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MA導入の成否を分ける「攻め」と「守り」の施策とは ツールとデータを正しく活用する方法

 せっかくマーケティングオートメーションを導入しても、効果的に使えずに宝のもち腐れとなっている企業も少なくないのではないだろうか。日米のIT企業のグローバル化を支援するプロフェッショナルサービス会社である、サンブリッジの小野裕之代表取締役社長が「マーケティングオートメーションにおけるツールとデータの活用法」について講演した。

マーケティングオートメーションの本質とは?

サンブリッジ代表取締役社長、小野裕之氏

 メール配信ツール、ユーザートラッキングツール、ランディングページの生成ツールなど、機能だけを挙げてマーケティングオートメーションだと思っている人がいるかもしれない。しかし、もちろんそれらはマーケティングオートメーションそのものではない。

 「マーケティングプロセスを『見える化』して、どこで何をすればよいかを判断できるようにすることが、マーケティングオートメーションの本質です」と、サンブリッジの小野裕之代表取締役社長は言う。一般的なKPIとしては、リードの数・質・遷移率・単価が挙げられるが、マーケティングオートメーションの最終的なKGIは「収益の拡大」だ。

 マーケティングオートメーションを導入することによって、企業が実現したいと考えていることは何なのか。小野氏は以下の5つを挙げた。

 1. スコアリングで見込み度合いを可視化したい      

 2. セグメントごとの施策を自動化したい         

 3. リードを育成して商談を増やしたい         

 4. CRMと連携してマーケティング施策のROI(投資対効果)を出したい

 5. 営業マンにもっと高い生産性を期待したい       

 

データを活用し、リードを創出する

 しかし、小野氏によれば、単にマーケティングオートメーションを導入するだけでは、これらの目標を実現することは難しいという。その理由とは何なのだろうか。マーケティングオートメーションを導入する5つの目的に対して、小野氏はそれぞれに課題があると説明した。

 まず「スコアリングで見込み度合いを可視化したい」という目的には、正確なスコアリングをすることが非常に難しいという課題があるという。「価格のページを見たら10点、ダウンロードしたら20点と積み上げていって100点を超えたらホットリード」というのが一般的な考え方だが、配点の仕方がよくわからないという悩みをもつ人は多い。

「一度間違えてしまうと、どこに戻ればいいのかが難しい。単純に点数を積み上げるだけでは、クライアントの興味が離れてしまうことがあります。設定が細かくなれば設計もそれだけ複雑になり、スコアリングが難しくなるという悪循環です。私は機械学習、または統計を用いることをご提案しています。

 それには、『ダイレクトメールの送付先を選んで、効果の出る相手だけに送る』という昔からあるダイレクトマーケティングの手法を応用します。

データを元にゴールを設定し、リード予測を行う

 成約の実績テータ、つまりマーケティングオートメーションを使って『受注できた』、あるいは『アポイントがとれた』というゴール設定をして、成約したお客様とそうでないお客様を識別します。そして、成約しやすいお客様のモデルを設定し、属性、パターンがどういうものなのかを見ます。モデルができあがり、新しくお客様にそのモデルを設定すると、一つの値がそのモデルに近いかどうか、成約が難しいかどうかがわかるようになります。クリックなどの行動とは関係なく、実績から予測することができます。データからお客様のパターン傾向を導き出し、予測するというアプローチです」(小野氏)

 一方で、「セグメントごとの施策を自動化したい」に関しては、設定確認・動作テストに時間がかかることが課題として挙げられるという。

設定が複雑になればなるほどミスが発生しやすくなり、対応する時間が増えていきます。弊社はテストを行う会社と協業して、テストを行い、ミスを減らすようにしております。テスト設計は人間がやるしかないのですが、反復作業に関しては、かなりの部分、機械の処理でカバーできます。RPA(ロボットプロセスオートメーション)によって、検証プロセスを自動化すれば、パターンをロボットに記憶させ、ミスなく早く効率的に検証作業を行うことができます」

