断するケースがすごく多い。ですから、行動を促すためのコンテンツが必要。それは決して、あからさまに広告的なものである必要はありません。今回のケースも、優れたコンテンツが成功の鍵だったと思います」(笹本氏)

 動画を制作したテイストメイドは、4年前にロサンゼルスで設立された。吉岡氏が代表取締役を勤める日本法人は、2016年8月に設立されたばかりだ。

 「日本法人では米国の動画を翻訳するのではなく、日本オリジナルのコンテンツを量産する方針を持っています。(今回の施策の話を聞いた頃は)その製作体制がなんとか整ったばかりという状態でした。自社のホームページや電話もまだ準備できていませんでした」(吉岡氏)

 料理動画の活用が大きな鍵になっていそうな本施策。次ページから、企画の背景を詳しく聞いていきたい。

基本姿勢は「コトを起こしてモノを売る」

 そもそも、今回の取り組みは誰に向けたものなのか。原田氏は、特定のターゲットを決めず、広く“料理をしたい人”に向けたものだと語る。だからこそ、料理動画が生きてくるという。

 「テイストメイドさんの動画は、BtoCというよりCtoCですよね。カスタマーが自分で料理する様子を見せているような。それは、主婦など毎日料理をされる人に限らず、週末料理人や時々キッチンに立つ人まで、料理に関心のある人全体の心をくすぐります。そこが狙いです」(原田氏)

 先程触れたように、サラダチキンはシンプルな加工食品だ。そのような商品の場合、素材をそのまま売るのではなくて、料理というプロセスを想像させて、提供することが重要だと原田氏は語る。

 「私は元々百貨店にいた人間です。百貨店は端的にいえば、他所でも売っている商品を販売する必要がある。ですから、“コトを起こしてモノを売る”ことが重要なんですね。モノを買うきっかけになるコトを作ることで、購買意欲が高まる。その思考が長く身についています。今回であれば、動画を通して料理の楽しさが伝わるか否かを重要視しました」(原田氏)

グループを巻き込むために必要な「わかりやすさ」

 セブン-イレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、そごう・西武と、異なる複数の事業体が共同でキャンペーンを行うことに関しては、どのように評価するのか。全社で結果を出すことは難しいとしながらも、原田氏は効率面でのメリットを強調する。

 「一つのアイテムに対して複数の事業会社が別々に販促をして、それぞれにコストをかけるよりも、一つに束ねたほうが効率的です。もちろん、そうすることで没個性になる場合もあるので、商品によって向き不向きはありますが。

 今回の取り組みは、サラダチキンという素材に、料理という“コト”をプラスするものです。グループ各社が共同で展開すればするほど、熱量が生まれることは明らかです。アイテムの売上に関しても、販促施策が相互に良い影響を与えることも予想できるため、各事業会社が受け止めやすかったのです」(原田氏)

購買意欲をかき立てるために、奇をてらう必要はない

 では、動画は具体的にどのような方針で制作されたのか。レシピの提案から動画制作までを一任されたテイストメイドは、視聴者が“作りたくなる”クリエイティブになるよう注力したという。

 「情報が膨大に流れているTwitterのタイムラインにおいては、指を止めて視聴してもらうために、ビジュアル的なインパクトを重視した映像を製作するケースもあります。しかし、今回はサラダチキンの魅力をしっかり伝えることが重要であり、店頭でも流すことを考えると、その場で買いたいと思ってもらう必要がありました。

 そのため、見た人にただただ“作ってみたい!”と思ってもらえることを重視しました。元々、そこは私たちの得意分野でもあります。実際、フォロワーさんの感想には“見てると料理したくなる”“料理したことないけど、やってみたくなった”という感想が多いんですよ」(吉岡氏)

 レシピの“揚げないチキン南蛮”は、サラダチキンの利用者の特徴を意識して決定したという。

 「サラダチキンについてリサーチすると、ダイエット中の方が好んで買われていることがわかりました。ですから、カロリー控えめでも食べ応えのあるレシピを開発しました。動画の編集は、料理をしない人でも興味が持てるように、スムーズに流れるように意識しています」(吉岡氏)

各社が語る、成功のポイント

 KPIは売上だったという今回の施策。結果を見ると1P目で紹介した通り、成功を収めたといえる。勝因は何か。原田氏は訴求する商品と、テイストメイドのクリエイティブ力、そして膨大な利用者を抱えるTwitterが上手くマッチしたためだと分析する。

 「テイストメイドさんがサラダチキンを美味しそうに見せてくださいました。元々人気の商品で、ダイエットや、お年を召した方にもおすすめといった認知はあったのですが、一方で、“どう料理すればいいかわからない”といったお声もありました。動画によって、“こういう作り方もあるんだ”とヒントを与えられたと思います。

 さらにTwitterという、短時間でメッセージングが可能なプラットフォームが掛け合わさったのが良かったのではないでしょうか」(原田氏)

 また、スピードの速さも際立っていた。8月にテイストメイド ジャパンが立ち上がると同時に企画がスタートし、9月に動画を制作し、10月にはTwitterで拡散をしている。テイストメイドが日本で最初に取り組みを実現した企業が、セブン&アイホールディングスというわけだ。

 「施策を実施したオフィサーは、セブン-イレブン出身。グループの中でもセブン-イレブンは特にスピード感があって、午前中にトップが指示したことが夕方には2万店舗の現場が徹底されるほど。また、私も“やってみれば”と承認することが多いので、相乗効果だったかもしれませんね。特に今回に関してはコスト面でもテレビCMに比べて数十分の一と手を出しやすいこともあり、スピーディーに物事を進められました」(原田氏)

 今回の施策はテイストメイドでも先進的な事例で、アメリカのスタッフからも興味を持たれていると吉岡氏は語る。

 「テイストメイドが作った動画を店頭で流して、売上に貢献するといった事例は、アメリカでもまだありません。今回、Twitterという強力なプラットフォームと、我々が普段リーチできない店舗という2つの場に展開できたことにとても大きな意味があると考えています」(吉岡氏)

 この声を受け笹本氏は、今回の施策はプロとプロが組み合わさったことによる“当然の成功”だという。

 「セブン&アイ・ホールディングスさんは、自社商品をどう打ち出すべきか、そしてTwitterとは何なのかを、きちんとご理解されています。テイストメイドさんも、しっかりソーシャルリスニングをしてクリエイティブ制作されている。プロが集まって取り組んだ施策だからこそ、今回の結果があるのでしょう。

 Twitterは今、月間アクティブ利用者数4000万まで成長しており、勢いは全く衰えていません。当社としては、これからもターゲティングの精度を含め、こういった事例を増やせるような体制を強化していきたいと思います」(笹本氏)

 最後に原田氏に今後の展望について尋ねると、意欲的な答えが返ってきた。

 「今回のように、動画を活用することでコトを起こす施策を引き続き行っていきたいですね。また、テレビCMとweb動画の使い分けについても、意識していきたいと思います。認知が低い新商品はテレビCMで広範囲のリーチをとり、認知のある既存商品についてはwebで良質なコンテンツを作って拡散していく。webとテレビのいいとこ取りをしながら、今後も継続して取り組んでいきたいですね」(原田氏)。

 これから、セブン&アイ・ホールディングス、テイストメイド、Twitterがどのような展開を見せるのか。引き続き注目していきたい。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/01/25 12:00 https://markezine.jp/article/detail/25846