購買意欲をかき立てるために、奇をてらう必要はない
では、動画は具体的にどのような方針で制作されたのか。レシピの提案から動画制作までを一任されたテイストメイドは、視聴者が“作りたくなる”クリエイティブになるよう注力したという。
「情報が膨大に流れているTwitterのタイムラインにおいては、指を止めて視聴してもらうために、ビジュアル的なインパクトを重視した映像を製作するケースもあります。しかし、今回はサラダチキンの魅力をしっかり伝えることが重要であり、店頭でも流すことを考えると、その場で買いたいと思ってもらう必要がありました。
そのため、見た人にただただ“作ってみたい!”と思ってもらえることを重視しました。元々、そこは私たちの得意分野でもあります。実際、フォロワーさんの感想には“見てると料理したくなる”“料理したことないけど、やってみたくなった”という感想が多いんですよ」(吉岡氏)
レシピの“揚げないチキン南蛮”は、サラダチキンの利用者の特徴を意識して決定したという。
「サラダチキンについてリサーチすると、ダイエット中の方が好んで買われていることがわかりました。ですから、カロリー控えめでも食べ応えのあるレシピを開発しました。動画の編集は、料理をしない人でも興味が持てるように、スムーズに流れるように意識しています」(吉岡氏)
各社が語る、成功のポイント
KPIは売上だったという今回の施策。結果を見ると1P目で紹介した通り、成功を収めたといえる。勝因は何か。原田氏は訴求する商品と、テイストメイドのクリエイティブ力、そして膨大な利用者を抱えるTwitterが上手くマッチしたためだと分析する。
「テイストメイドさんがサラダチキンを美味しそうに見せてくださいました。元々人気の商品で、ダイエットや、お年を召した方にもおすすめといった認知はあったのですが、一方で、“どう料理すればいいかわからない”といったお声もありました。動画によって、“こういう作り方もあるんだ”とヒントを与えられたと思います。
さらにTwitterという、短時間でメッセージングが可能なプラットフォームが掛け合わさったのが良かったのではないでしょうか」(原田氏)
また、スピードの速さも際立っていた。8月にテイストメイド ジャパンが立ち上がると同時に企画がスタートし、9月に動画を制作し、10月にはTwitterで拡散をしている。テイストメイドが日本で最初に取り組みを実現した企業が、セブン&アイホールディングスというわけだ。
「施策を実施したオフィサーは、セブン-イレブン出身。グループの中でもセブン-イレブンは特にスピード感があって、午前中にトップが指示したことが夕方には2万店舗の現場が徹底されるほど。また、私も“やってみれば”と承認することが多いので、相乗効果だったかもしれませんね。特に今回に関してはコスト面でもテレビCMに比べて数十分の一と手を出しやすいこともあり、スピーディーに物事を進められました」(原田氏)
今回の施策はテイストメイドでも先進的な事例で、アメリカのスタッフからも興味を持たれていると吉岡氏は語る。
「テイストメイドが作った動画を店頭で流して、売上に貢献するといった事例は、アメリカでもまだありません。今回、Twitterという強力なプラットフォームと、我々が普段リーチできない店舗という2つの場に展開できたことにとても大きな意味があると考えています」(吉岡氏)
この声を受け笹本氏は、今回の施策はプロとプロが組み合わさったことによる“当然の成功”だという。
「セブン&アイ・ホールディングスさんは、自社商品をどう打ち出すべきか、そしてTwitterとは何なのかを、きちんとご理解されています。テイストメイドさんも、しっかりソーシャルリスニングをしてクリエイティブ制作されている。プロが集まって取り組んだ施策だからこそ、今回の結果があるのでしょう。
Twitterは今、月間アクティブ利用者数4000万まで成長しており、勢いは全く衰えていません。当社としては、これからもターゲティングの精度を含め、こういった事例を増やせるような体制を強化していきたいと思います」(笹本氏)
最後に原田氏に今後の展望について尋ねると、意欲的な答えが返ってきた。
「今回のように、動画を活用することでコトを起こす施策を引き続き行っていきたいですね。また、テレビCMとweb動画の使い分けについても、意識していきたいと思います。認知が低い新商品はテレビCMで広範囲のリーチをとり、認知のある既存商品についてはwebで良質なコンテンツを作って拡散していく。webとテレビのいいとこ取りをしながら、今後も継続して取り組んでいきたいですね」(原田氏)。
これから、セブン&アイ・ホールディングス、テイストメイド、Twitterがどのような展開を見せるのか。引き続き注目していきたい。