 ここまでが、データ活用によるリードの創出だ。では、実際にリードを活用するにはどのような施策が必要となるのだろうか。

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キーマンを見極めて商談に進む

 「リードを育成して商談を増やしたい」という目的には、育成をしても案件にならないという課題の解決が必要となる。

「営業収益性を考えると、リターンをいただけるお客様を中心に営業していくべきですし、そこできちっと成約させなければなりません。ターゲットを決めなければ、結果的にロスが生じます。育成しても案件にならないというケースを減らすためにも、対象キーマンが誰なのかをしっかり決めた上で、マーケティングオートメーションを設定します。大企業の場合でも中小企業の場合でも、最初にターゲットを決めることが必要です」

 そこで小野氏が提唱するのが、ABM(アカウントベースドマーケティング)という機能だ。これを導入することで、何が変わっていくのだろうか。

ABMによってターゲットを選定し、商談までの確率を上げる

「ABMではまず企業の選定から始まります。選定した企業の中で、キーパーソンは誰なのかを見極めた上で架電・商談に向かうというプロセスになります。企業・組織単位でグループを作り、その中のキーマンをうまく選定・抽出します」

 ABMを実践するための注意事項がいくつかある。一つは、「顧客データの精度」だ。顧客リスト購入の手段がない、あるいは取引先のデータが整備されていないと、確度の高い選定ができない。もう一つが、「キーパーソンのわかりにくさ」。日本の企業の場合、複数の人間が決裁プロセスに関与していることが多く、最終権限をもっているのが誰かがわかりにくい。では、どうすればいいのだろうか。

「対策は二つあります。一つは、クレンジングサービスや外部企業データベースの他、名刺データを活用すること。もう一つは、営業担当者からのヒヤリングを行いながら、SNSデータを活用することです」

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マーケティングオートメーションによって役割が変わる

 「CRM連携」についての課題は、CRMリードの名寄せの不備が多く、ROIを出しずらいことにある。

「マーケティングオートメーションに入っているデータは、メールアドレスベースでユニークになっているケースが多いのでまだいいのですが、CRMは重複したデータが入っていることが多いという問題があります。名寄せが必要なCRMを正しい状態にして維持することは大変です。取引先情報が重複したり、企業としてのアクティビティが見えなくなったりするという問題があります。企業ごとにどんな取引実績があるのかを見たいとき、いかにデータをきれいにするかが重要です。

機械学習を活用し、類似データを統合する

 解決策は、名寄せのデータベースを使って機械学習を行い、データクレンジングをすること。データクレンジングに名刺情報を加えることで、さらに精度が上がります」

成約に結びつけるには「インサイト営業」がカギとなる

 最後の「営業の生産性を上げる」上での課題は、ホットリードを渡しても、なかなか成果が出ないことが挙げられる。マーケティングオートメーションを導入したら、広告、サイト訪問、リードの育成までがマーケティングオートメーションの仕事。ホットリードのところからは、営業担当者が仮説を立て、架電・交渉を行うことになる。

「マーケティングオートメーションによって、それぞれの役割が大きく変わり、営業は提案活動にこれまで以上に集中しやすくなります。そうなれば、営業の生産性が上がると思うのですが、実際は失注してしまったり、単発受注で終わったりします。せっかくお金をかけてマーケティングオートメーションを入れても収益につながらないということがよくあります。

ホットリードを取得した後は、人がターゲットのインサイトを探り成約に結びつける必要がある

 そうならないためには、顧客すら気づいていないニーズを掘り起こす「インサイト営業」が重要となります。インサイト営業は、ソリューション営業の次に来る営業スタイルだと言われています」

 最後に、小野氏はマーケティングオートメーション運営上の課題と解決策をまとめ、講演を締めくくった。

AI(人工知能)を使った新しいスコアリング手法を活用する ⇒「攻」

RPA(ロボットプロセスオートメーション)を使って検証プロセスを自動化する ⇒「守」

ABM(アカウントベースドマーケティング)でターゲットを決める ⇒「攻」

MDM(マスターデータマネジメント)+名刺を使って、企業内に分散するデータを、品質を保ちながら一元管理する ⇒「守」

インサイト営業(ソリューションに続く営業スタイル)を実施する ⇒「攻」

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この記事の著者

元永 知宏(モトナガ トモヒロ)

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『本田宗一郎 夢語録』、『羽生結弦語録』(ぴあ)などを編集。2016年10月に『期待はずれのドラフト1位』(岩波ジュニア新書)を上梓した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26252