Twitter×料理動画×リアル店舗で、テレビCMに匹敵する売上効果
セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランドといえば「セブンプレミアム」。同ブランドの商品「サラダチキン」は新鮮な鶏むね肉を、やわらかくなるまでじっくりと蒸し上げた人気商品だ。2016年10月、同商品の販売促進キャンペーンをセブン&アイ・ホールディングスがグループ横断で実施したことをご存知だろうか?
具体的には、食をテーマにした動画メディア「テイストメイド」が、サラダチキンを使った料理動画を制作。それをTwitterアカウント(@Tastemade_japan)で発信した。
サラダチキンで簡単♡揚げないチキン南蛮【PR】
— テイストメイド ジャパン (@Tastemade_japan) 2016年10月16日
セブンプレミアムのサラダチキンを使って、ボリュームたっぷりだけどヘルシーなチキン南蛮が簡単に作れちゃいます。
美味しそうと思ったらリツイート#セブンプレミアム
レシピこちら→ https://t.co/OvvUemzYPF pic.twitter.com/zVMohr9sUl
さらに、セブン-イレブンをはじめ、イトーヨーカドーやそごう・西武、オムニセブンなどの各事業会社のTwitterアカウントがリツイートしながら、Twitter広告も出稿。結果、360万インプレッション、1.2万リツイート、動画再生は52万回にのぼり、ネットでの売上が4.5倍にまで成長した。
同時にリアル店舗でも同一の動画を流し、POPや試食販売といった施策を展開(参加企業は、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、そごう・西武の371店舗)。
結果、3社平均で売上伸長率130%を記録し、同年5月に実施したテレビCMに匹敵する効果をもたらした。
さらにこの取り組みでは、動画活用の知見も蓄積されたという。今回テイストメイドが制作した70秒の動画をTwitterで流した場合と、過去に放送した15秒のテレビCMを他の媒体で動画広告として流した場合の視聴態度を調べた。すると、テレビCMは動画再生が始まるとすぐに離脱が始まり、動画が75%再生された時点で、利用者の70%が離脱していた。一方、テイストメイドの動画は、同じく75%再生時点で、離脱は30%にとどまったことが判明したのだ。
料理動画の活用が大きな鍵
ところで、セブン&アイ・ホールディングスはなぜ、このような取り組みを実施したのだろうか。また企業として、この取り組みをどのように評価しているのか。今回、3社の責任者に詳細を取材した。
セブン&アイ・ホールディングスの販促とデジタルを含めたマーケティング、ブランディングを統括する原田氏は、この企画を承認した立場だ。今回、この企画を通した理由を次のように語る。
「サラダチキンは、シンプルな食品。料理の素材にもなり、様々な使い方ができる商品です。これをどう販売していくかは、私たちが抱えるテーマの一つでした。部下のオフィサーから今回の企画について説明を受け、テイストメイドさんの動画を見たときに、“これだ!”と思いました。動画は料理する人の目線になって撮影されており、リズムが良くて見ていて気持ちがいいですし、リアリティがあるのも素晴らしいと考えました」(原田氏)
本施策の拡散のプラットフォームとなったのがTwitterだ。笹本氏は、企業がTwitterをマーケティングに活用する際には、いかに良質なコンテンツに利用者が触れられるかが重要だと語る。
「Twitterを使うと物を購買する意欲が高まるというデータが出ています。特に日本では、利用者が出先でTwitterを見て、その場で行動を決断するケースがすごく多い。ですから、行動を促すためのコンテンツが必要。それは決して、あからさまに広告的なものである必要はありません。今回のケースも、優れたコンテンツが成功の鍵だったと思います」(笹本氏)
動画を制作したテイストメイドは、4年前にロサンゼルスで設立された。吉岡氏が代表取締役を勤める日本法人は、2016年8月に設立されたばかりだ。
「日本法人では米国の動画を翻訳するのではなく、日本オリジナルのコンテンツを量産する方針を持っています。(今回の施策の話を聞いた頃は)その製作体制がなんとか整ったばかりという状態でした。自社のホームページや電話もまだ準備できていませんでした」(吉岡氏)
料理動画の活用が大きな鍵になっていそうな本施策。次ページから、企画の背景を詳しく聞いていきたい。